第46話―再び集う想い
「「光と影が混ざりし時、その混沌に呑まれるは世の理。万物を狂わす混沌の涅槃、真の姿を見せたまえ!〚表裏一体〛――陽淵剣、ヴァリアブルケイオス!!」」
二振りの魔剣の姿が眩く光り、歪んでいく。
そして光が止むと、そこには一振りの魔剣が誕生していた。
「その魔剣は……?」
剣身の縦半分は純白。もう半分は漆黒。その見た目は、カレン様の扱う双極剣によく似ている。
だが、その剣の作りが少し違う。カレン様の聖魔剣は両刃直剣だが、父さん達が握っているソレは、若干反りが入った、刀のようだがそれとも少し違う。
通常の剣よりも刀身も柄も少し長いその魔剣を二人で握り、魔力を重ね合わせる。
「合わせられるか?クリスタ」
「愚問よ。どれだけ一緒にいると思っているの?」
「ハッ、それもそうだな。――行くぞ!」
2人は息を合わせ、同時に地を蹴る。
振りかぶり、渾身の斬り下ろし。奴はそれをいなしながら弾き、踏み込みながら右回転、その勢いのままで横薙ぎに払う。体勢的に受けきれないのを悟り、僕の権能でサポートする。
「〚幻身霧散〛ッ!!」
「何ッ!?」
父さんと母さんが霧のように消える。困惑するアリオスは、剣を正眼に構え、いつ来てもいいように集中している。
「「陽淵剣、極致其の壱――」」
その声が辺りに響いた瞬間、僕は奴の真後ろに魔力を放出する。
「〚再顕現〛ッ!」
それに気を取られ、振り向きざまに袈裟懸けに斬り下ろすアリオス。
だが、それはただの魔力の塊だ。
奴が振り向くと同時に、僕は父さん達を顕現させる。
「「――“乱理霧狂”ッ!!」」
右袈裟に斬り下ろす二人。
自分の意識の死角を取られたアリオスは、辛くも振り向きざまに受ける。
だが――
「かはっ………!?」
その魔剣は奴の剣に止められた。だが、アリオスの肩から腰にかけて、深い刀傷が刻まれている。
傷口から血を垂らしながら後ずさる奴の眼には、驚愕と困惑が混ざっていた。
「受けた、のに…………何、で」
「“乱理霧狂”とは、即ち理を狂わす。お前がその剣で受けたことで俺達の剣が止まったという理を狂わし、受け切れなかった、という結果ができた、ってことだ」
その説明を聞いた瞬間、奴の真紅の瞳孔が見開かれる。
「フフッ……。フフフ、フハハッ!!その力……羨ましい!欲しい!よこせ………、その力、よこせ!!狂わせろ、〚嫉妬〛ッッ!!」
瞬間、奴の傷が全て癒え、父さんと母さんに同じような傷が刻まれる。
「グッ……!」
「あぁっ………!」
それを見て、僕達は立ち上がって二人の元へ駆け寄る。
「「父さん、母さん!!」」
僕達の呼びかけに対し、父さんがサムズアップして答える。
「大丈夫だ。しっかしアレ……、厄介だな」
「ええ。〚嫉妬〛、だっけ?私達は見たことなかった魔術ね……」
そう言って二人は奴を睨む。
父さん達は、奴の魔術を警戒しており、迂闊には動けないようだ。
「来ないのかい?なら、こっちから行くよ?」
言いながら、奴は私たちに向けて手を突き出す。
その瞬間、赤い衝撃波が僕達を襲う。
「くっ……」
「うおっ………!」
「ぐぁっ……」
「きゃっ……!」
少し吹き飛ばされ、後ずさるが、何とか耐える。
眼を見開くと、奴は既に眼前に迫っていた。
「――〚氷血ノ魔壁〛!!」
刹那、僕の目の前で奴の攻撃が防がれる。
そして、この魔法は――
「待たせてすまない、ヴァイ殿、レイティア殿」
「ヴァン殿……!」
「〚月穿爪〛ッ!」
「おっと」
アリオスが避けると、その場が何かに穿たれたようなクレーターができる。
「ふう……。ごめんね、ちょっと不覚取っちゃった……!」
「メロウ!」
そう言って少し舌を出してニコッと笑う彼女。
「“神醒・鮮雷”!絶龍刀、極致其の壱――」
「――朱雀刀、極致其の弐・【炎天】――」
神速の紅き雷光が轟き、炎が閃く。
「――“雷龍閃斬・赫烈”ッ!!」
「――“焔凰・紅龍ノ舞”ッッ!」
それに対し、奴も同じく極致にて対抗する。
「万変剣、極致・鎌ノ型――“睡蓮花”」
奴の極致により、二人の攻撃は消滅してしまう。
「チッ、これでも無理か……。すまない、遅くなってしまった」
「……死というのは怖いものですね。できれば二度と経験したくないものです」
「ラグナ殿!ディーレ殿も!」
僕達の周りに皆が揃ったのを見て、姉さんがニヤリと笑う。
「さて。役者が出揃った、ってとこか?」