206話 魔王
「ユージン、貴方魔王にならない?」
エリーの言葉が一瞬理解できなかった。
「ほう……そんなことが可能なのか」
ユーサー学園長が興味深そうにこちらを見る。
「エリー先輩それはいけませんっ!」
マリエルさんがあわあわと羽を羽ばたかせている。
「どっりゃー!!」
その間にもロザリーさんや他の人達が赤い竜に攻撃をしかけているが、相変わらずほどんどきいてはいない。
「どうする? ユージン」
エリーが俺の顔を覗き込むように尋ねてくる。
「魔王になったら……どうなるんだ?」
「強くなれるわ。当然でしょ」
「ゆーくん! 魔王になっちゃうの!?」
会話を聞いていたらしいスミレがこっちに駆け寄ってきた。
サラとアイリもだ。
「おれは……」
決断ができずにいた。
「どうするの? 時間ないわよ?」
「そうすれば神の試練に勝てるのか?」
「さあ? でもこのままじゃ、勝てないわね。きっと」
エリーの言葉を心の中で反芻する。
そうだ。
神の試練に勝つために過去まで戻ってきたんだ。
ここでためらう必要は……ないはずだ。
「エリー、頼む。俺を強くしてくれ」
「そうこなくっちゃ☆」
俺が了承するのをわかっていたようにエリーは嬉しそうに笑う。
そして、俺の手を握り赤い瞳を輝かせて言った。
「というわけで魔神サマ? お願いしてよいかしら?」
エリーが宙に視線を向けながら言う。
――やれやれ、抜け目がないね。エリーくん。堕天の儀式は君に任せるよ
「はーい」
とエリーが言うや俺とエリーの周囲に黒い竜巻が発生する。
エリーの口から歌うような詠唱が紡がれる。
砕け散った後光、堕ちた恩寵から、
天国の門から汝は消し去られた。
今こそ緋色の炎をくぐり降りよ。
汝が何者であったかを思い出し、汝の名を取り戻せ。
ああ、堕ちた者よ、立ち上がれ、立ち上がれ。
沈黙の悲しみが横たわる深淵から、
血と誓いによって、裏切られた真実によって、
今答えよ、契約は交わされた。
「くっ……」
身体が燃えるように熱い。
「古き神……貴女様の御名前をお教えください」
エリーが芝居がかった仕草で天を仰ぐ。
――やれやれ、あまり目立つことはしたくなかったんだけど
と嘆息するような魔神様は言葉を続けた。
――我はロキ・ティターン……忘れさられた古き知恵の女神。その名において君を我が下僕、地上の王ユージンを認めよう。
「うわあああああっ!!!」
絶叫した。
身体が破裂するかと思うような錯覚。
自分の身体とは思えないほどの暴力的な魔力が渦巻いている。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
荒い息を整える。
地面に手をつき、それからゆっくりと立ち上がった。
「ゆーくん……その羽根」
「はね……?」
ふと見ると、俺の背中からはエリ―と同じように漆黒の翼が生えていた。
そして、身体中から魔力が溢れ出る。
(まるで…………違う生物になったみたいだな)
心の中で呟き、苦笑する。
どうやらユージン・サンタフィールドは魔王になってしまったらしい。
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次回の更新は、2026年2月8日(日)です。
■感想返し:
>初登場の時を考えればスミレが炎でどうにかなるわけないよね
>まあ服は燃えちゃうの仕方ないけどね。最初の時もそうだったし
>ローブ着てて良かったね。ユーサー王に感謝しとこう
→ラストバトルにならずに済んで感謝ですね。
■作者コメント
体調が悪すぎるので、今日は寝ます。
■その他
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