ポップコーンな日
重厚な扉が静かに開き、シュフェンが会議室へ足を踏み入れる。
長机の中央には黒い本の調査報告書が置かれ、すでに集まった者たちが沈黙の中で待ち構えていた。
「皆、そろっているな。」
シュフェンが着席すると、執事が静かに紅茶を差し出す。
「それでは本題に入りましょう。」
学芸員の一人が進み出て、口を開いた。
「黒い本の調査について、改めて報告をお願いします。」
シュフェンは深く息をつき、数日前の出来事を思い返しながら語り始めた。
「数日前、専門家が到着し、黒い本の調査が行われた。彼は歴史学と古代言語に精通した学者で、これまで多くの発掘品を鑑定してきた人物だ。」
会議室の空気が緊張に包まれる中、シュフェンは続ける。
「彼は慎重に本を手に取り、ページをめくった。しかし——特に異常は見られなかった。書かれているのは未解読の古代文字のみ。呪いや異常な力の痕跡も確認されなかった。」
「それは……つまり、安全だということでしょうか?」
学芸員の一人が不安げに尋ねる。
「専門家の見解では、これは単なる古い王国の記録か、宗教的な文献だろうとのことだ。展示しても問題はない、と。」
「……なるほど。しかし、確かに腑に落ちませんね。」
「そうだな。私も、なぜか妙な違和感を覚えた。」
シュフェンは机に視線を落とし、考え込むように言葉を続けた。
「彼の言葉には疑う余地はない。だが、この本に関する噂や、その存在自体が持つ不気味さが拭えないのも事実だ。」
会議室に静寂が広がる。
「……とはいえ、我々にできるのは専門家の判断を信じることだ。」
「では、予定通り展示を進めるということでよろしいでしょうか?」
シュフェンはしばし沈黙した後、静かに頷いた。
「……ああ。予定通り、展示を行う。」
その決断が、後にどんな影響を及ぼすのか——このとき、誰も知る由もなかった。
「内装工事についてだが――。」
‥‥。
この会議は約一週間にわたり、ついに終わった。
会議が終わってから約四週間の出来事。
展示室のフルリフォームに任命されたフェリックス・ウィルミナスとレオ・オーウェンは受付娘にあいさつを交わす。
「それでは、こちらの品をお持ちになって展示室へ向かってくださいね♪」
受付娘が優しく微笑みながら、
慎重に梱包された黒い本を作業着を着た元気いっぱいのお兄さんに手渡す。
「あと、くれぐれも落とさないように気をつけてくださいね✨✨✨」
「はーい!」「わかりました!」
「では、私はこれで失礼しますね!お仕事がんばってください‼‼‼」
「ありがとうございます!!お姉さんもお仕事がんばってくださいね!!!」
「あ、ありがとうございます✨✨✨」
そう言い残して受付娘は軽くお辞儀をし、猫のように去っていった。
………………。
「なあなあ、今回の展示品ほんとに国一つほろぼしたのか?ただの黒い本に見えるよ。」
「そうか⁇なんかすごく不気味な感じがする…。」
作業着を着た元気いっぱいのお兄さんは黒くて艶のある本を両腕に抱えていたものを俺にめがけて突き出してきた。
俺はその手を軽く払う。
「その本をこっちに近づけるな‼‼」
「え?こんなにもツヤツヤテカテカしてかわかっこいいのに??」
お兄さんは不思議そうに首を傾げてこちらをじっと見つめる。
「どこがだよ!!」
気づけばお兄さんは少し肩をすくめ俺の動向をうかっがっていた。
どうやら俺が少しムカついて声を荒げてしまったらしい。
なんというか大人げないな俺…かっこ悪っ!!
てか、お兄さんどこの子犬だよ!
クソッ!!顔面がすっごくかわゆいからそんな目でみんな!!!
「俺の方こそごめん。」
しばらく床と靴が擦れる音が響き二人の作業員は黙々と展示室へと向かう。
俺はその空白に耐えきれずに乾燥して張り付いた唇を無理やり開く。
「次の仕事ってなんだっけ?」
俺はもう少しマシな話題がなかったのかと内心攻めまくる。
「次は内装工事だぞー。」
「そうか・・・」
「ん、どうした?いたずらがばれて気まずそうな子犬のような顔をして・・・あ、もしかしてさっきの気にしてる??」
「べつに気にしてない。」
俺はすぐ顔を背けるがお兄さんは笑顔で目線を合わせる。
そんなくだらなくてどうしようもない攻防が続いた。
「ほんとはすんごく気にしてるくせに。」
「う、うるさい!!」
お兄さんは後ろ歩きしながら俺をからかった。
そのとき・・・。
ポップコーンが弾けた!!
違う!
