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第47話―赫冰の世界に轟く雷鳴

「さて。役者が出揃った、ってとこか？」

僕達が横に並ぶと、アリオスは僕達を睨みつける。

「くっ………。どいつもこいつも邪魔しやがって……！ふざけるなあああぁぁぁ！！！」

瞬間、奴の周りでまた衝撃波が起こる。

だがその衝撃波は、僕達に届くことはなかった。

何故なら――

「絶龍刀、極致其の弐、“双龍一閃《そうりゅういっせん》・紫迅《しじん》”ッ！！」

刹那の内にラグナ殿が前に歩み出る。

彼女の腰の鞘から紫電が閃き、真紅の衝撃波が三つに分かたれる。

その衝撃波は僕達を吹き飛ばすことはなく、後ろの壁をへこませ、少々崩壊させるにとどまる。

「では――最終決戦、開幕と行こうではないか！『冷血ノ王(ディアナ)』、〚血界《けっかい》〛ッ！」

そうして、ルベル色の氷の世界が創造される。それを合図に、僕達は地を蹴る。

「セアッ！」「フッ！！」

「くっ……オラッ！」

姉さんと僕が、お互いの黒白の魔剣を交差させる形で斬り下ろす。それを奴は大鎌の柄で受け、僕達を蹴って飛ばす。

入れ替わるように、ラグナ殿がメロウ殿と前に出る。

「行くぞ、メロウ殿！〚雷纏《らいてん》〛ッ！」

ラグナ殿の系統外魔法【雷】で、メロウ殿の身体に白い雷が纏われる。

「ありがとうラグナさん！『冥界ノ女神(ヘカーティア)』、〚極限解放《ラピスラズリ》〛！！」

メロウ殿の身体が瑠璃色に輝き、さらにその周りを白雷がスパークを起こす。

「絶龍刀、極致其の参、“煌煌龍転《こうこうりゅうてん》”ッ！！」

「瑠璃《るり》奏想《そうそう》――〚月華雷鳴《げっからいめい》〛ッッ！！」

ラグナ殿の振るう刀と共に龍が煌めき、メロウ殿の爪に白雷が集中し、その雷爪を突き出すと、ズガアアアアァァァン！！という雷鳴が轟く。

「万変剣《ばんぺんけん》、極致・双ノ型【煌刻《コウコク》】、“千紫万煌《ちしまんこう》”ッ！！」

奴が双剣を振るうと、その軌跡に淡紫《たんし》や深紫《こきむらさき》といった、様々な紫色の花が鮮やかに咲き乱れる。

その花々は二人の猛攻を包み込むように防ぐ。

だが、徐々にその花たちが押されていく。

「何っ……！？」

「「いっけえええぇぇ！！！」」

「グッ……おおおおぁぁぁああッッ！！」

お互いに咆哮する。互いの攻撃の輝きが増す。

だが、遂に、その均衡が崩れる。

ピキッ……と、何かにヒビが入るような音が走る。

そして。

「ぐあああぁぁッッ！！」

様々な紫色に輝く鮮やかな花々が千々に散っていき。

瑠璃色の雷爪と、猛り輝く龍が奴を捉え、深々と奴を抉る。

奴は衝撃に耐えられず吹き飛ばされ、背後の氷に叩きつけられ、そのまま地面に落ちる。

「はぁ、はぁ……」

「ふぅ～……。きっついわね、これ………」

先刻の攻撃で、二人とも満身創痍の様子だ。僕達は二人の元に駆け寄る。

「やりましたか！」

「いや……まだだ」

ラグナ殿のその声と同時に、奴の笑い声が耳を打つ。

「フフフッ……。ははははははっ！！！面白い！！実に面白い！！興奮してきた！！もっと、もっとこの戦いを楽しむんだ！！さあ！さあ！！狂わせろ、〚嫉妬《インヴィディア》〛ッ！！」

奴の魔術で、身体に刻まれた傷が元通りになる。

「くっ、また振り出しか……！」

「恐らく、一撃でケリをつけなきゃいけないのだろう。実に厄介だな……」

だが、今回は少し違った。

「使い勝手が悪くて使えなかったけど、今なら使える！原罪の悪魔よ、俺に従え！！〚色欲《ラスティスィア》〛ッッ！！！」

――それは、何度目とも分からない、地獄の始まりだった。