訣別の時 2
父親であり創造主である魔神シトリーに向かってチャームは吠え、そして私にも発破をかける。
(ママっ! しっかりしてっ!!
ここにお父様はいないっ! この世界はお父様が異界から魔力を飛ばし、貴女の脳裏に作り出した異界なのっ!
ここで貴女を拷問して脅し、貴女に闇の勢力に与する魂の契約をさせようとしているのよっ!!)
・・・魂の契約っ!!
そ、そういえば魔神シトリーは、さっき私に誓いの言葉を求めていたわっ!
チャームの言葉にハッとなり、私が自分の状況を理解した時、魔神シトリーは「くっくっくっ」と喉を鳴らして笑った。
「チャーム。我が愛しい娘よ。
なぜ、創造主である私に逆らう?
今、ローニャが私に忠誠を誓えば、お前の母は名実ともにお前と同じ闇の勢力になる。
このままローニャが光の勢力側にいれば、チャームよ。お前はいずれローニャに殺されるぞ。」
魔神シトリーはチャームも脅した。でもチャームはそんなまやかしの言葉に乗せられることはなかった。
(お言葉を返すようでは御座いますがっ!! お父様っ!!
ローニャは私の事を娘と言ってくれました。光の勢力から守ってくれると言ってくれました!!
このままの状態でも私はママに殺されることなどございませんっ!!)
「・・・チャームっ!!」
私とママと呼ぶこの呪いが具現化した娘は、私に全幅の信頼を寄せてくれている。そのことに私は感動した。
一方、魔神シトリーはそんなチャームを嘲笑う。
「はははっ! 失望したぞ、なんと愚かな娘だ。
例えローニャが殺さなくても、どの道お前は殺される。あの神官騎士はお前の存在を許さない。
奴がこの闇神殿に姿を見せた時、お前の姿がオークだけに見えていると思うな?
今のお前は人間にすら姿が見え、その声はアルバートに耳にも届くぞ。
お前が色欲の魔神シトリーの娘と知って、あの神官騎士がどうして殺さずにいられるかっ!!」
アルバートの恋心故に闇の魔力によって魂が塗り替えられることへ抗っているチャームにとって魔神シトリーの言葉は残酷だった。
アルバートはチャームの事を許さない。必ず殺す。
それは本当にそうかもしれない。あの人が闇の勢力を生かしておけるわけがないもの・・・。
魔神シトリーの言葉は真実に思えた。だからチャームもショックを受けて顔をうつ向かせてしまった。
彼女の背中側から見ている私にはチャームの顔は見えない。でも、泣いていることはわかる。
だって、私は彼女の母親だから・・・
「お黙りなさいっ!! 魔神シトリーっ!!
私を見くびらないでっ!! 誰だろうと、私の娘には指一本、触れさせないわっ!!」
(・・・ママっ!!)
私の一喝にチャームが歓喜の声を上げる。
そして、その様子がよほど彼を苛立たせたのか、魔神シトリーはさらに迫力を増し、私を脅してきた。
「黙れっ!! 何をぬかすかっ!
先ほどまで私に泣いて命乞いをしていた小娘が何という身の程知らずなっ!
もはや許さぬ。
このイバラの棘でお前の肌を引き裂き、この手でお前の乳房を蹂躙し、お前が泣いて許しを請おうが私自身でお前を貫き続けてやるっ!」