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攻撃力ゼロから始める剣聖譚 ~幼馴染の皇女に捨てられ魔法学園に入学したら、魔王と契約することになった~  作者: 大崎 アイル
最終章 『剣聖』編

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199話 崩壊の日 その2

 カーン……カーン……カーン……カーン……


 迷宮都市に緊急事態を知らせる鐘が響いている。


 天頂の塔(バベル)に向かっているのは()()


 俺とクロードだけだ。


 サラは生徒会室に残り、生徒たちの避難を指示してる。


 アイリは昨日呼び出した帝国軍一個師団へ迷宮街の民の避難誘導を命じているはずだ。


 スミレは第七の封印牢へエリーに会いに行っている。


 合流はそれぞれの目的が終わったら、という話になっている。


 迷宮都市がざわついている。

 


 ――迷宮都市にいる探索者は、いますぐ天頂の塔へ……



 迷宮組合からの拡声魔法(アナウンス)は続いている。



 ……なんだよ、朝っぱらから。


 ……また迷宮主がなにかしたのか?


 ……店はまだ開けないほうがいいの?


 ……別にいいんじゃないかぁ?


 ……迷宮組合と十二騎士様がなんとかしてくださるでしょ



 住人たちの呑気な会話が聞こえる。


 その声を聞きながら、俺たちは天頂の塔を目指す。


(みんな危機感はないな……)


 かつての俺たちと同じだ。


 ちょっとした非日常くらいとしか思われていない。


 まさか女神教会の神話で語られている『終末の赤い竜』が地上に顕現するなんて、誰も想像もしていない。


 ……ズズズズ


 地面が揺れた。


 住人たちの悲鳴が聞こえる。


 迷宮都市で地震は珍しい。


 俺とクロードは戸惑う人たちの間を縫って、駆け抜けた。


 やがて天頂の塔の入口付近が見えてくる。


 迷宮組合の指示に従ったであろう100人以上の探索者たちの姿も見える。


 そして、天頂の塔の正面広場。


 そこに数十の黄金の魔法陣が浮かんで、奇妙な七色の光を放っていた。


「着いたな、ユージン」


「ああ、にしても人が多いな」


 前回なら、たくさんの探索者がいたほうが安心感があっただろう。


 しかしこれから来る未曾有の事態を考えると、下手に人が多いほうが混乱を生む。


 赤い竜を見ただけで、戦意を喪失してしまう探索者は避難してもらったほうがいい。



「やぁ、ユージンくん、クロードくん。キミたちもきたのかい」



 話しかけられた。


 オレンジっぽい赤毛のエルフ。


「レベッカ先輩。来てたんですね」

 確か前もこうやって会話をしたはずだ。


「呼ばれちゃったからねー。にしてもどうにも奇妙だね、ユージンくんあの魔法陣は……」

「召喚魔法陣に見せかけた、空間移動魔法陣ですね。何者かがこちらにこようとしている」


 俺が応えるとレベッカ先輩が目を丸くした。


「へぇ! 一目で見抜くなんてやるね!」

「……偶然ですよ」

 前回、レベッカ先輩に教えてもらったからですよ、と心の中で呟く。



 ……ズズズ、……ズズズ、



 地震の発生する間隔が短くなってきた。


「ユージン」

 クロードと目が合う。


(そろそろ……だな)

 俺は小さく頷いた。


 ……きゃあああ!


 悲鳴が聞こえた。


 何人か気絶している探索者もいる。


 宙に浮かぶ数十の黄金の魔法陣。


 その中でもひときわ大きな魔法陣から、『巨大な赤い腕』が突き出していた。


 ぞわり、と全身が泡立つ。



 ――アレハ人類ガ挑ンデイイ相手デハナイ



 本能が訴えていた。


 二度目の俺ですらだ。


 初見の衝撃ははかりしれない。


「な、なんだい……あれは」

 レベッカ先輩の声が震えている。


「……やばそうな神獣が来ましたね」

 そうとしか言えない。


  

 ――ピシッ! 



 という音と共に()()()()()走った。

  


「なっ!?」

 レベッカ先輩が驚愕の声を上げる。



 ビシリ……ビシリ……ビシリ……


 ゆっくりと空全体が卵の殻のようにひび割れていく。


 何度見ても世界が壊れていくような、そんな不安を覚えるような光景。


「…………やべーな」

 クロードの表情が固い。 


 前回はクロードは見てなかったのだろう。

 この現実離れした光景を。

 


 ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ……!


