訣別の時 18
「いけませんっ! メリナ殿。戦いの流れが変わりました。
これ以上、この場にとどまるのは危険ですっ!!
ここは我らが命に代えても足止めいたします。どうかローニャ様と共にお逃げ下さい。」
5人の天使の姿を見たフェリックスは極めて冷静で的確な決断をしてメリナに撤退を進言する。
だが、強敵を前に興奮するメリナはそれを拒否した。
「黙れっ!! あの奇跡を見よっ!!
あの力の前に貴様たちオークが何の役に立つというのかっ!?」
メリナの一喝にフェリックスは言葉を失った。それは、図星だったからだ。
フェリックスもアルバートが強敵であることは察していた。そのための対策として完璧な撤退作戦も用意していた。
しかし、アルバートの起こした奇跡の前には、その作戦さへ無意味であると自覚せざるを得なかった。
一族の命を捨てての撤退戦さえ無意味だと認めるのはとても辛い事だった。フェリックスの無念さを私は彼の背中を見て感じていた。
だが、メリナはそうではなかった。彼女には彼女の秘策がまだ用意されていたのだった。
「戦いの流れが変わっただと? それはこちらのセリフだっ!!
やつは切り札を切ったのだ。
5人の天使を召喚するほどの奇跡をおこなった奴が戦闘続行できなくなるのは時間の問題だ。
あの天使とて、いつまでも召喚し続けてはおられまいっ!!
だが、私にはまだ切っていない札があるっ!!
あの男が光の勢力の天使を用意するならば、こちらはっ・・・・・・!!」
そう言うとメリナは私の元まで駆け寄ると私を肩に担ぎ上げて台座に運ぶ。
そうして私を台座に投げ捨てると、僅かに残った下着すら剥ぎ取り始めたのだ。
「きゃああっ!! な、なにをするのっ!!
やめてっ! やめて、メリナっ!!
・・・・・・いやああああ~~~~っ!!」
メリナの腕力はまるで男性のようでか弱い少女の私に抗えるはずもない。
・・・・・いいえ。決してそれだけではなかった。私はもっと早くに気が付くべきだった。
私は彼女を望んでいる。彼女の責め苦を望んでいた。
私の魂は自分では気が付かないうちにそのように作り変えられ続けていた。
それは決して魔神シトリーが私を苦しめる為だけのために行っていた事ではないことに私はもっと早くに気が付くべきだった。
どうして私が女にされたのか。
どうしてチャームが生まれたのか。
それは全てこのためだった・・・・・・
胸を隠していたブラガ剥ぎ取られた恥辱の極みのようなその瞬間に私の心に湧き上がった「怒り」、「恥」、「恐怖」。そして「歓び」の感情。
それがチャームの中に流れ込み、私の感情を糧にして色欲の呪いの象徴であるチャームの魔力が爆発的に増幅する。
その魔力は闇の勢力の神殿という穢れた空間と影響しあい、相乗効果を得て、とある奇跡を起こす。
その奇跡とは次元を超える経路を作り出すこと。
私がそのことをチャームの体を通じて感じた時、チャームの体の内部から現実世界を切り裂く異世界のエネルギーがあふれ出し、そこから異界の者が姿を現すのだった。
圧倒的な邪悪な魔力に巨大な肉体。そしてこの世の全ての者を凌駕する神鳴る存在。
魔神シトリーがこの世界に現界したのだった・・・。