女子風呂での決闘 7
「さぁっ! ナタリアお姉様の決闘だよっ!」
「邪魔するんじゃないわよ!」
「見世物じゃないわ! 向こうに行ってっ!!」
大衆浴場の表玄関前の通りをナタリア配下の女達がせき止めて簡易的な決闘場にする。
ナタリアは取り巻きの娘から大型の斧を受け取るとブンブンと風切り音を立てて振り回してから、それを中段の構えにピタッと止めると俺に向かって口上を述べる。
「モトリルの戦士ナタリアっ!!
恥辱を受けた復讐として決闘を申し付ける!
降参するか、受けるか答えなっ!!」
・・・俺はその斧捌きから彼女が並大抵の戦士ではないと悟った。だが、重すぎる斧が体にあってはいない。きっと男に負けたくない思いが彼女に大斧を持たせているのだろう。重戦士を多く輩出しているモトリルの出身な事を思えば彼女がどういう人生の辛苦を味わってきたか想像に難くない。
・・・勿体ない。男に力負けしたくないという意地など持たなければ、もっと優れた戦士になっただろうに・・・。
そう思いながら、行きずりの決闘を受けるために腰の長剣を俺が抜こうとした時、アルバートが駆けつけてくれた。
「うわっ! ローニャッ、これはどういう事だい?」
そう言って野次馬の人垣を掻き分けて姿を表したアルバートは風呂屋を中心に商売する少年娼婦達を引き連れていて、少年達から黄色い声を浴びていた。
「・・・あんたこそ、どういうことなんだよ。」
俺が唇を尖らせながら、美少年達を指差すとアルバートは苛ついた様子で答えた。
「知るかっ!! 勝手に付きまとってくるんだよっ!!
私にその気はないっ!!」
どうやらこのイケメンは美少年も虜にするらしい。
「そう。こっちも似たようなものよ。
あのお姉様と決闘する事になった。」
「決闘!? 何でそんなバカな事を?」
俺はアルバートに事情を説明した。
「だってアイツ、俺のオッパイを鷲掴みにしたんだものっ!! 全部アイツが原因だ!」
「お前が先に龍虫退治に挑むアタイを侮辱した上に頬を引っ叩いたんだろうがっ!!」
ナタリアは俺の訴えに対して光の速さで突っ込みを入れてきた。そして、さらに決闘に首を突っ込んできたアルバートにも喧嘩を売る。
「大体、なんだその優男はっ!!
女の決闘に男が割り込むなんてどういう了見だ! お前の彼氏か?」
アルバートはナタリアの目を真っすぐ見つめながら大声ではっきりと宣言した。
「そうだ! 私はこのローニャの恋人であり婚約者だっ!!
故にこの決闘の仲裁を申し込む!!」
・・・え?
その発言を一瞬、理解できず、理解すると顔から湯気が出るほど赤面し狼狽えた。
「や、ややや、やだっ!!
な、ななな、なによっ!? 婚約者って・・・」と、狼狽える俺の言葉は最後まで語られることもなくアルバートの大きな掌でふさがれる。
「やぁんっ!!」
掌に驚いて逃げようとする俺の耳元でアルバートが囁く。
「しっ。今はこの方が都合がいい。
いいね?」
(は、はい。)と答えるかわりに俺は何度も頷いた。




