第2話―驚愕の招待状
「………あの魔力、確かにグリエド様のだけど、グリエド様の魔力じゃない気がする」
ジャック殿の言葉に、僕達は頭の上に?を浮かべる。
「と、言いますと………?」
「うーん………何て言えばいいかなあ。今までのグリエド様の魔力って、どこか包み込まれるような安心感とか、そういうものがあるんだけど。でも、今の“境界”の結界は、何にもない、空っぽな魔力、そんな感じがする」
ジャック殿独特の感覚に、ますます頭に?が増える。
いや、そもそも――
「――そもそも、グリエド陛下のスキルは虚無系だろう?何故そんなにも強力な結界を使えるのだ?」
そうラグナ殿が、僕の考えをピシャリと言い当てる。
すると、急に指パッチンが鳴り響き、僕達はいつの間にか玉座の間へと転移していた。
「なぜ玉座の間に……?」
「なになに、何が起こったの!?」
「一体何が……」
突然の出来事に、皆混乱している中。
「それには私が答えよっか!」
「「「うわあ!?!?」」」
またも背後からヒョイッと生えるように現れたのは。
「「「へ、陛下!?」」」
「あー!カレンちゃん!」
「ジャックやっほー!」
「「イエーイ!」」
言いながら、ノリノリでハイタッチを交わす二人。
「カレン………ちゃん………!?」
「どうやったらそこまで親しく………というか陛下に向けて『ちゃん』とは………」
僕達は二人の親密さに驚きを隠せず、皆口をあんぐりと開けている。
僕は正気に戻り、一つ咳払いをして問う。
「………いや、それはそれとして後ほど聞きますが。カレン様、グリエド様のスキルは虚無系じゃないのです?」
というのも、僕、というよりも僕達が陛下の生前に見たことあるのが、虚無系統の能力しか見たことがないのだ。そして、陛下自身も自分のスキルは虚無系統である、というような事を仰られていた。故に、僕達は陛下のスキルは詳細こそ不明なれど、虚無系統だと認識していた。
僕の質問に対して、カレン様は答える。
「えっと、これは私と母上……つまり前王妃ね、それと宰相しか知らないんだけど」
そう前置きをして、カレン様は続ける。
「父上のスキル名は、『守護ノ神盾』。その権能は、様々な種類の結界なの。だから、父上の本来の能力は虚無系じゃなくて、防御系なのよ」
「「「なっ…………!?」」」
開いた口が塞がらない、とはこの事だろうか。今まで隠されていた真実に、僕達は驚くことしか出来なかった。
カレン様の言葉は続く。
「父上が使ってた虚無系っていうのは、こないだの戦いで私も使った、【王族系統外魔法】と呼ばれる魔法よ。人間に舐められないように、【虚無魔法】を主に使っていたの」
「なるほど……」
僕らは納得した。たしかに、それならば【虚無魔法】を使っていた方が効率が良い。
ただ、疑問なのが……
「……では何故、今になってグリエド様の結界が?既にお亡くなりになられているはずなのに………」
とは、メロウ殿の言葉だ。皆同じ疑問を持っていたのか、その質問に頷いている。
「それが分からないのよねえ………時限式の結界なんて聞いた事ないし、そうなったら人間側が何かしらしたっていうのが1番有力なんだけど………ん?」
カレン様の言葉は、しかし続くことは無かった。なぜなら、その途中に小さい「ナニカ」がこの玉座の間に入ってきたからだ。
それを見るなり、ジャックが声を上げる。
「あー!ボクの土人形!どーだったー?」
「ジャックの?どういうことだ?」
姉さんのその問いに、相変わらずの天真爛漫な笑顔で答える。
「あのね、さっきここに転移する前にね、“境界”に土人形を放ってたんだー。簡単に言うと、偵察ってこと!それで、何かあったら帰ってきてーって、言ってたんだけど……」
彼がそう言うと、その土人形が魔法陣から何か書面のようなものを出す。ジャック殿がそれを受け取ると、土人形は粒子となって消えていった。ジャック殿が魔法を解除したのだろう。
「ん……?これは………って、えぇ!?」
「どうしたんですか?」
読むなり、彼はそんな素頓狂な声を上げる。
「こ、これ………」
そう言って、ジャック殿が僕にその書面を渡す。
「…………へっ……!?」
受け取った書類を読むと、僕も変な声を出してしまう。
「何だ何だ、何が書いてあったんだ?」
皆の視線が僕達に集まる。僕達は顔を見合せ、互いに頷き合い、覚悟を決める。
「「……“聖界”から、王城への招待状、」」
「だって……」「ですって……」
僕達が声を揃えて言うと。
「「「えええええええええぇぇぇ!?!?!?」」」
玉座の間に、全員の叫び声が響いた。