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攻撃力ゼロから始める剣聖譚 ~幼馴染の皇女に捨てられ魔法学園に入学したら、魔王と契約することになった~  作者: 大崎 アイル
第四章 『学園祭』編

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76話 ユージンは、◯◯と出会う

「どうしたの? ユージン・サンタフィールド」

 

 馴れ馴れしく俺の名前を呼ぶのは、10歳にも満たなそうな外見の幼女だった。

 探索者、なのだろう。

 ただし、周囲に仲間の姿は見えない。


 雪のような白髪と肌。

 血のようなローブ。


 紅玉(ルビー)のような瞳。

 その赤い瞳で見つめられると、一瞬、くらっとした。


 そして幼女の身体から発せられるのは、感じたことのないような異様な魔力(マナ)


 人間とは違う。

 魔王(エリー)とも、炎の神人族(スミレ)とも、天使(リータ)さんとも違う。

 強いて言えば魔物に近い……ような。


「君は……一体? どうして俺の名前を?」

「私? ふふ、名前はアネモイよ。よろしくね、魔王エリーニュスとの戦いは見事だったわ」

「ああ、よろしく。アネモイ……さん」


 先日の魔王(エリー)との神の試練(たたかい)を視ていた一人らしい。

 どう考えても幼子なのだが、自然と『さん』付けしてしまうような凄みがあった。


(アネモイ……という名前)


 どこかで聞き覚えがあったのだが、思い出せない。

 奇妙な魔力を発する幼女は、俺を警戒することなく近づいてくる。

 普通、他の探索者には気軽に話しかけたりしないのだが……。


「ねぇ、これ残してるの? 美味しそうね」 

「あ、あぁ。食べる? あげるよ」

 アネモイと名乗ったその子は、俺の隣に自然と座って持ってきた探索者用の軽食を指さした。


 硬めのパンにハムや野菜や卵を挟んで、ソースで味付けしたものだ。

 三つ持ってきたが、二つで満腹になった。

 

「ありがとう。あ~~~む」

(一口で!?)

 大人の手を広げたより大きなそのパンを、その幼女は一口で食べた。

 一瞬、信じられないくらい口が大きくなった気が……。


「悪くないわね♪」

 ぺろりと、赤い舌が唇のソースを拭った。

 

「なぁ、君の探索者仲間は近くにいるのか? 仲間のところまで送るよ」

「なかま?」

 俺が尋ねると、彼女はおかしそうに笑った。


「仲間なんて()()()()

「俺と同じ単独(ソロ)? 危ないんじゃないか?」


 人のことを言えた義理ではないが、103階層を単独で攻略というのは珍しい。

 俺だって上層を目指す場合は、必ず(チーム)で挑むと決めている。


「危ない? 面白いことを言うわね、あなた」

「お、おい」

 アネモイと名乗る幼女は、ふらふらと廃墟の影から出ていった。


 向かう先は、見晴らしのよい草原だ。

 魔物たちからもすぐに見つかる場所。


「~♪」

「危ないって!」

 鼻歌を口ずさみながら、軽やかな足取りで幼女は歩いていく。

 俺よりもずっと歩幅が狭いはずなのに、なかなか追いつけない。

 

 その時、大きな影が頭上を通り過ぎ――



 ズシン!!!!!



 と、地面が揺れ目の前に、美しい水色の鱗を持つ巨大な魔物が現れた。


(風竜の成竜!!!)

 飛竜の数倍はある巨体。

 階層主でもおかしくない化け物だ。



 ……グルルルルルルル



 風竜は低い唸り声をあげ、俺とアネモイを間違いなく視界に捉えている。

 ぎょろりと、大きな眼が俺たちを見下ろす。


「くっ!」

 俺は白刀に魔力を通し、弐天円鳴流の構えをとった。



 バサッ! バサッ! バサッ! バサッ! バサッ! ……



「え……? 」

 風竜は何もしてこず、去っていった。


 竜は自分の縄張りに入ってきた者に、容赦がない。

 てっきり襲われるものと覚悟していたが……。

 俺はぱっと幼女のほうを振り返った。


「君が何かした?」

「さぁ?」

 幼女はニヤニヤとしたままだ。


 おそらくアネモイが居たから、竜に襲われなかった。

 俺はそう感じた。

 もし、そんなことが可能だとしたら。


「君はもしかして魔物使い(テイマー)なのか?」 

「まぁ、そんなところね」

「凄いな」

 素直に驚いた。

 

