アルバートの独白
やぁ、諸君。初めまして私の名はアルバート・ヴァン・カール・フランソワーズ・ガルシア。親しい人はアルと呼ぶ。ガルシア伯爵家の次期当主だ。
私の出番はまだ少しだけ早いのだが、ローニャから極端に色欲と美男子以外への関心が抜け落ちてしまった為に、この世界への描写があまりにも少なくなっている本作品には補足が必要である。
そこで神や魔法。化物が実在するこの世界の事を多少長くなるがアホの子・ローニャにかわって私が話しておきたいと思う。
まず、身もふたもない言い方をしてしまうが、この世界が何処の何であろうと諸君には全く関係が無い事である。何故なら決して諸君の世界とは交わることがない遠い遠い世界の話であるからだ。
さて、その遠い遠い世界の事を我々は「カナーン」”神々に祝福された土地” と呼んでいる。
このカナーンには、大小さまざまな国家が各地域、地方にあり、さまざまな宗教と人種が暮らしている。
この様々な人種・宗教というのは多種多様ではあるが大別すると2つに分類される。
光の勢力と闇の勢力だ。
光の勢力はこの世界を作った神々の勢力で、闇の勢力はこの世界を狙って侵入してきた外来の神々の勢力だ。
光の勢力は我々に豊穣をもたらし、闇の勢力は我々から搾取する。
そんな闇の勢力を信仰する者達がいるというのは、諸君からすると異なことに思えるやもしれないが、簡単に言ってしまうと闇の神々に媚びへつらうので自分たちに恩恵をくださいと願う者達、もしくは闇の神々によってこの世界に送り込まれた化物たちのための宗教なのだ。
光と闇の力関係は圧倒的にホーム側の光の勢力が有利である。各国家には光の勢力の教会があり、それが国を超えて独自のネットワークを築き各国間で隔たりなく交流している。そうして助け合う事で闇の勢力が陣地を増やす前に叩き潰す防波堤となっている。闇の勢力はそんな光の勢力に対抗すべき拠点としてダンジョンを作ったり、本作第一話のように使われていない遺跡を占拠して光の勢力に攻撃して来たりする。
この拠点の奪い合いが光と闇の戦争というわけだ。
さて、ローニャはその闇の勢力の中でもとりわけ恐ろしい魔神シトリーを討伐したことにより女に変えられてしまい、この呪いを解くために闇の勢力と戦う教会や冒険者のネットワークを頼りに国境を自由に移動しながら各地を転々としているのだ。彼女の詳しい素性は、今後改めて語っていくこととなるので、今は省略したいと思う。
次に国家について話したいと思う。
我々の住む世界カナーンは未だ成熟していない世界であり、人口十万人程度を頂点とし、大小様々な国や自治集合体が点在する。闇の勢力との戦いに備え巨大な擁壁で都市を囲んだ城塞都市国家である。それらは人口が多い方から順に国、州、町、村と言ったような名称で呼ばれる。
ローニャが今、旅をしている場所は光の勢力の総本山がある国「グラナダ」を中心に光の勢力に属する大国家ひしめくアンダルシア地方。
ローニャはそこを出発して、いま東の方角を旅している。
これがローニャが旅する世界。舞台なのだ。
次に魔法と職業について説明しよう。
光の勢力の人間が使う超自然の力には祈祷と魔法がある。
祈祷は教会に属する者の奇跡の力であり、魔法は精霊魔法と加護魔法の二つに分類される。
ローニャが駆使する精霊魔法は文字通り精霊の力を借りて敵を滅ぼす術であり、チャームが駆使する加護魔法は魔力によって対象の能力を底上げするものだ。術者は己の魔力で「加速」や「防衛」と言った加護を対象者にもたらす。
これらのスキルには熟練度によってLV分けがなされている。
LV分けは祈祷と魔法だけでなく、この世界の職業の個別スキルにも存在する。
全て最低がLV1で最高がLV5と規定されている。複数の職業スキルを取得した者は、自身が持つ最高位のLVに認定される。
(例)魔法戦士LV3(内訳:戦士LV2、精霊魔法LV3、探索LV1、薬学LV1)
ちなみに教会所属の神官騎士はこの世界最高位の職業であり、冒険者は民間の個人事業主の集合体である。ローニャはこの冒険者に所属し、その権能のおかげで各国をある程度自由に移動できるのだ。
さて、これで何となくの世界観はご理解いただけただろうか?
では、諸君。ひとまず講釈はここまで。
ごきげんよう。またお会いしましょう。
~アルバート・ヴァン・カール・フランソワーズ・ガルシア~