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攻撃力ゼロから始める剣聖譚 ~幼馴染の皇女に捨てられ魔法学園に入学したら、魔王と契約することになった~  作者: 大崎 アイル
最終章 『剣聖』編

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197話 ユージンは、準備する

「ふわぁ……、今は何時かしら」

 ()()()()()()()()()()エリーが大きく伸びをする。


「んー、夕方くらいじゃないかな。ちょっとお腹すいたねー」

 同じく何も着ていないスミレがだらーとベッドに寝転がっている。


「二人とも服くらい着ろよ……風邪は……引かないか」

 

 堕天使であり魔王のエリー。

 炎の神人族(イフリート)のスミレ。


 基本的には身体の作りが違うので、少々のことでは体調を崩したりはしない。


「俺はそろそろ集合場所の生徒会室に向かおうと思う」

 

 迷宮主(アネモイ)を仲間に引き入れ、魔王(エリー)と情報共有できた。


 必要最低限のやるべきことは終えた。


 万全を期するなら生物部の面々や、英雄科のクラスメイト、ロベール部長やレベッカ先輩にも声をかけるべきなのだろう。


 が、未来の情報を使いすぎるのはまずい。


 天界や魔界の神々から目をつけられる……らしい。


 俺にはピンとこなかったが、魔神様や母さんが真剣な表情で忠告をしてきたから、間違いないのだろう。

 

 俺はすでに迷宮主(アネモイ)と命の契約をするというかなり奇抜な行動をしている。


 これ以上、目立つ行動は控えようと思っている。


「ゆーくん、まってぇー。私も一緒に行くから」

「ええー、二人とも帰っちゃうの~。どっちか残りなさいよー」


 スミレがベッドが起き、エリーが不服そうに告げる。


「ちょっとー、服着れないって! エリーさん!」

「そんなに慌てて帰らなくていいでしょー、スミレ」

 着替えようとするスミレを、エリーが邪魔している。


「スミレ、先に行っておくよ。あとで合流しよう」

「ゆーくん!? ナンデ!」


「あはは、スミレは居残りねー」

「ちょっと、離し……きゃああああ!」


 スミレがベッドに引きずり込まれているのが見えた。


 まぁ、仲良さそうだし大丈夫だろう。


 明日は『赤い竜』との決戦だ。


 エリーはスミレの魔法使いの師匠だし、なんやかんや世話好きのエリーはスミレが心配はなずだ。


 多分、色々と助言(アドバイス)をくれるはず。


 任せておこうと思う。


 俺は第七の封印牢をあとにした。




 ◇




 地上に出ると夕暮れ時だった。


 リュケイオン魔法学園の校舎では教室に明かりがついている部屋が多い。


 部活動をしている連中か、魔法研究の教室だろう。


 迷宮都市の街も賑やかだ。


 この時間だと酒場が盛り上がりはじめている。


(何か買って帰るか……)


 以前、迷宮探索をする前はリュケイオン魔法学園の購買で非常食を買い込んでいた。


 味が薄くて、固くて、保存期間が長い堅いパンのような食べ物だ。


 好んで食べるものではないが、まぁ腹は膨れるしいいだろう。


 人数分買っておくか……、と考えていると。


(ユージン……戦前(いくさまえ)の食事は大切よ?)


(ゆーくん、私あれ嫌いー)


 エリーとスミレから念話が届いた。

 

 二人一緒に念話を使ってくるのは初めてだな。


(じゃあ、スミレ。何が食べたいんだ?)


(うーん、なんでもいいよー)


 さっき、何でもよくないと言われた気がしたが……。


(ユージン、手抜きはダメよ。はい! じゃあ、スミレはもう一回、無詠唱魔法の練習! 0.1秒を切るまでやるわよ!)


(無理だよー! やっと1秒切ったところなのに!)


 そんな念話が聞こえたのが最後だった。


 どうやらエリーはスミレに魔法の訓練をつけてくれてるらしい。


 頑張ってるようだ。


(じゃあ、何か美味しいものを買って帰るか……)


 頑張ったご褒美は大事だろう。

 

(とはいえ、俺が食べ物の店に疎いからなぁ……)


 もともと食べられたら何でもいい派だ。


 天使化によってさらに好みがなくなった気がする。


 クロードだったら、食事の美味しい店も詳しかったと思うのだが、今は忙しいだろう。


 仕方ない、一人で探すかと俺は迷宮都市の繁華街に向かって歩いた。


 繁華街を歩く人々は多い。

 

 迷宮帰りっぽい探索者、掘り出し物を探しにきた商人、仕事を終えて一杯ひっかけている職人たち、リュケイオン魔法学園の制服もちらほら見える。


(うーん、食べ物店が多くてわからんな)


