エピローグ 念願の一枚
これは、クレイさんとメアリーさん、二人のその後の話になる。
重症のクレイさんと軽傷のメアリーさん。《焔の塔》で負った傷の治療は僕が、ではなく、メイビスが請け負った。
重症のクレイさんはともかく、腕以外は軽傷だったメアリーさんは三日で完治。その傷の治る速さは、流石はBランクの冒険者と言えた。
反対に、重症だったクレイさんの完治は一ヶ月の月日を要した。傷口に塗り込んだ薬草の治癒成分、その吸収が一割にも満たなかったのだ。
薬草の治癒成分の六割を吸収していたメアリーさんとは違い、傷の完治に五倍もの時間を費やす事になったクレイさん。
よって、治療費も五倍。こちらも商売なので、敗けて上げる訳にも行かない。
クレイさんの依頼に関しては、僕の落ち度もあるので免除。残すは、一ヶ月間の宿泊料と治療費と朝昼夜のご飯代。
全部で、一四○○○○エルとなった。
Eランクの冒険者からしてみれば、かなりの大金。
案の定、クレイさんは財布の中身を空にして、くとぼとぼと店を出て行く事になった。
それから暫く経って、クレイさんとメアリーさんがお店を訪ねて来た。
どうやら、二人でパーティーを組んだらしい。
これから、幼い頃に交わした約束を果たす為に二人で旅に出るのだとか。
「律儀だねぇ。わざわざ顔を出さなくてもいいのに」そう言うと、「キャットさんは恩人だから」とクレイさんは僕に言った。
恩人なんて、そんな風に感じる必要は何処にもないと言うのに。
勇気を出したのも、ボロボロになって戦ったのも、全部彼の力なのだから。
僕は、そんな彼に少し力を貸しただけに過ぎない。
とは言え、メアリーさんの依頼に関しては違う。ちゃんと依頼を引き受け、便利屋としての職務を全うした。
だから、依頼を達成した『証』を書いてもらった。
メアリー・テイラーの名前を。
ついでに、クレイ・ライトの名前を。
『便利屋〈キャット〉さん、依頼を引き受けてくださりありがとうございました。また何かあればお願いします』。
そんな、お礼の一言を添えて。
僕は、依頼達成書と命名したそれを、酒場の壁の大きなボードに貼り付けた。
これから先、このボードいっぱいに依頼達成書が並ぶ事を考えると、それはもう笑顔が溢れて来る。
そんな、夢の様な未来を思い描きながら、僕は『それ』を見つめた。
——便利屋〈キャット〉、初の依頼達成の証を。




