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第54話―真実

「――極位【劫焔ごうえん】・〚爆焔轟龍覇ドラゴニックフレア〛ッ!」


僕はアリオスの元へ走りながら、奴に向けて【火魔法】の頂、その先の魔法を放つ。


「『消えろ』」


龍の如く突き進むその爆炎は、しかし奴の目の前でいとも簡単に消えてしまう。

それでも僕は、[多重無詠唱アクセラレーション]にて先の魔法を連発するが、それらも全て目の前で消されてしまう。


「――力を貸してください!〚召喚魔法サモン:影淵剣イズ陽天剣ルーク〛ッ!!」


僕は対となる二振りの魔剣を両手に握り、その勢いのまま、アリオスへ左袈裟の2連撃を浴びせる。


「セアッ!」

「おっと」


それを奴は一振りの魔剣で弾き返す。その弾き返された勢いを利用し、一回転してそのまま横薙ぎ。奴はバックステップで回避する。


「今度はこっちからね?万変剣ばんぺんけん、極致其の弐――」


奴の魔剣が漆黒を纏う。漆黒へと変化したその魔剣を、奴は僕に向けて突き出す。


「――“淵変為雷えんへんいらい”」


奴が突き出したその魔剣を、僕は双剣を交差させる形で受ける。瞬間、奴の漆黒が黒き雷へと変化する。僕の握っている双剣を通じて、黒雷が僕の身体に流れる。


「グッ………!アァッ!!」


尋常でない痛みと痺れの中、それでも奴の魔剣を弾き、バックステップで一度距離を取ると、もう一度突進する。


「陽天剣、極致其の壱――」

「万変剣、極致・双ノ型――」


僕の握る純白の魔剣が白焔を纏う。対するアリオスは、その剣を双剣へと変化させる。


「――“陽焔かげろう”ッ!!」

「――“流星”ッ!」


流れるような奴の連撃に、僕は左手の魔剣で受ける。受け止めきった瞬間、今度は右手の魔剣の極致を放つ。


「影淵剣、極致其のろく、“黒渦冥葬こくかめいそう”ッッ!!」


奴の双剣を受け止めている純白の魔剣を絡ませ、漆黒の渦を纏うその魔剣を、動けないアリオスに振るう。


「チッ、〚怠惰スロウディア〛!」


アリオスは魔術で、冥土送りの渦を躱す。

そのままお互いを警戒し、僕もアリオスも動かなくなる。


「強くなったねぇ。初めて“境界”で会ったあの頃が嘘みたいだよ」

「お褒めに預かり光栄、とでも言っておきましょうか」


僕は剣を構えたまま、奴の虚ろな瞳を見つめ、問いかける。


「………ずっと聞きたかった。貴方はなぜ僕達を殺すのです?なぜ僕の両親を、〝魔女の一族〟を目の敵にするのです?」

「なぜか、だって………?」


僕が訊くと、アリオスはその真紅に妖しく光る目をピクリと動かす。

元々何を考えてるかも解らない、その虚ろな目に、確かな憤怒と憎しみが露わになる。

同時に、衝撃の真実が明らかとなる。


















「…………俺も、()()()()()()()()()()()()







「なっ…………!?」


驚き、では表現できないほどのその事実に、僕はその手に握っている双剣を取り落とす。

それすらも気づかず、僕は奴の腹から滲み出るような憤怒と共に紡がれる言葉に耳を傾ける。


「いや……今はだった、の方が正しいか。お前らの知ってる通り、俺は〝無魔力〟だ。生まれつきな。〝魔女の末裔〟の下に生まれた俺が、親は許せなかったんだろうな。俺がまだ小さかった時、妹ができた。その妹の魔力は凄まじかった。10歳にして、【風魔法】の極位に辿り着くほどに。だから親は、俺がそもそもいなかったことにした。『忘却の水薬』を妹に飲ませた親は、俺を“境界”に捨てた。………怖かった。寂しかった。それと同時に………憎かった。家族が。羨ましかった。妹が」

「…………アリオス」


過去の憎しみからか、アリオスの顔が苦痛に歪む。いつの間にかそれぞれ悪魔を倒したのか、姉さんやメロウ殿、ヴァン殿に両親、ルオ、カレン様も集まっていた。奴の言葉は続く。


「“境界”を彷徨っていた時、俺を拾ってくれたのが、シュタリウス――今の“聖界”の、国王だ。彼は俺を見下ろしながら、こう言った。『力が欲しいか。全てを我が物にできる、最高の力が』。俺は即答したよ。あるなら寄越せ、ってな。その力がこの〝大罪使い(フェロニアス)〟だ。だからな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。皆、見下され、蔑まれ、憎んだ者の集まりなんだよ。そして、俺から全てを奪った、俺の妹は――」


その時点で、僕は殆ど察していた。その妹という人物を。その人は――


「――アリ、オス………?」


どこかで聞いた、大人びていて優しい声。その声が、今は驚きと困惑からか、震えている。


「――〝灰緑の魔女(サンドリヨン)〟、サーリャだ」


突如としてこの赫氷の世界に現れた彼女はその眼を見開き、アリオスをその大きな瞳で見つめていた。


「……………思い出したか?憎き俺の、妹さん?」

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