 生物部にも竜を操れる魔物使いは一人だけいる。

 いや、学園の全生徒を探しても一人だけだろう。

 それくらい竜を従えるのは、難しい。


 そんなことを考えていると、視線に気づく。

 幼女が俺を面白そうに覗き込んだ。


「あなた、素敵ね。さっきは一人で竜と戦おうとした」 

「そりゃ、君をおいて逃げるわけにはいかないだろう」

「最近の探索者は、危なくなるとすぐに逃げる腰抜けばかり。まったく……退屈よ」


「最近て」

 外見が幼女のアネモイが言うと違和感があるが、おそらく見た目通りの年齢ではないのだろう。

 

「自分の力量に見合わない危険が迫れば、すぐに逃げる。命を大事に、っていうのが学園の基本方針だから」

「そんなんだからずっと上位の記録更新者が現れないのよ……忌々しい。学園とやらの方針は邪魔ね……」

 ずっとニヤニヤしていた顔が、急に不機嫌になる。


 幼女は気分屋らしい。


「ま、いいわ。今日はあなたに会えたし。500階層を目指すんでしょ、頑張ってね☆」

 軽やかな足取りで、しかし後ろ姿があっという間に小さくなる。


(魔法を使っているのか……?)

 このままではすぐに姿が見えなくなりそうだ。


「待ってくれ! 君は一体何者だ!?」

 103階層を単独で散歩するように歩き、竜すら従える魔物使い。

 なのに探索者として、名前を聞いたことがない。


「さっき名乗ったでしょ。私は()()()()()()()()よ。はやく上がってきなさい、ユージン・サンタフィールド」


「アネモイ・バベル……」


 赤いローブの幼女は、霧の中に入るように姿を消した。


 俺はその時になってやっと『彼女』の名前をどこで聞いたか思い出した。


 あれは『天使(リータ)』さんに、101階層より上層を探索する時の注意点を教えてもらった時だ。



 ◇



「いいですか、ユージンくん」

 『天使(リータ)』さんが、ピンと指を立てて俺に訳知り顔で教えてくれた。



 曰く、最近の最終迷宮の魔物は以前より獰猛になっている。


 曰く、最近の階層主は以前より大きく凶暴になっている。


 曰く、最近の迷宮人は好戦的な戦士が多い。


 だから過去の記録は参考にしないほうが良い。


「それから……最後に」

「まだあるんですか」

 天使さんの説明ですでにお腹いっぱいだった。


「最近、記録保持者の更新がされないことに業を煮やした『迷宮主(ダンジョンマスター)』が低層階に降りてきているという噂があります。迷宮主は、『迷宮の眼』を自由に操れるので天使にも正確な情報は入ってこないんですが……」


「迷宮主……一体どんなひとなんですか?」

「外見も不明です。私は最近になって『天頂の塔』に着任したので、ご挨拶もまだでして……。挨拶に行った時は、『1000階層』にある『迷宮主の広間』にいなかったんですよねー」


「1000階層……」

 最終迷宮の到達点。

 天の頂。

 1001階層にあたるのが、神々の住まう『天界』だと言われている。


「迷宮主はなんのために低層階に来ているんです?」

「なんでも……見込みのある探索者に発破をかけるためとか……噂ですけどね。たんに『暇だから』って話も聞きますし。私にはわからないっすよ」

 天使さんは首を横にふる。


「迷宮主の名前は……」

「それはさっきも言いましたよ。名前はアネモイちゃん。天頂の塔の迷宮主――アネモイ・バベル。前任から交代して100年足らずの若い迷宮主っすよ」



 ◇



 どうして忘れていた。


 いや、さっきまで頭にもやがかかったようにどうしても思い出せなかった。


 何かの魔法をかけられていたのかもしれない。



 ――これが迷宮主との最初の出会いだった。





 ◇リュケイオン魔法学園の食堂◇



 俺はスミレとサラに、103階層でのできごとを伝えた。


「えっ! 迷宮主さんと会ったの!?」

「嘘でしょ、どんな姿だったの!?」

「怖かった? 魔王さんより怖かった!?」


(こらー、私は怖くないでしょー!)


