闇の戦巫女 5
焼けるように火照った体を静めるために耐えるハイエルフは、肩を震わせながら吐息交じりの声で事情を長々と説明してくれた。
「ローニャ様。ご覧いただいたように男でも女でもない私は、普段は女性には興味がありません。
その私が先ほどのように狂ってしまう。それが貴女様たちのお力なのです。
ですが初めてお会いした時、陽も落ちていたというのに私にはローニャ様の呪いがそこまで強くないことに気が付きました。」
「本来ならば、私でも狂わせる色欲の呪いをお持ちのローニャ様。貴女様がこの山に入った時点でオークたちは魔神シトリー様の残滓に恐れおののき、つき従ったでしょう。
しかし、そうはなりませんでした。」
「実際、私も間近にくるまでローニャ様の身から湧き出るシトリー様の呪いの力を感じ取ることができなかったのです。もし、私があの場に来るのがもう少し遅かったなら、ローニャ様は粗忽ものの手に落ち、どんな目に合わされていたのかわかりませんでした。
それほどシトリー様の呪いが弱くなっている証拠・・・。いえ、正確には光の呪いに塗り替えられている証拠とでも言いましょうか・・・。」
・・・光の呪い・・・。
ギョッとするようなことをメリナは語る。
いや、彼の立場を考えれば当然なのかもしれないわ。彼にとって光の勢力は敵であり、悪。
私達光の勢力にとっての清浄は、彼ら闇の勢力にとっては汚染なのだから。
そうやって彼の話を冷静に聞けるようになって、私は初めて根本的な疑問に気が付くことができた。
「ちょっと、まって・・・アナタ・・・その
どうして私の名前を知っているの?」
メリナは、未だに身を焦がすような体の火照りに耐えながら、それでも丁寧に答えてくれた。
「わ、私は一カ月前に魔神シトリー様の御神託を賜ったのです。
神は、私にディエゴとの死闘後に異界に戻られたこと。そして、その際にローニャ様とチャーム様を御造りになられましたことを語られました。
そして、神は私にお命じなさったのです。再びこの世界カナーンに降臨なされるまでご自身の妻子を守る様にと・・・」
「・・・なんですってっ!?」
メリナの告白は衝撃的なものだった。
私の心は乱れに乱れた。
「今から一カ月間の神託ですってっ!? そ、そんなバカな・・・
だ、だって・・・その時は私が魔神シトリーを殺した後だもんっ!!
それがこの世界に再臨するなんて・・・。
そんなことあるわけがないわっ!! あるわけないっ!!
だって、私が殺したんだもんっ!!!」
冷静さを失って大声で否定する私の言葉にメリナは首を振ってこたえた。
「神は人に殺せるものでは御座いません。
一時的に神の依り代となる素材を破壊したにすぎません。
神は大いなる存在。我らが手に触れる事さえ出来ないのです・・・。」
神は人に殺せるものではない。説得力がありすぎる言葉だった。
「そ・・・そんな・・・。
それじゃぁ、私達、なんのために戦ったの?
なんのために仲間は命を落としたというの?」
ショックのあまり私はその場にペタリと座り込んでしまった。