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第42話―繰り返される、追憶の悪夢

「お母さん!お父さん!お姉ちゃん!!」


呼んでも誰も反応するはずは無い。

突如、ぼくの立っている場所の真下に、大きな穴が空く。

ぼくはそこに、抗う術も無く穴に落ちていく。


「おーい、いつまで寝てんだ、ヴァイ?」


その声に、ぼくは目を覚ます。


「あれ……?お姉、ちゃん?」

「どうした?寝ぼけてんのか?かわいい弟め」


そう言ってお姉ちゃんはぼくの頭を乱暴に撫でる。

さっきのは……夢?

鮮烈に残っている、妙にリアルな夢にモヤモヤしつつ、ぼくはベッドから降りる。


「ほら、もう母さんが朝飯作ってくれてるんだから、早く降りるぞ!」

「はーい」


そうして、お父さんとお母さんがいるリビングへ向かうと。

2人は、何者かと相対していた。

その男と目が合うと、ぼくは謎の既視感に襲われた。


「やあ。〝紫〟の坊やに、お嬢さん?」


――ぼくは、この人を、知っている。

ダメだ。この人と戦っちゃいけない。逃げなきゃ。

既視感と本能が叫ぶ。


「……お父さん!」

「来るなッ!」


ぼくの呼びかけには答えず、お父さんはこちらを振り向かずに、男を睨んだまま言い放つ。


「いいか、裏口から王城を目指して逃げろ!俺たちが時間を稼ぐ!」

「お母さんたちは……?」

「大丈夫よ、すぐに片づけてそっちに行くから。〚精神拘束スピリチュアルバインド〛!」


母は魔法で男を拘束する。


「さすが〝紫の末裔〟。珍しい魔法だね。動かないや」

「ほら!今のうちに!行って!!」

「……ヴァイ、行くぞ!」


そう言ってぼくは、お姉ちゃんに手を引っ張られ、強引に連れていかれる。


「お母さん!お父さん!」


ぼくたちはどんどん家から遠ざかっていく。最後に見えたのは、どうやったのか、男が魔法を解除して動き出し、剣を振り下ろす――その瞬間。

また、世界の一切が停止し。

周りの景色に、お姉ちゃんに、全てにヒビが入り始め。

バリイイイイィィン!!という耳をつんざくほどの轟音を立てて、世界が砕け散り、その裏にある暗闇が露になった。

お父さんは、お母さんは、お姉ちゃんはどうなったのか。何もわからず、三人を呼ぶ。


「お父さん!お母さん!お姉ちゃん!」


どれだけ呼んでも、反応は無い。徐々に焦りと恐怖が募り始める。


「ねえ!皆どこなの!どこにいるの!」

「……ヴァイ!」


声のした方を振り向くと、お姉ちゃんが――()()が立っていた。


「目を覚ませ!ヴァイ!呑み込まれるな!」


ぼくは、姉上にそんな声をかけられる。

何でそんなことを――言う前に、()は気づいた。

お母さんも、お父さんも、既にもういない。

今体験したのは、確かに過ごした、私の幼き日の記憶だ。

2人は幼い頃に、私達を逃すために、奴と戦って、命を落とした。

私のせいで、私の両親は死んだ。私が、殺したのだ。


「う……うああああああああぁぁぁあああ!!!」


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