205話 神の試練 その5
「さて、作戦会議をしよう」
ユーサー学園長が俺たちを見回す。
「火魔法・炎の七巨人」
「聖剣技・七曜剣!」
スミレの聖級魔法とサラの放つ聖剣の斬撃が赤い竜に迫る。
俺たちが話している間の時間稼ぎを二人は買ってでてくれた。
アイリやロベール部長、レベッカ先輩も同じだ。
十二騎士の人たちも遠距離からサポートに入ってくれている。
「へぇー、あの子たちやるわねー」
ロザリーさんが感心したように腕組みをしている。
「ま、私の弟子だからねー。でも、長くはもたないわよ。さっさと方針決めましょ」
エリーが急かす。
確かにそのとおりだ。
スミレたちの攻撃は足止め以上の効果は見込めない。
「魔神様、赤い竜の七つの首を全て落とせば『神の試練』は成功扱いになる。そうですよね?」
ユーサー学園長が念押しするように尋ねた。
――ボクの勘だけどねー。赤い竜がごねても『神の試練』のシステムのほうで判断されると思うよ。『神の試練』は太陽の女神くんのが管理している。逆らえる者はほとんどいない。
「それってロキ様でも?」
エリーが恐ろしい質問を気軽にする。
――封印されてなきゃ、アルテナくんにだって負けないさ。それからボクの名前は呼ばないようにエリーニュスくん。
「はーい、気をつけますー」
全然、気をつける気なさそうなエリーの返事。
「ねー、ユーサー先生。この魔神って誰??」
「ロザリーくん、その話はあとで……」
「ユーサー学園長! 赤い竜がっ!」
メディア部長が大きな声で叫ぶ。
ゴオオオオオオオオ!!!!!
地面から巨大な火柱がいくつも上がった。
赤い竜の周囲にいくつもの魔法陣が浮いている。
しびれをきらして魔法攻撃に切り替えたか!?
ロベール部長やレベッカ先輩たちがそれをきわどく躱している。
「きゃあああああ!!」
悲鳴が響く。
スミレが炎に飲み込まれた。
「スミレちゃん!!」
「スミレ!!! そんな!!」
サラとアイリの悲鳴が響いた。
「スミレ!」
(くそっ! 俺が見ていながら……!)
後悔で焦りながら俺は空歩で駆け寄り巨大な火柱に飛び込もうとした時。
「ひゃあー! びっくりしたよー!」
巨大な火柱からスミレがひょっこり現れる。
見た所、火傷一つしてない。
「スミレ……大丈夫……なのか?」
俺が恐る恐る尋ねると。
「びっくりしたけど特に熱くはなかったかなー」
「熱くすら無いの……?」
「どうなってるのよ、スミレの身体……」
サラとアイリの顔が引きつっている。
改めて炎の神人族って身体能力凄いな。
「「「「「「「…………」」」」」」」
ふと見ると赤い竜がなんとも言えないような表情をしている……ようにも見えた。
その時だった。
「ああああああーーーー!!」
スミレが大声をあげた。
「ど、どうした!? スミレ!」
やっぱりさっきの赤い竜の魔法で怪我を?
流石に無傷なわけがっ……。
俺が慌てて回復魔法をかけようとすると。
「やばいよ、ゆーくん! 火の大精霊の魔法のローブ以外の服が全部燃えちゃった!!」
無事じゃなかったのは衣類だけだった。
というか魔法のローブもまったく燃えてない。
どうなってんだ?
「えっ……スミレちゃん、ローブのした裸なの?」
「サラちゃん! 変なこと言わないでよ………………そうだけど」
「困ったわね……」
「そうだな、流石にそのままじゃ支障が……」
呑気に着替えに戻るわけにもいかないし。
すると。
「もうー、スミレ。ぼーっとしてるからよ」
エリーがやってきて、スミレの両肩を掴む。
――木魔法・衣類生成
「わっ!?」
スミレがびくん! と身体を震わせる。
外見からは何が合ったかわからないが……。
「とりあえず麻で下着とワンピースを作ってあげてたから、それで駕ぎなさい。私の魔力を通してあるから着てるだけでは燃えたりしないけど……スミレの魔法が暴走したら焼け落ちるからね。気をつけなさいよ」
「あ、ありがとう、エリ―さん」
どうやら魔王がスミレに服を作ってあげたようだ。
あいつ、何でもできるな。
「よし、時間稼ぎもこれ以上は無理だな。各自、散開! 一斉に仕掛けるぞ! 最初に攻撃した者に合わせるんだ!」
ユーサー学園長の合図で、俺たちは赤い竜を囲むように散らばった。
「スミレは少し離れた場所から援護を頼む」
「う、うん。わかったよ、ゆーくん」
スミレを抱えて距離を取ったあと、俺は神刀を構えた。
「「「「「「「……………………」」」」」」」
赤い竜は静かに俺たちを見下ろす。
先ほどまでの荒々しさがなく静かだ。
(様子見したほうがいいか……?)
