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あばずれローニャ  作者: 黒神譚
第9話
128/150

訣別の時 12

アルバートは必ず反撃に出る。彼の性格は誰よりも知っているつもりの私にはわかる。

それに完全撤退する理由がない。

何故ならアルバートは人間の領域では到達できない戦闘力を持つ天使召喚の奇跡を単独で行える。召喚できる時間に制限があるものの天使召喚の奇跡は闇の勢力にとって絶大な脅威となる。

少々の数の不利は覆せるであろう。


その上、アルバートは教会の秘術を授かり天使の上位存在である大天使さえ単独で召喚できる。

大天使召喚はさすがのアルバートでもごくごく短時間しか使用できないし、その疲労でその後に戦えなくなることは想像に難くない。

しかし、敵が建物の中に陣取ってしまえば、大天使召喚はほんの数瞬で十分だ。

例えば神殿の中でアルバートを迎え打とうとすれば大天使を召喚した瞬間に勝負はつく。密室の中で光の力が爆発すれば、その場にいる者は軒並み死ぬだろう。


そんな武器を持つアルバートが完全撤退することは考えにくい。

大勢の敵と戦う時は体力的に考えればアルバートにとっても危険なこと。でもそのための戦力も時間をかければ揃う。今回は増援を待つ間に先手を取られてしまった。

しかし、その後にアルバートが姿を消した事実を知った私は思う。一見成功したと思われたこの作戦がアルバートの心に火をつけたのだろうと。


アルバートは必ず復讐を果たす。

奇襲で先手を取られたのなら、アルバートは奇襲で先手を取り返す。

それもメリナが消えた部隊を発見できないというのだから、メリナの上を行く奇襲を思いつき、実行しているのだろう。


チャームもその危険性を察してフェリックスに注意する。


(危険よフェリックス。あなた達はあの神官騎士を甘く見ている。

 すぐに逃げ出す準備をしなさい。)


チャームはアルバートに惚れているとはいえ、自分の眷族であるオークたちを見殺しにはできない。

逃げ出すように助言をするがフェリックスは動じなかった。


「お心遣い、ありがとうございます。

 ですが、ご心配には及びません。我らとてあの男と正面から戦うつもりはないのです。逃げ算段は整っております。」


フェリックスの覚悟は変わらなかった。きっと最初に話してくれた抜け道の脱出作戦を敢行するつもりなのだろう。

そしてメリナにもなにかしらの秘策があると思う。この戦いは止められないだろう。チャームもそれを理解したのか説得は諦めた。


(では、フェリックス。用があればまた声をかけるので部屋から下がりなさい。)


チャームがそう命じるとフェリックスは深々と頭を下げて退出しようとした。

でも、その時だった。メリナが部屋に入ってきたのだった。


「失礼いたします。チャーム様、ローニャ様。

 敵捜索部隊が全滅しました。敵が反撃に来ます。

 至急、神殿にお出ましくださいませ。敵をそこで迎え撃ちます。」


メリナはそう言うと私の手を掴んで神殿へと連れて行こうとした。

突然のメリナの行動に慌てたのは私よりもフェリックスの方だった。私の手を引くメリナの手を掴んで引き留めて進言する。


「お待ちください。メリナ殿。それではローニャ様が危険にさらされます。」


「手を離せフェリックス。時は一刻も争うのだ。」


メリナはフェリックスを睨みつけ譲らなかった。

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