 スミレとサラに詰め寄られ、エリーにまでツッコまれる。

 脳内がうるさい。


「えっと、迷宮主の姿は……」

 俺が出会った幼女のことを口にしようとした時。



「ユージン・サンタフィールド!」

 大きな声で名前を呼ばれた。

 怒鳴り声に近い。


 スミレがびくりとしたのを見て、俺は彼女を守るように立ち上がった。

 サラは平然としている。


「何か?」

 俺は短く返事をした。

 こういう手合には慣れている。


 帝国なら決闘を挑んでくるやつは、大抵がこんな感じだ。

 案の定、視線の先には剣呑な目つきで俺を睨む男子生徒が複数人立っていた。


 俺に絡んでくるのといえば『生徒会』の連中だが、目の前の生徒が付けているのは生徒会執行部の腕章ではなく、二本の剣を象った徽章(バッジ)


 学園の最大派閥『剣術部』の徽章(バッジ)だ。


 俺の名前を呼んだ男子生徒には見覚えがあった。

 確か剣術部内の『序列三位』の……


「おる……オルバくんだっけ?」

「オルヴォ・バッケルだ!」

 呼びづらい名前だ。


「で、オルくんが何か用?」

「略すな! お前、武術大会に出るという話はどうした!? 約束が違うぞ!」

「……約束?」

 俺は首をかしげる。

 そういえば彼に以前、武術大会で勝負しようと言った気がする。


「ユージンくん、約束したの忘れたの?」

「ユージン、それは駄目よ。可哀想じゃない」

「…………」

 スミレとサラの言葉に、オルくんが顔を真っ赤にして震えている。

 まてまて確かに忘れていたけど。


「一応、武術大会には出る予定だけど?」

「優勝者と戦うだけのシード枠という話だろう! 一般参加をしろ!」

「そんなん言われてもな……。学園祭の実行委員長のレベッカさんが決めたことだし」


「学園祭の委員長までも丸め込んだかっ!」

「いや、頼まれたんだよ」

「言い訳無用だ!」

 会話にならねー。

 

 こいつは結局、文句が言いたいだけなのだろうか。

 

「オルヴォ、私が話そう」

 どう言ってお引取り願うか考えていると、一人の男が前でてきた。


 長身で長髪。 

 体格は俺よりも一回り大きい。

 そしてなによりも。 


(……強い)


 全身からほとばしる闘気(オーラ)を見ただけでわかる。

 学生でありながら、帝国の黄金騎士団長、下手をすると天騎士にすら匹敵するほどの威圧感を発している。


 男の顔には見覚えがあった。

 有名な生徒だった。

 なんせ、前年度の武術大会の優勝者だ。


「話すのは初めてだな。ユージン・サンタフィールド」

「はじめまして。まさか()()直々とは」

 俺は素直に驚いた。


 学園生徒最強の一人と名高い、剣術部部長が眼の前に立っていた。


■大切なお願い

『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。

 ページ下の「ポイントを入れて作者を応援~」から、評価『★★★★★』をお願いします!



■次の更新は、【7/30(日)】予定です

→来週は信者ゼロの更新です。

 ですが、そろそろネタが尽きてきたので信者ゼロの更新を減らすか検討中です。



■感想返し:

 幼女の正体を見抜いていた人が多かったです。

 吸血鬼って予想している読者さんもいましたが、それは前作と被るので極力同じ種族は出さない予定です。



■作者コメント

 4章は学園メインにしたいのですが、キャラが増えて大変……。



■その他

 感想は全て読んでおりますが、返信する時間が無く申し訳ありません


 更新状況やら、たまにネタバレをTwitterでつぶやいてます。

 ご興味があれば、フォローしてくださいませ。


 大崎のアカウント: https://twitter.com/Isle_Osaki

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― 新着の感想 ―
[一言] まさかのダンジョンマスター! ロリばはあと言ったら殺されそうだ。
[気になる点] 日本語が分からないので、Google翻訳を使ってストーリーを読みました。ストーリーはとても良いです。第5話にアイリが登場したら、とても面白くなると思います。アイリが転校したら、争奪戦に…
[一言] 最新話まで一気読みしました!おもろい!!続きが気になる!!! 次の更新心待ちにしてます!!!!
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