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あばずれローニャ  作者: 黒神譚
第9話
136/150

訣別の時 20

アルバートは誰に遠慮することなく堂々と宣言する。

「我が愛しの姫君を取り戻して見せる」・・・・・・と。


本来なら歓喜の声を上げて歓迎したいところだけれども、その言葉を私は素直に喜べなかった。

だって、その「取り戻す」という敵対対象にチャームも含まれているから。

(違うの。アルバートっ!

 チャームは大切な私の娘なのつ!!)

心ではそう思っていても、強引に魔神召喚に使われた私の体は床に倒れ伏したまま身動き一つ取れなかった。


うつろな瞳で見える光景の中にはアルバートの発言に若干傷つきながらも、彼を守るために武器を構えるナタリアとレジーナが見えた。彼女たちの気持ちを考えると切ない気分にもなるけど、今はそれどころではなかった。


大勢のオークを従えた魔神シトリーはアルバートの挑発を受けて笑い飛ばすことはあっても、怒りで感情を乱すことはなかった。


「私を倒したディエゴだと・・・? 我が愛しの姫君だと?

 お前は愚かだな? 神官騎士よ。何も知らないらしい。

 まぁ・・・知らぬままの方が滑稽で面白いから教えてやる気にはならんが・・・・・・。

 あくまで逆らうというのならば、この場で殺すしかないな。」


魔神シトリーが右手を上げて討伐隊を指差すと、彼に対して礼拝していたオークたちは速やかに立ち上がり、討伐隊の方を振り返って武器を構えた。

異様だったのはその士気の高さだった。先ほどまでも戦意が高かったオークたちだけど、今は狂気じみた覇気に満ちていた。

恐らくは神官騎士の固有スキル勇気付与(ハブコーレッジ)に相当する加護をオークたちは魔神シトリーから受けたのだろう。


そして魔神シトリーが上げた右手を振り下ろすと、正気を失ったようにオークたちは一心不乱に討伐隊に突撃する。

その勢いはすさまじく、逆にアルバートの勇気付与(ハブコーレッジ)が剥がされてしまった討伐隊は狼狽えてじりじりと後退を始める。


しかし、それとは裏腹に敵に対して猛撃に出る者たちがいた。5人の天使たちとアルバートだった。


「怯むなっ!! このまま後退して生き残れると思うなっ!!

 忘れたのかっ!? 外は足場の悪い山道。それも上り坂だぞっ!!

 我々が生き残る道は、天使が御臨界しておられる内に前進して敵を打ち砕く以外にないっ!!」


アルバートと5人の天使は圧倒的だった。向かい来るオークたちはその大剣を前にして無力だった。一振りでまるで大鎌で薙ぎ払われる草木のように死体が宙に舞う。

それでも魔神シトリーの加護を受けたオークたちは怯むことはない。仲間の死を見ても正気を失ったように突撃を繰り返した。

その姿を見て多くの討伐部隊の者たちが恐れるばかりだったけれども、中にはアルバートの闘う姿に鼓舞されて剣を取って加勢し始める者達もいた。


数でも士気でも勝るオークに対して討伐部隊は劣勢だったが、それでもナタリアやレジーナの指揮により五分に近い戦いを繰り広げていた。しかし、この戦線を維持できるのは5人の天使を召喚しておける間だけの話。天使がここを去れば、討伐部隊が全滅するのは目に見えていた。


なによりも闇の勢力には魔神シトリーがいるのだから・・・・・・。

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