と俺が考えていると。
「いくわよーー!!」
赤い竜に突っ込む、赤い流れ星が視界の端に映った。
精霊を纏ったロザリーさんだ。
「ちょっと! いきなり!? 仕方ないわねー」
魔王ですら少し戸惑っているようだが、すぐに合わせるように黒い疾風になった。
「ロザリーくんは判断がはやいな!」
ユーサー学園長がいつの間にか魔法剣を上段に構えていた。
刀身が黄金色に輝く。
そして、クロード、クレアさん、サラ、アイリ、アネモイも仕掛けようとしている。
俺は神刀に炎の神人族にもらった魔力をまとわせ……
――弐天円鳴流絵・奥義
赤い竜の首元を狙い斬りつけた。
――GYAAAAAAAAAAAAAA!!!!
さっきまでとは異なる赤い竜の絶叫。
手応えはあった。
しかし。
(ダメか……)
赤い竜の首は『4つ』。
落とすことができたのは
(エリー、ユーサー学園長、ロザリーさんの攻撃か)
俺とクロードの攻撃は大きな傷を与えているが、首を落とすに至っていない。
他の人の攻撃は傷跡すらみえなかった。
(七つ全ての首を落とす……は、厳しくないか?)
ドスン!!!
と赤い竜が地面に座った。
「ユージン!」
クロードが興奮したように叫ぶ。
かなりその顔は疲弊しているように見えた。
「やったのか……?」
俺もおそらく似たような顔をしていると思う。
「ダメね、みなさい」
エリーが俺の隣に降りてきて指差す。
シュウ……シュウ……と、白い湯気のようなものが赤い竜の周囲から立ち上っている。
「あれは……」
「地面から魔力を吸い上げて回復してるわね。自力じゃ回復が追いつけなかったみたい」
座るだけで回復するのかよ!
ずるくない……?
冥府の番犬さんなんて、首一つで爽やかに去っていったのに。
「ユージン! 魔力が切れてるわよ」
アネモイが空間転移でやってきて俺に後ろから抱きつく。
そのまま魔力連結で魔力を送ってもらうが……身体が重い。
(次に技を出してもさっきよりも威力が落ちるな……これは)
「ユージン、ごめんなさい……私が役立たずで」
アネモイの声が暗い。
「そんなことは……」
と言いかけて気づく。
確かにかつて400階層で見た時よりも力が弱まっているように感じた。
――迷宮主くんは、迷宮内にいてこそだからねー。この0階層とは相性が悪い。
魔神様の声が聞こえる。
そういうことか。
「クロードくん!!」
天界から戻ってきたリータさんがクロードに抱きついた。
「リータちゃん、ここは危な……」
「今回復させますね!」
天使が『神の試練』に手助けしていいんだろうか?
ふと上空を見上げると、マリエルさんが微妙な顔をしている。
けど見逃してくれるようだ。
(クロードがいないと一気に不利になるからな……)
『竜の巫女』であるメディア部長が守りの要なら、『龍神の槍』を持つクロードは攻めの要だ。
赤い竜はクロードの持つ槍については、常に警戒しているように感じる。
――こりゃ、いよいよボクの出番かな?
ゾワリ、とした。
魔神様は普通に喋っただけなのだろう。
しかし、さっきまでの世間話モードから何かを期待するような声色になった。
――誰が『トリヒキ』をするんだい?
魔神様は確信しているようだった。
おそらくこのままでは勝てない。
赤い竜の3つ落ちた首はゆっくりと再生している。
あと10分ほどで完全に回復するだろう。
ユーサー学園長は何かを考えているようだった。
アネモイはずっと俺にしがみつき魔力を送り続けてくれている。
が、まだ全快じゃない。
その時、肩を叩かれた。
振り返ると見慣れた銀髪と紅玉のような赤い瞳がまっすぐ俺を見つめている。
「エリー」
「ユージンに……ちょっと提案があるんだけど」
「なんだ?」
「強くなりたい?」
急に何を言うんだ。
「そりゃ、この事態をなんとかできるなら……何か方法があるのか?」
あるならもっと早く教えてほしかった。
「うーん、でもなー。ライラ先輩に殺されちゃうような……」
「何をする気だ……?」
既にエリーと身体の関係であることは会うたびに小言を言われているが……。
「まぁ、いっか。時間もないから、すぐに決めなさい」
「……あぁ」
今までエリーには散々驚かされてきた。
だから、少々のことでは動揺しない自信があった。
「ユージン、貴方魔王にならない?」
過去最大級の衝撃的な言葉だった。
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次回の更新は、2026年2月8日(日)です。
■感想返し:
信者ゼロの女神サマがアニメ化したおめでとうコメントが多かったです。
ありがとうございます。
■作者コメント
人数多すぎて書くのが大変……。
■その他
感想は全て読んでおりますが、返信する時が無く申し訳ありません
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