俺の腹が空きすぎてぶつかったものが乾燥したコーンに見えただけだった・・・。
どうやらお兄さんと誰かがぶつかったようで、ぶつかった相手は身なりのしっかりしている男性だ。
俺は−40℃の地域に一人、放り出されだされた気分になるが、相手は誰なのか思い出せない。
ただ、俺よりも地位のお高いお方なんだろうなということしか・・・。
ん?これは、マズい状況なのでは??
「っ・・・!!!」
二人はヘアピンが交差するように地面に倒れ込む。
本は・・・よかった。お兄さんが落とさないようにがっしりと持っている。
俺は慌てた口調でだ、大丈夫ですかと尋ねると二人はなにも言わずに手を挙げて答える。
俺はなんだかその姿がかっこいいと思った。
「いたた・・・だ、大丈夫ですか??」
お兄さんはぶつかってしまった相手に問いかけるともぞもぞとお兄さんの下敷きになっている身分の高い?男の人が動く。
「お、も、い、、、はやく、、そこを、、どい、て、く、れ、ない、か・・・。」
それを遠巻きに見ていた俺は男の人が少しだけ芋虫に見えてしまった。
芋虫は瓦礫に挟まれた体をなんとかしようとするが重すぎて動く気配がしない。
そんな姿に思わず吹き出しそうになるが必死に耐えようとして身をよじらせる。
(なんか例えが悪くてごめんなさい~~~( ´•ᴗ•ก )汗)
「す、すみません。すぐどきます!!」
お兄さんは慌てて立ち上がり、数歩ほど離れる。
お兄さんの下敷きになっていたかっこいい男の人はまったくとつぶやきながら服についた埃を払う。
「あの、先程は申し訳ありませんでした!!」
「なに、もう気にしておらん。」
お兄さんはその言葉を聞いて安堵したかのようにほっと息をつく。
「寛大なおこころありがとうございます」
そのときのお兄さんはとびきりの笑顔で男の人に感謝を伝えた。
「そうえば、あの人って誰??すごくお偉いさんのような気がするんだけど・・・」
俺はお兄さんの耳元でひそひそと話をする。
「えっ!!君知らなかったの!?あのお方はこのペナンシオ美術館の館長、シュフェン様だよ」
「しっー…声が大きいっつーの!ばか!!」
……。…・。・??……。
「…え、…マジで??」
「マジ…だけど。」
「~~~~~‼‼‼‼」
俺は恥ずかしさのあまり軽く叩いたつもりが、思わず少し強めにお兄さんの肩を叩いてしまった。
「いたっ!!ひどい仕打ちだよ…まったく。」
お兄さんは俺が叩いた場所を優しくさすっている。どうやら、思った以上に痛かったようだ。
俺はトラフグのようにプクプクと頬を膨らませ、軽くうつむきながらぽつりとつぶやく。
「だって…恥ずかしいんだもん。」
すると、不意に――
「残念ながら、聞こえてるよ。君たち…。」
その一言で俺たちは地獄の底にマッハで叩き落された気分になり、へなへなと整備の行き届いた床に崩れ落ちる。
「オワタ…。」
「ドンマイ…。」
お兄さんは俺をなだめるかのように背中を抱きしめる。
「ちょっと君たちみっともないから早く立ち上がりなさい。はあ、私はなにを見せられてるんだ??」
男の人は少し引き気味な様子で頭を抱え溜息を吐いた。
「ところで、君たちの担当はどこだ?」
『私たちの担当は展示室の内装工事です。』
俺とお兄さんは同時に声を発したせいか綺麗にはもったようだ。
「そうか、ならちょうどいい。私についてきてくれ。」
「はい、わかりました。」
「はい、承知しました。」
シュフェン様はそんなことはどうでもいいかのようにすました顔で俺たちを展示室へと歩を進めた。
フェリックス・ウィルミナス
誕生日 4月30日
年齢 20歳
血液型 B
身長 175cm
趣味 昆虫の観察・ゲーム・栽培
美術館で働いている。
本人が言うには仕事の速さではだれにも負けないとのこと。
お兄さんとは幼馴染で今も遠くに出かけに行くほど仲が良い。
たまにクレイジーな道を走るが、普段は優しく気配りができる人。
いつか昆虫の標本を作りたいらしく仕事合間に隙見ては昆虫を捕まえていると従業員から連絡があった。
レオ・オーウェン
誕生日 6月15日
年齢 22歳
血液型 A
身長 180cm
趣味 本を読む・運動・ゲーム
美術館で働いている。
幼馴染がまさか一緒の勤務先のことにいまだに信じられないらしい。
天然キャラでぬけているところがなんだか小動物みたいでとてもかわいらしい。
オシャレなカフェでコーヒーを片手に本を読むことが一番好き。
おすすめのコーヒーショップは「łocinus」ここの料理はどれも絶品とのこと。
もう一つ紹介されそうだったため遠慮しておいた。