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あばずれローニャ  作者: 黒神譚
第9話
139/150

訣別の時 23

大天使カマエルの放った火球による大爆発は魔神シトリーの幻影とオーク達を攻撃した。

その威力はすさまじく、大量の魔力を秘めていたはずの魔神シトリーの幻影やオーク兵たちも情け容赦なく殺した。

しかし、大天使カマエルの一撃はそれで収まりはしない。

過剰な大爆発はその場にいた全員を殺すハズだった。



だが、私がそれを阻止した。

土精霊ベヒーモスが創造した巌の防御壁はカマエルの大爆発に耐え、その威力を吸収して洞窟崩壊を止めることに成功したのだった。


しかし、私は再び魔力を使い果たしてしまった。

再び疲労困憊となり、まともに立っている事さえ厳しい状態となっていた。

そんな私のうつろな瞳は、私と同じくエネルギーを多く消費してしまい、意識を失ったアルバートの姿を捕えていた。


そして、この場には私ともう一人、アルバートの変化を見逃さなかった人物がいた。

メリナだ。


「見ろっ!! 我々の最大の障害である神官騎士は意識を失ってしまっているぞっ!!

 者共(ものども)、進めっ! この好機を逃して我ら闇の勢力に未来はないと心得よっ!!

 負傷を気にかけるなっ!! 命を捨てよっ!

 今をおいて命の捨て時が他にあるものかっ!! 」


メリナは勝負所を心得ていた。

今の戦況なら痛み分けで双方撤退しても問題はない。しかし、今後の勢力争いの事を考えれば、ここで部隊が全滅してもアルバートを殺す方が何倍も有益である。

メリナはそう判断し、大爆発のせいで息も絶え絶えになったものが多くいるオーク兵に発破をかけた。


それは間違いなく英断だった。アルバート以上の脅威が他にあろうか?

それをここで殺せるというチャンスを逃してはならない。そうやってメリナは必死に決死の突撃を命じた。


だが、それこそが落とし穴だった。

彼女は必死過ぎたのだ。

だから彼女は見えなかった。

この混乱に乗じて頭の命を狙おうと考えるのが自分だけではないという考えに至らなかった。


爆発の余波で土煙舞う神殿内を自ら先陣を切って突撃するメリナ。

彼女がアルバートに向かって前進する最中、土煙を切り裂くようにして一人の精鋭が突撃してきたのだ。


「きゃあああああっ!!」


決死の覚悟をしていたはずのオークたちの前進が思わず止まるほどの大事態。

闇の勢力の指揮官メリナが攻撃を受けて悲鳴を上げながら、もんどりうって地面に倒れ込んだのだ。


「総員っ!! メリナ殿を守れっ!! 

 決して彼女を死なせるなっ!! 慮外者(りょがいもの)を囲みこんで殺せっ!!」


武人のフェリックスは異常事態にも適切に対応する。

彼の配下のオークたちは奇襲を仕掛けてきた精鋭ヒューゴ・サンチェスを取り囲もうとする。

しかし、彼は剣の腕一つで騎士団の部隊長にまで成り上がった剣豪。私とナタリアでさえ弄ばれてしまったほどの強者を思い通りに取り囲めたりはしない。


しかし、思い通りに行かないのはヒューゴも同じだった。


「畜生ッ!! 浅かったかっ!!」


その言葉を裏付けるかのようにメリナは立ち上がった。

その額の傷を手で抑えながら、鮮血を垂らしながら怒りに任せて吠える。


「貴様っ!! よくもっ・・・・・・・よくも私の顔をっ!!」


その声は涙に震えていた。

その時、私はヒューゴの奇襲を受けても致命傷を避けたメリナの強さに感心するよりも

(ああ・・・。彼女はやはり女なんだ。)と感じていた。

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