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便利屋〈CAT〉始めました  作者: ただの屍
第一章 あの日の約束
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9話 あの日の約束



 目を覚ました時、俺はそこが天国の様に感じられた。


「やっと起きた。おはよ、クレイ」


 俺を覗き込んで来る、君の姿があったから。


「ここは……」

「便利屋さんのお店だよ」

「……そうか。キャットさんが……」


 ベットから体を起こして、包帯でぐるぐる巻きにされた自分の体を見下ろした。

 思い浮かぶのは、あの猫耳少年の姿だ。

 意識を失う前、最後の記憶。彼はクレイの元に駆けつけて来てくれた。

 彼の笑顔を見て、安心したのを薄らと覚えている。


「その腕……」

「うん。駄目だって。実物があるならまだしも、ないならどうしようもないって」

「……そうか。俺のせいで、ごめ——」

「謝らないでっ!」


 謝ろうとして、怒鳴られた。

 悲痛に歪んだ顔で、メアリーはその肩から下のない腕を俺に突き付けた。


「これは私が貴方と仲直りがしたくて! 勝手に計画立てて! その結果、私が招いた事なの! 貴方に謝らせる為にした事じゃないの……っ!」

「わ、分かった。ごめん。俺が悪かった」

「分かってない! 何も分かってない! 血塗れの貴方を見た時、貴方が死んじゃうじゃないかって! 私の身勝手な行動のせいで貴方を失うんじゃないかって!」

「ごめん。全部、俺が悪い。だから、落ち着いて……」


 ぼかぼかと、胸を殴られる。

 涙を流す君を慰める言葉が見つからない。


 だから、君の頭を撫でた。

 泣き止んで欲しくて、話し合いをしたくて。


「落ち着けるか馬鹿ぁあ! ずっと謝りたかった! ずっと会いたかった! ずっと、私は貴方の事が……んん……!」


 その先を、君から聞くのは筋違いな気がした。

 君の元から離れたのは、俺だ。

 瞬く間に実力を付けて行く君に抱いた醜い劣等感に、君が俺に向ける偽りの笑顔に、耐え切れなくなったのは俺なのだ。


 だから、その言葉を君から聞く訳にはいかなくて、俺は、君の唇を塞いだ。


「……んん……」


 メアリーの顔が真っ赤に染まる。


 睫毛が、震えている。

 触れる唇が、震えている。

 震えた指が、俺の指に絡んだ。


 だから、もう、何も怖くなんかなくて。


「メアリー、君の事が好きだ。あの日の約束を、君の隣りで果たす役目をもう一度、俺にくれないかな?」


 唇と唇が離れて、君の目を見て、俺は伝えた。


 そして——。


「おっそいのよ、馬鹿……」


 もう一度、二人は口付けを交わした。





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