第45話―万物を狂わせし混沌
「中々に苦戦してるみたいだな、ヴァイ、レイティア?」
「助けに来たわよ、2人とも」
「父さん……!母さん……!」
「すまんな。緊急事態だったから、一瞬だけお前の身体貸してもらったぞ」
振り向きながら、ニカッと笑う父さん。
そして、カレン様の元へ行き、跪く2人。
「お前らは……あの時殺した……!?」
「少し、黙っててくださいな?」「ちょっとお前は黙ってな?」
父さんと母さんはアリオスに振り向いて手を翳し、同時に紫魔法〚精神拘束〛を行使する。
そして、奴が動けなくなったところで、改めて頭を垂れる。
「お久しゅうございます。カレン王女。いえ、今はもう陛下、ですね」
「………カレンで良い。お主らには世話になったからな……」
そう呟きながら、カレン様の眼から二筋の雫が零れ落ちる。
それを穏やかな目で見守る母さんと父さん。
「この魔法、ほんと厄介だなぁ。奪い取れ、〚強欲〛」
魔術により奴が魔法を奪い取ると、また真剣な眼差しに戻る。
「さて、やれますか?陛下」
「うむ。妾も共に戦おうぞ」
カレン様は2人と一緒に立ち上がり、僕達の隣に来る。
「待たせてすまぬな。『慈愛ノ王』・〚完全回復〛!」
カレン様の権能で、先刻の怪我が全て消える。
「レイティア、貴方の剣、少し貸してもらってもいいかしら?」
「ヴァイも借りていいか?」
「ええ……構いませんが……」
「ああ、これを」
私は父さんに、姉さんは母さんにそれぞれ魔剣を渡す。
「サンキュー。さて、と。〚召喚魔法:影淵剣〛」
「ありがとう。〚召喚魔法:陽天剣〛」
父さんたちは魔剣の二人を召喚する。
ルークも改めて召喚され、二人は跪いて現れる。
「幾久しく、レグルス様」
「お久しぶりですね、クリスタ様」
「ああ、久しぶりだな」「十数年ぶりかしら?」
そう言って、お互いの再会を確かめ合う。
「そうでした、その剣たちは父さん達のでしたね」
「ああ。だからお前達は知らないだろうが……イズ、ルーク、行けるか?」
「ああ」「ええ、いつでも」
魔剣の二人は同時に頷く。
「よし、じゃあ、行くぞ?」
父さんと母さんは二人を剣に戻し、その二振りを交差させて、詠唱を始める。
「「光と影が混ざりし時、その混沌に呑まれるは世の理。万物を狂わす混沌の涅槃、真の姿を見せたまえ!〚表裏一体〛――陽淵剣、ヴァリアブルケイオス!!」」