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あばずれローニャ  作者: 黒神譚
最終話
146/150

あてのない未来 3

私達は狭い地下通路を1時ほど時間をかけて抜けた。

木々に偽装した出入り口の外に誰もいないことを護衛のオークたちが確認してから私は外に出る。

外の光から既に昼になっていることに気が付いた。


それでも私の自我は女のままだった。

多分、アルバートに告白したときに私の中で自分が女だと完全に受け入れたことになり、男としての自我は消えたのだろう。

あの時の自分は私の意地の部分の表れだったのだろうかとも思ったけど、あの時の自分は確かにいた。


そんなことを考えていると、護衛のオークたちが私のために短剣3本と自分の指にはめていた指輪をくれた。きっと金に換えて旅費にしてくださいと言う事なのだろう。

重ね重ね私には彼らからそんなことをしてもらう資格はないのに、と思いながら彼らの気持ちを受け取った。


彼らと別れを済ませると私はふらつく体に鞭打つように山道を進んだ。

討伐隊と出会わぬように気をつけながら。

素足のままの山道は苦痛であったけど、それでもどうにかこうにか、私は討伐隊とは出会わぬ方向に無事に下山することができた。

その頃にはすっかり、夜が暮れていた。

太陽の加護が消え、夜の闇が訪れると呪いの力が増すのに合わせてチャームも元気を取り戻してくれた。


(ママ。大変だったでしょう?

 私が足の傷を治し、体を強化してあげる。)


チャームはそういって私に加護魔法をかけてくれた。

これは正直、助かる。

15~6歳の少女の体には、これまでの道のりは過酷すぎた。疲れきった体が癒されていく心地よさに酔いしれるようにして、やがて私は眠りに落ちていった。



やがて朝になって小鳥のさえずりと共に目が覚めた。しかし、私は酷い倦怠感で山のふもとの木陰に寝ころんだまま起き上がる気力さえ沸いてこなかった。

魔除けの効果のおかげで私は魔神シトリーの夢を見なかったけれども、朝目覚めたとき、我に返ったように私はこれまでの人生の全てを失っていることに気が付いた。


「・・・・・・ディエゴなの・・・」

あの時、私は全てを告白し、そして全てを失ったのだった。

なによりもアルバートを失ってしまった。



きっと彼はこれから先は自分を騙していた私を憎むだろう。

色欲の魔神シトリーの呪いのためとはいえ、私は闇の戦巫女であり、シトリーの后であり、そしてチャームの母親なのだ。

神官騎士の彼が見逃すわけがない。

きっと私は光の勢力からも闇の勢力からも指名手配の身。何処に行くのも常に危険が付きまとうし、いつかアルバートと対決する日が来るのかもしれない・・・。


・・・・・・そんなの嫌っ!!


「・・・ねぇ、チャーム。

 私、この先どうやって生きて行ったらいいの?」


思わずそんな弱音を吐いてしまった。

生きる希望を失ってしまった気がするけど、私にはまだ、「どうやって生きていく」のかは考えなければならない。

だって、私は一人じゃない。可愛い娘がいるのだから。

彼女のために私は生き残らなければならない・・・。


でも、どうすればいいのか・・・。私は途方に暮れるばかりだった。

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