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あばずれローニャ  作者: 黒神譚
第9話
138/150

訣別の時 22

チャームは身動きが取れないほど疲弊した体に鞭打つようにして神殿の魔力を私に送る。

それは必死に。その姿は必死そのものだった。


チャームは言った。皆を救ってと。

その皆の中には闇の勢力であるオークもエルフも含まれている。

アルバートの神聖に触れて闇の勢力から光の勢力に塗り替えられつつあるチャームだけど、彼女は元来は闇の勢力の存在。魔神シトリーの呪いの具現化。


そんなチャームがアルバートたちだけでなく、闇の勢力の者達も救いたいと思うことは自然の事。

彼女の気持ちを考えると私の胸は切なくなった。


しかし・・・彼女はやり切った。

ボロボロの体では透過できる魔力量に限界があったけれども、それでも私が一度の戦闘に耐えうる量の魔力を供給し切ってくれたのだ。


(ああっ・・・・・・も、もうだめぇ~・・・・・・)


限界を超えたチャームは自分がやり切ったことを確認することもできないほど疲れ切ってついに意識を失ってしまう。

床に横たわる私の胸の上に倒れ込んだチャームの体は、そのまま私の胸の谷間にとけこんでいくように沈んでいき、やがて姿を見せなくなった。

彼女と一心同体の私には彼女の存在が消えたわけではないことがわかる。彼女の魂の温もりを私は感じていた。


私の娘は大仕事やり切ったのだ。

ならば私が事を成さないわけにはいかない。

未だダメージが残る体を起こし、地面に跪いて右手で大地に触れながら私は詠唱を始める。


「おお、頑強なる巌の戦士、我が友ベヒーモスよ。

 全ての厄災から我が身を守る楯をお与えください。

 私は光の忠実な従者。古来の契約に従って御身の加護をお与えください。

 岩の結界をお与えください・・・」


私が土魔法の詠唱を始めた時、その異変を魔神シトリーは敏感に察知して私の方を振り返って睨みつけたが、時すでに遅し。

私の詠唱は既に終了し、アルバートの大天使召喚の祈祷もまた完遂されていたのだった。


「天におわします我らの神よ。地におわします我らの神よ。

 闇の勢力に襲われる我らを御守り下さい。

 その慈悲深き御心とお力により偉大なる神の使途を御遣わし下さいませ。

 神々の言葉を聞き大天使カマエルよ、憐れみ給え。我らを救いたまえ。」


アルバートの祈祷の言葉が終わると同時にアルバートの命令に従って彼の体に手を触れていた冒険者たちの体から生気、エネルギーがアルバートに注がれる。

これにより5人の天使召喚で体力を消耗していたアルバートの生気は回復し、そのエネルギーは大天使召喚の奇跡にあてがわれたのだった。


そして、闇の神殿内部に聖なる大奇跡が起きた。

アルバート達の目の前にまるで暴風雨のように聖エネルギーが巻き起こり、凄まじい雷撃を周囲にまき散らしながら、大天使カマエルが降臨するのだった。


この世の者とは思えぬほど美しい御姿を見せた大天使の姿を我々は一瞬しか目視できなかった。

その一瞬の目視の後、同じく一瞬で大爆発を巻き起こして大天使がその場から消えてしまったからだ。


大天使は魔神シトリーを確認すると同時に巨大な火球を魔神シトリーに向けて放ったかと思うと大爆発を起こしてその場にいた全ての者達を滅ぼすのだった。

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