訣別の時 15
冒険者たちは、全裸同然の私の姿を見て歓喜の声を上げるどころか、恐怖の声を上げていた。
そして状況が把握できないのは私も同じだった。
(なんでっ!? どうして私をそんな目で見るの?
私、こんなに可愛いのに、まるで化物でも見るかのように・・・)
美少女の私はこれまでこんな目で男性から見られたことはない。
誰もが好意の目や、いやらしい目で私を見ていた。
この異常事態を私は理解できずにいた。
でも、その内、神殿内に入ってきていたナタリアが私に気が付いた。
「ああっ!! あ、あれはローニャよっ!!
ア、アンタ。そんなところで何をしているのよっ!?」
ナタリアの声を聴いて我に返った冒険者たちは、やっと私に気が付いて「ほ、本当だ。ローニャだっ!」と声を上げる。
でも、これでホッと一息つけるわけではなかった。
ナタリアもやはり私の魔力に怯えたのだった。
「・・・・・・ローニャ。アンタ、どうしてそんな禍々しい魔力を持つようになっちゃったの?
それに、アンタが座っている席・・・。まるで化物たちに崇拝されているかのようじゃないか・・・。」
「ま、禍々しい魔力?
な、なにを言っているの? ナタリア。私は今まで通りだよ?」
怯えるナタリアを宥めようとした時だった。呆然とした表情でアルバートが私たちを指差して言った。
「・・・ロ・・・ローニャ。それは何だ?
その禍々しい邪気に満ちた精霊のような生き物は・・・。 」
言われて気が付いた。
チャームの存在を・・・。彼女が既に他人から可視状態にあることを。そしてその理由が私達が魔神シトリーの神殿の魔力に汚染されたことであることを思い出した。
そう。私たちは魔神シトリーの魔力と呪いに汚染されている。それは冒険者たちからは、私達は化物同然の魔力を放っている姿に見えているのだろう。
それは当初、私が危惧した事でもあった。
冒険者が私たちの姿を見た時、私を闇の戦巫女だと認識して私を殺しにかかってこないだろうか?、と。
あまりにも多くの事が起きてしまって、私はそんなことを忘れてしまっていた。そして、それが先ほどメリナが私に指摘した事だったのだ。
そして私を観察していたメリナは、私がその事に気が付いたことを悟ったのか、ニヤリといやらしい笑みを浮かべてから冒険者たちに宣言する。
「控えよっ! 光の勢力どもよっ!!
ここにおわしますは、恐れ多くも畏くも我らが神・魔神シトリー様のお后様であらせられるローニャ様と、魔神シトリー様とローニャ様の御息女チャーム様であるっ!!
貴様らのような身分卑しき光の者たちが目にしてよい御方達ではないわっ!!」
私の席の前で一際大きな声で叫ぶハイエルフの姿とその話す内容に冒険者たちは更に狼狽えるのだった。
「魔神シトリーのお后っ!? ローニャがかっ!?」
「そ、それにシトリーとローニャの間に出来た娘だって!?」
その狼狽えぶりを見てメリナが私に向かって勝利宣言のように高らかに笑った。
「だからいったでしょう? ローニャ様の思う通りにはなりませんと。
貴女様はすでに光の勢力の敵なのです。きゃ~はははははっ!!」