第20話―“魔眼”の制御
「久しぶりね、2人とも」
「ご無沙汰しております、サーリャ様」
サーリャ様。私たちと同じ7騎士の1人、さらに同じ〝魔女の末裔〟で、〝灰緑の魔女〟、あるいは〝叡智の魔女〟と呼ばれている。その二つ名に見合うほど博識で、曰く、自身が認識できる範囲でなら、世界の理にアクセスできる、とのこと。
「……レイティアのその眼帯、もしかして、“魔眼”かしら?」
「話が早くて助かるな。発現したはいいものの、制御が全く利かなくてな。なんとかならないか?」
「なるほど。少し、待ってちょうだい」
そう言って、サーリャ様は目を閉じる。
「『叡智ノ王』―〚摂理の書庫、入室〛。………なるほどね。解ったわ」
そう呟いた後、彼女は目を開け、話し始める。
「……発現したばかりだと、自分の魔力に馴染むまでどうしても時間がかかるみたいなの。制御が効かないのもそのせいね。発現したばかりの魔眼と発現者の魔力は、いわば水と油みたいなもの。水と油は最初は混ざらないでしょう?けれど、混ぜ続ければいずれは乳化して混ざる。それが、魔眼が馴染んで、制御ができる状態ね。―〚退室〛」
「なるほど……でしたら、今は特に何もしなくてもよろしいのですか?」
「そうね。というか、できること自体、ないのだけれど」
そう言って彼女は口元に手を当て苦笑する。
「なるほどな。では放っておけば、勝手に馴染んでいくのか」
「ええ。だから今は特に気にせず過ごせば問題ないわ」
「そうか。助かったぞ」
そう言って姉上はニコッと屈託のない笑みを浮かべた。
「それよりも、貴方達の剣、相当忠誠心が強いのね」
ふと、そんなことを言い始めたサーリャ様。
「と、言いますと?」
「多分その子達、既に意思を持っているわよ。私のスキルで“変体”させられるけれど、どうする?」
「なにっ、そんなことが可能なのか?」
私も驚いた。魔剣が魔人になるなんて、聞いたことが無い。
「では、お願いしてもよろしいですか?」
「解ったわ。じゃあ、2人とも、剣を出してちょうだい」
そう言われ、私たちは剣を召喚する。
「天焦がす光に灼き穿かれろ、陽天剣ソルクツァーレ」
「深淵に溺れよ、影淵剣アビスレイジ」
そうして出現した二振りの対となる魔剣を、そっと地面に置く。
「じゃあ、始めるわよ。『叡智ノ王』―〚変体〛」