表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あばずれローニャ  作者: 黒神譚
第9話
133/150

訣別の時 17

メリナの攪乱作戦は成功し、討伐部隊は動揺していた。

その動揺が覚めぬうちに神殿という密室に数で勝るオークたちがスクラムを組んで一斉に飛び掛かって来る。

その突撃を冒険者たちは巨大な楯の擁壁で受け止めて阻止する。


楯と肉。そしてそれを支える骨までもがミシミシと音を立てて激しい肉の押しつぶしあいが始まった。こういった戦いは例外なく押し負けた方が不利となる。肉弾戦で負けるという事は精神的にも敗北を意味するからだ。負けを認めた瞬間、アッサリと後退が始まる。逃げ腰の戦士が生き残る道など戦場にはないのだ。


「だ、ダメよっ!! 皆、気をしっかり持ってっ!! お願いっ!!」


仲間の動揺に狼狽えてしまったレジーナが泣きそうな声を上げて鼓舞しようとするが、それは怯える彼らに対しては逆効果だった。襲い掛かって来るオークの進撃を楯で受け止めている冒険者たちが「も、もうダメだっ! こんな楯じゃもたないっ!! いったん撤退しようぜっ!!」と弱音を吐き始める。

恐怖は仲間に伝達していき、やがて戦う意思が弱まりジリジリ後退が始まりだした。


その時だった・・・・・。


「前進せよっ!!」


気迫のこもったアルバートの一喝が神殿に響く。

そのたった一喝で冒険者たちの様子が変わる。

「行くぞっ!! 押し返せっ!!」「せーのっ!!」

皆で掛け声を掛け合ってオークたちのスクラムを押し返し始めたのだった。


「こ、これはまさか・・・勇気付与(ハブコーレッジ)

 ・・・・・・神官騎士の固有スキルっ!!」


戦場に()いてはある意味魔法よりも絶大な威力を誇るその奇跡を目の当たりにしたメリナが驚愕の声を上げる。つい先ほどまで弱音を吐いていた冒険者たちが一瞬で闘争心をむき出しにしてきたのだ。


「やれっ!! 皆殺しにしてやれっ!!」「殺してやるっ!! 殺してやるぞ、闇の勢力どもっ!!」


前衛の物だけでなく楯の後列に並ぶ者達も攻撃に加わり始めて戦況は一変した。冒険者たちが盛り返し始めたのだ。

それを好機と見たのかアルバートが叫ぶ。


「潮目が変わったぞっ! レジーナ、ナタリア。指揮を頼むっ!!

 私は天使を召喚するっ!!」

「「はいっ!!」」


アルバートの命令に同時に答えたレジーナとナタリアも勇気付与の影響を受け、すでに覇気を取り戻していた。彼女達ならばこの戦況をどうにかできるだろう。

アルバートは二人の様子を確認すると、その場に跪いて両手を合わせた。


「天におわします我らの神よ。地におわします我らの神よ。

 闇の勢力に襲われる我らを御守り下さい。

 その慈悲深き御心とお力により偉大なる神の使途を御遣わし下さいませ。」


その時、私は奇跡を見た。

生まれて初めて本物の奇跡を見たのだ。


アルバートの奇跡の祈りが終わると同時に討伐隊の前に雷光が走り、冒険者たちを押し込んでいたオークたちを焼き焦がす。

オーク特有の甲高い悲鳴と彼らの体を焼く煙の中にこの世の者とは思われぬほど美しい5人の天使が降臨したのだった。


「天使・・・召喚。

 あの神官騎士・・・一人でこんな奇跡をやってのけたのかっ!?」


強敵の実力を目の当たりにしたメリナが恐怖と戦いの高揚を押さえきれなくなり、顔を引きつらせて笑うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