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第34話―創造と終焉、表裏一体

「刻もう、狂荒せし空虚なる魂の奏でる創《ね》を。喰らおう、止まぬ魂声《かんせい》、鎮めるが如く。〚魂喰イ(ソウルイーター)――鎮魂歌《レクイエム》〛ッ！」

　私が発動したその魔法は、アリオスの操り人形と化していた死者達に、眠りをもたらす。

　意思なき傀儡となっていた騎士たちは、その場に倒れている。

「……さて、これで形勢逆転、でしょうか」

「どうかな。君たちが束になっても、僕には勝てないんじゃない？なんてったって……この身体は、君たちの仲間のものだから、ね？」

　奴がそう言った瞬間、ジャック殿の眼に光が戻り、苦しげな笑みを浮かべる。

「……皆、ごめんねぇ……。ボク、ちょっと油断しちゃった……」

「ジャック！」「「ジャック殿！」」

「ボクは、大丈夫、だから。ボクごと、コイツを、倒して…！」

　そうして、また彼の眼から、光が消える。

「やれやれ。少し出してあげたけど、めんどくさいことするよ、ホントに。……っと、さすがにこの人数は分が悪いかな。――姿を変えよ、万変剣ムルティクリオス、変化《へんげ》・弓ノ型」

　奴がそう言うと、手に握っている魔剣が、魔弓へと変化した。

「変化する魔剣…！？そんなの、聞いたことない……！？」

「ああ、私も初めて見た。そんな魔剣があるとはな……」

ヴァン殿とメロウ殿が目を丸くする。

「お二方、呆けている場合か。――来るぞ！」

「万変剣《ばんぺんけん》、極致・弓ノ型―“乱れ桜”」

　奴が上空に放った矢は、拡散し、まるで八重桜のように、無数の矢の雨となって私たちを穿たんと降り注ぐ。

「――氷血ノ魔壁(ブラッディウォール)！」

　ヴァン殿によってルベル色の氷壁が生み出され、一部の矢はそれに阻まれ、凍らされ、

「行くわよー！飲み込まれなさい！〚ヨルノトバリ〛――“月影《つきかげ》”ッ！！」

　メロウ殿の生み出した闇に、また一部は呑まれて消え、

「――一度《ひとたび》落つるは、蒼き雷《いかづち》。絶龍刀《ぜつりゅうとう》極致・焉裏《えんり》其の壱、“画龍点睛《がりょうてんせい》・蒼光《そうこう》”ッ！！！」

「ッ！？！？」

　ラグナ殿は、今までとは桁違いの蒼雷を響かせ、八割を落とし、

「朱雀刀《すざくとう》、極致其の弐――“焔凰《えんおう》”ッ！」

　ディーレ殿の紅き焔で、眼前に迫る無数の矢を灼き払い、

「陽天剣《ようてんけん》、極致其の参――“天威無烽《てんいむほう》”ッ！」

　姉上の放った天光が消し去り、

「影淵剣《えいえんけん》、極致其の弐・改――“獄淵《ごくえん》・飛燕一刀《ひえんいっとう》”ッ！」

　私の飛ばした漆黒の斬撃が残りの矢を全て斬り裂いた。

「……ラグナ殿、今のは一体……？」

「これが、今まで私が隠してきた秘奥、“裏極致”だ。あまり見せたくはなかったんだが……奴からジャック殿を取り戻す手段が、これしかないのでな」

　それを聞いて、私たちは驚く。

「なっ……！？あるのですか、助ける方法が……！」

「ああ。ただ、かなり危険な博打だ。世界を壊しかねないほどに、な」

「なるほど。じゃあ、私の権能が役に立つかな」

　そう言って、ヴァン殿が歩み出る。

「ヴァン殿の権能、ですか？」

「ああ。物は試しだ、やってみようか」

　そう言って、彼は詠唱を始める。

「踊ろう、詠おう、さあ鳴らそう、世界創世の福音《ふくいん》を。我誘(いざな)うは絶対零度。血に塗れた世界の果てに、狂い、凍てつき、声ぞ失くなる。『冷血ノ王(ディアナ)』――〚血界《けっかい》〛」