 

 世界が壊れるように、空が崩れていく。


 そしてその奥からゆっくりと巨大な影が堕ちてきた。



 …………ズシン



 と大きな音と共に地面が揺れる。


 十本の角があり、七つの頭を持ち、その頭に七つの冠をかぶっている『火のように赤い巨竜』

 

 あまりの大きさに見上げるしかない。


 荘厳な体躯が神々しい異彩を放っている。


「「「「「「「………………」」」」」」」


 地上にやってきたばかりの赤い竜は()()おとなしい。

 

 が、その腹の中では邪悪な企みがあることを俺とクロードは知っている。



「迷宮組合総員! 結界を張れ! 『あの竜』に絶対に手を出すな!! S級以外の探索者は、民の避難を誘導! 学園生徒も全て避難させろ!!」


 ユーサー学園長の緊迫した声が、拡声魔法で周囲に響いた。


「はい! ユーサー王!」

「わかりました!」

「全職員、急げ!!」


 迷宮組合職員が、ばたばたと散開していく。


 赤い竜を中心に巨大な魔法結界が生成されていく。 


 探索者は、ユーサー学園長の指示通りに散っていった。


(あれ?)


 違和感に気づく。

 

 残っている探索者が前回より……少ない気がする。


 学園長はS級探索者以外……と言った。


 この場では俺とクロード、レベッカ先輩は200階層を突破したのでS級探索者だ。


 前回もそうだったか……? という疑問が頭をよぎっていると。


「ユージン・サンタフィールド! ごめん、遅れたわ!」


 迷宮主が、シュオン! と空間転移で現れた。


「いや、ちょうどいいタイミングだ」


 おそらく前回も同じくらいで登場したはず。

 そして、あの時よりは落ち着いている。


 俺と『命の契約』をしたから。


「ごめんなさい……私のせいで……こんなことに」

 迷宮主が沈痛な表情でうなだれている。


 俺と契約したことで、俺の未来の記憶まで同期したからだろう。


 赤い竜が天頂の塔・0階層の『神の試練』の裏口を通って地上へ降り、リュケイオン魔法学園と迷宮都市は崩壊した。


 迷宮主アネモイにとって、最悪の記憶だろう。


「アネモイ。魔力連結(マナリンク)を」

 俺は黙って手を伸ばす。


「わかったわ、ユージン」

 アネモイが俺の手を取った。


 ……どくん! と熱い魔力が一気に流れ込んできた。


「くっ!」

 思わず胸を抑える。


 炎の神人族(スミレ)魔王(エリー)のどちらとも違う。

 

「ご、ごめん! 加減が難しくてっ……!」

 アネモイが慌てるが。


「いや、このままでいい。続けてくれ」

 アネモイの瘴気混じりの魔力を受け続ける。

 加減などしていては、このあとの戦いについていけない。


 

 ……トン!


 

 とすぐ近くに誰かが降り立った。


「ユージン、クロード。よく来てくれた。レベッカくん、辛いようならここから離れておきなさい」

 

 ユーサー学園長が真剣な表情で話しかけてきた。


「……すいません、ユーサー学園長。私は戦力外のようです。生徒たちの避難を手伝います」

 赤い竜の威圧感で青い顔をしていたレベッカ先輩は、空間転移でこの場を去った。


「それから迷宮主(アネモイ)殿。おひさしぶりですな」


 ユーサー学園長が友好的に話しかける。


「わ、悪かったわ。私のせいで……」

「済んだことはいったん、忘れましょう。今はこの難局をどう乗り切るか、皆の力を合わせないと」


(……ん?)

 

 はやりおかしい。

 ユーサー学園長の様子が、()()()()()()気がする。


「ユーサー学園長。もしかして……」

 

 俺が尋ねようとした時。



「やばっ! 赤い竜っすよ、マリエル先輩! 奈落の底タルタロスにいるはずの……」


 上空から声が聞こえてきた。


「えぇ~……、これどうするの~? 『神の試練』の開始を宣言……しないほうがいいわよね? リータちゃん」


 100階層と200階層を管理している天使の、リータさんとマリエルさんだった。


 二人には前回の記憶がない。


 赤い竜を見て困惑している。


 二人は色々と慌てた様子で会話をして、リータさんは天界の女神様に相談すると言って去っていった。

 

 これは前回の記憶にある通りだ。


「ユーサー王! 天頂の塔付近の民の避難は完了しました!」


「リュケイオン魔法学園の生徒もほぼ、退去済みです!」


「迷宮都市への門を一時的に封鎖完了しました!」


 迷宮組合の人が、次々に報告を上げる。


「ふむ、ご苦労だった。あとは君たちも避難するように」


 ユーサー学園長が落ち着いて指示を出している。



 ……ズズズズ



 地面が揺れた。


 ゾワリと、空気が変わるのを感じる。


 それまで大人しかった赤い竜が動き出した。

 


