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あばずれローニャ  作者: 黒神譚
第9話
141/150

訣別の時 25

恐れていた通りの結果になった。

私が闇の勢力に崇め奉られている姿を見て皆が私を闇の戦巫女と認識し、殺しにかかって来るであろうと危惧していたことが避けられない事実として決定してしまった。


アルバートは

「黙れっ! 私は知っている。ローニャは魔神シトリーの呪いを受けてしまっただけの勇敢な冒険者だ。

 彼女の真心が純白なことを私は知っている。呪いの中にある美しく気高い魂を私は見た。

 ローニャは魔神シトリーの呪いから救わねばならない女性だっ!!」

と、必死で説得したけど、魔神シトリー召喚の恐怖にとり憑かれた討伐隊は、アルバートがローニャに魅了されたと決断し、彼の体を強引に引いて撤退させるのだった。


同じく闇の勢力でもメリナが僅かばかりの抵抗を見せていたが、顔に傷が残ることを恐れてしまったのだろうか? さして大きな抵抗も見せずにエルフたちに抱きかかえられるようにして後退していった。

全てのオークが後退し始める中、一人残された私を迎えにフェリックスが現れた。


「ローニャ様。貴女様の魔法が無ければ、恐らくあの神官騎士の奇跡で我らは全滅していた事でしょう。

 このご恩。一生、忘れません。

 では、ご無礼(つかまつ)ります。」


そう言うとフェリックスは動けなくなった私を抱きかかえて歩き出した。

私をさらに奥にある彼らの支配地に運ぶために。

メリナの本拠地。彼女が私を調教すると宣言した忌まわしい闇の神殿へ運ぶために。


「やっ・・・。まってっ!!

 いやっ!! 行きたくないっ!! 行きたくないのっ!!

 許してっ!! いやあああ~~~っ!!」


私は悲鳴交じりの声を上げてフェリックスに懇願した。メリナの神殿に行けばどんないやらしい責め苦を受けるのか想像するのも恐ろしかったからだ。

彼女の力の前に私は無力でさして抵抗もできないまま、彼女に体を好きなようにされ、快楽の奴隷にされてしまう事は目に見えている。

今、この場で討伐隊からも闇の勢力からも逃げ出せなければ、私に未来はなかった。


その時だった。私の悲鳴を聞いたアルバートの体が不死鳥の如く復活し、自分を押さえつけていた部下たちを怪力で振り払い、吹き飛ばすと私を助けに単身で突撃してきた。


「ローーーーニャァァァァァーーーーッ!!」


叫び。突撃する。その勢いは誰も手に触れる事さえ出来ないほどだった。

その剣幕を見てフェリックスは慌てた。すでに一方通行の後退路、抜け道まであと少しの所まで来ていたけど、アルバートに捕まってしまうと恐れたからだ。


「うおおおおおっ!!」


フェリックスは必死でダッシュする。しかし、抜け道の入り口まで入ったところでアルバートに掴まってしまった。

その時のアルバートの姿はまるで死神のようだった。

フェリックスの後ろでアルバートの足止めをしようとしていたオークたちを紙切れのように切り裂いてここまで来たのだろう。体中は返り血に染まり、呼吸は乱れに乱れ(ふいご)のような音を立てていた。誰が見ても疲労困憊の体であろうに目は私を救う強い意志と闇の勢力を殺す意思に染まり、血を染まった顔の中で不気味なほど爛々(らんらん)と輝いていた。


「くっ・・・ば、化物めっ!!」


「貴様に言われる筋合いはない。」


アルバートの姿におびえるフェリックス。二人は戦う前から雌雄が決していた。

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