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赤の喪失  作者: Ri0via.
8/8

兄弟

「記憶とは、時に呪いである。」

忘れていた方が幸せなこともある。

思い出せば、元には戻れなくなることもある。

しかし、それでも人は過去を求める。

かつて何者であったのか。

なぜ、今この姿なのか。

そして、これからどこへ向かうのか——。

"本"と"靄"、異形となった兄弟の運命が再び交わるとき、

封じられた記憶が目を覚まし、新たな物語が動き出す。

これは、呪われし兄弟が歩む"復讐と救済"の物語。

過去の鎖を解き放つとき、彼らは何を選ぶのか。

「旅は楽しめたかい?これが兄弟の記憶だよ」

「……本当に我の記憶なのか?」

我はじりじりと靄に近づき、問い詰める。

「間違いない。兄弟の記憶だよ、残念ながらね」

鎧は淡々と言い放つと、煙の中にふわりと何かを映し出す。

「本が吾輩で、人間が兄弟だ」

「……え? はい?」

言葉の意味が理解できぬ。

どういうことだ?

昔は人間?

今の姿は、本?

「そんな馬鹿な……!」

「☒▣☑■⊡☑の呪いによって、吾輩たちはこのような姿になったのさ。」

呪い?

そんな子供じみた話で、姿や形が変わるというのか?

にわかには信じられぬ。

「……だから、吾輩は罰を与える。」

「は?」

気づけば、我は靄に向かって反論していた。

「あれは……我々にも非があったのだろう?」

「記憶を渡したのに、兄弟は逆らうのか?」

沈黙が漂う。

張り詰めた空気が、我と靄の間を満たす。

……ちと、熱くなりすぎたか。

我は深く息を吐き、冷静に言葉を選ぶ。

「我は逆らうつもりはない。ただ……あの仕打ちも、致し方なかったと思っただけだ。」

「ハッ……ずいぶん丸くなったもんだな、兄弟。昔は伊賀栗みたいだったぞ。」

「そうか……長い間、ずっと一人だったからな。それで変わってしまったのかもしれん。」

我は静かに呟く。

目は細めたつもりだが——まあ、我に目などないのだがな。

「まぁー、いいだろう。これから一人じゃないから安心しな、兄弟!」

「……ああ、よろしく頼むぞ、兄弟。」

我は、少し照れくさそうに"兄弟"と呼んだ。

靄はその言葉が嬉しいのか、細かく揺らめき、周囲に煙を散らす。

ふわりと、わずかにラベンダーの香りが漂った。

今宵、本と靄は月明かりのもと、静かに契約を結ぶ。

これから何が起こるのか——楽しみだ。

なぁ兄弟、我はどんな匂いがするのじゃ?

む??古本の香りがしておじぃーみたい?

……………。

我もフレグランスを検討するかの。

に、似合わない?そ、そんなことないわー!!


かつて人間だったはずの者が、本となり——

かつて共にあったはずの者が、靄となる。

彼らは何を失い、何を得たのか。

いや、そもそも彼らは本当に"失った"のだろうか?

この再会は、単なる偶然か、それとも必然か。

長い孤独の果てに、二つの魂は再び交わり、新たな契約を結んだ。

しかし、これは終わりではなく、すべての始まりに過ぎない。

この先、彼らを待ち受ける運命とは——。

"物語は、まだ続く。"

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