「「「「「「「ワレハ……コノ地ノ民ニ……」」」」」」」


 

 赤い竜の七つの口が、ゆっくりと、言葉を発する。


 地の底から聞こえてくるような冒涜的な声だ。

 


 「「「「「「「神ノ試練ヲ……開始スル」」」」」」」



 天使のマリエルさんが真っ青な表情になる。

 隣のアネモイもだ。


 クロードの頬には無数の汗が流れている。

 俺も同じだった。


 にもかかわらず、ユーサー学園長だけが涼しい顔をしている。


 まるでこれを知っていたかのように。


 話を聞きたいが……。



 ――第一ノ……神罰ノ炎



 赤い竜の七つの口がゆっくりと開く。


 その奥から禍々しい赤い光が輝きを増していった。


(まずはアレを止める!)


 リュケイオン魔法学園を吹き飛ばした、赤い竜の咆哮。


「アネモイ! 俺を赤い竜の眼前に空間転移させてくれ! 攻撃を中断させる!」 

「き、危険よ! 死んじゃうって!」


 アネモイが悲鳴を上げる。


「おまえに借りた魔力がある! 俺の結界魔法で防ぐから大丈夫だ!」


 そのためにずっと未来で修行をしてきた。


 この赤い竜の初撃を防ぐために。


「で、でも! …………わ、わかったわ」

 アネモイは迷っているようだったが、迷う時間すら惜しいのをさとり覚悟を決めた表情になった。


「頼む、アネモイ」

「私の空間転移の精度は高くないわよ。多少の誤差は……」


「知ってる」

「……ふん」

 アネモイがぷいっと目を逸らす。


 俺はアネモイから貰った魔力を地獄の番犬(ケルベロス)の牙から作られた黒刀にまとわせる。

 

 赤い竜は十秒後にも、炎の咆哮で魔法学園を吹き飛ばすだろう。


 俺が空間転移に備え、魔法剣を構えた時。


「どれ、空間転移なら私も得意だ。ユージンを手伝おう」


 ユーサー学園長が割り込んできた。


 ぽんと肩に手を置かれる。


「「え?」」

 

 俺とアネモイが()()()()()あと、目の前に赤い竜の頭の一つがあった。


(は、はやい!)


 無詠唱どころの話ではない。


 発動する瞬間さえ見えない、空間転移。


 いや、瞬間移動とでも呼んだほうがいい神業だった。


 そして意識を切り替える。



 ――弐天円鳴流・奥義『神竜』!!!



 俺は天使の力で、空宙を蹴った。


 迷宮主からもらった魔力の全てを込めた神速の突きを放つ。


 それが赤い竜の固い鱗を破り、七つあるという心臓の一つへ到達した……はずだ。



 ゴア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ギャア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”



 おぞましい悲鳴が響く。


 それが赤い竜が発しているものだと、あとから気づいた。


(赤い竜の攻撃が……止まった)


 第一ノ神罰ノ炎、などという魔法は発動していない。


 リュケイオン魔法学園は無事だ。


 あの崩壊を防げた。


「大したものだ、ユージン。()()()()()()()()()()()済んだな」

 気がつくとユーサー王が俺の後ろに立っており、赤い竜から離れた位置に移動していた。

 

 帰りの分まで面倒みてくれるらしい。


 そして、理解した。


(学園長は俺と同じ未来の知識を持っている)


 としか、思えなかった。 

■大切なお願い

『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。

 ページ下の「ポイントを入れて作者を応援~」から、評価『★★★★★』をお願いします!


次回の更新は、12月28日(日)です。


■感想返し:

>さて、いよいよ歴史を変える一戦が始まる

>ユーサー学園長は何か気付いていそうだけど、どの程度過去と同じ流れになるのやら


→やっとここまでたどり着きました。


■作者コメント

 次回で年内最後の更新ですかね。

 完結まであとちょっと、走りきります。 


■その他

 感想は全て読んでおりますが、返信する時が無く申し訳ありません


 更新状況やら、たまにネタバレをエックスでつぶやいてます。

 ご興味があれば、フォローしてくださいませ。


 大崎のアカウント: https://x.com/Isle_Osaki

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― 新着の感想 ―
ユーサー王が。 これは強力な味方出現ですね。 未来知識あるのなら全然違いますもの
本文より はやりおかしい。  ユーサー学園長の様子が、前・回・と・異・な・る・気がする。 多分誤字で 【はやり→やはり】おかしい。  ユーサー学園長の様子が、前・回・と・異・な・る・気がする。 …
ムネアツ展開にワクワク感がとまらないです。 山場ですね。 ユーサー王も活躍の予感があり、楽しみです。 すこしだけ、アネモネへの嫌悪感が減りました。
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