 武器、防具屋ならまだ多少は知ってるんだが。


 と、困っていた時。




「ユージン・サンタフィールド? こんなところで何してるの?」




 名前を呼ばれた。


 長い青みがかった銀髪に細身のスラリとした体躯。


 リュケイオン魔法学園の制服を着た彼女は……


「リリー・ホワイトウィンド…………」


 英雄科のクラスメイトだった。


 俺はその顔を呆然と見つめた。


 ここは三年前の過去だ。


 だからリリーがいるのは不思議じゃない。


 むしろ当たり前だ。


 けど……、俺にはあの時見たリリーの墓石の情景が鮮明に脳裏に焼き付いていた。


「どうしたの? ……人を幽霊と出会ったみたいな顔して……」


 リリーが怪訝な顔をしていた時。


「リリー!」


 俺は無意識でリリーを()()()()()()()


「ゆー、ユージン!!?」


 リリーの声が耳元で聞こえた。

 

 抱きしめているのだから当たり前だ。


 俺は慌てて、彼女から離れた。


「ご、ごめん! 俺はなんてことを……」


 女性にいきなり抱きつくなんて、なんで酷いことをしたのだ、俺は。


 斬られてもおかしくない。


「い、いや、ちょっとびっくりしたけど……。ど、どうしたのよ、いったい」


 少し赤い顔をしたリリーが、目をそらしている。


「いや、会えたのが嬉しくて……。でも、ごめん。いきなり抱きつくとか最低の行為だった……」


「っ!? う、嬉しくて…………へー、ふーん。あっ、そう……」


 リリーは目をそらしたままだ。

 

 やはり怒っているのだろう。


 どうやって、謝罪すればいいのだろうか。


 くっ、口下手な自分が情けない。


 クロードならきっと気の利いたことを言えるだろう。


(なにやってんの、ユージン)


(ゆーくんってさぁ)


 エリーとスミレの呆れたような念話が聞こえた。


(すまん、エリー、スミレ。失敗した。未来を知った前提行動は慎むべきなのに……)


 俺が二人に詫びると。


(この男、なんにもわかってないわよ)


(ゆーくんだからねー。あ、そろそろ私も生徒会室に戻るね。あとで話があるから)


 そう言って二人からの念話は途切れた。


「リリー、さっきのは悪かった。この埋め合わせは必ずする。明後日以降……俺が無事なら何でも言うことを聞くよ」


「何でも!?」


 リリーが目を丸くした。


「もちろん、俺でできる範囲だが」


「いや、まぁ。ユージンのできる範囲のお願いならあるわね」


 リリーが呟いた。


 これは……許してくれるということだろうか。


「ああ、じゃあ俺は用事があるから」


「ちょっと最初の質問に答えてないわよ。結局、何をしてるのよ」


 言われて気づく。

 確かに俺は質問に答えてなかった。


「食べ物屋を探してるんだ。持ち帰り(テイクアウト)ができて、なるべく美味しいものがいいんだけど、俺は飲食店に疎くて」


「そうなの? じゃあ、私のおすすめの店にする?」


「いいのか?」


 なんでそんなに優しいんだ?

 急に抱きついてきた変な男に対して。


「ほら、こっちよ」

 

 リリーに手を掴まれた。


 俺はリリーに引っ張られながら、店へと向かった。

 



 ◇




「へぇ、こんな店があったんだな」


 そこは迷宮探索用の飲食店。


 普段俺がよく買うような保存食ではなく、味に拘った携帯食が並んでいた。


 代わりに保存期間は短い。


「リュケイオン魔法学園の生徒なら結構有名なお店だけど」


「食事は食べられたら何でもいいからな」


「あはは、なんかユージンっぽいわね」

 

 リリーが可笑しそうに笑った。


 機嫌は治ったらしい。


 俺はスミレ、サラ、アイリ、クロードの分も含めて持ち帰りで食べ物を買った。 


 ついでに、この店で一番人気と書いてあった甘味菓子を買っておく。

 値段は一番高かった。

 

「へぇ、ユージンって甘い物のが好きなんだ?」


 リリーが顔を覗き込んできた。


「いや、あまり好きじゃないな」

 俺は濃い味は好きじゃない。

 薄味の食べ物が好きだ。


「…………じゃあ、なんで買うのよ」

 リリーが呆れた顔をする。


「リリーは甘い物好きだろ。前に、スミレやサラと話してたの聞いた」


「ん? まぁ、そうね……って、え?」


「この店を教えてもらったお礼。やるよ」

 

 とリリーに渡した。


「な、なによ! こんなので私の機嫌をとろうっていの!? 」


「いや、埋め合わせは別だよ。あくまで店を教えてくれたお礼だ。埋め合わせは明後日以降な」


 赤い竜との戦いで無事だったら、だ。


「わかったわ。じゃあ、明後日に◯◯時に、学園の裏口で待ち合わせね。遅刻したら許さないから!」

 

 と言って、リリーはたたたっ! と走っていった。


 忙しないやつだなー。


 どうせ帰り道はリュケイオン魔法学園の寮だから、途中までは一緒に帰れるのに。


 まぁ、いいか。


 俺は生徒会室に向かおう。



 そうして俺がみんなと合流した時。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

  

 スミレとサラとアイリが俺を睨んでいた。


 クロードはやれやれと、首を振っていた。


 ……なぜだ?


 理由を聞いたけど、教えてくれなかった。




 ◇




「じゃあ、明日は決戦だから寝るわよ」


 サラの言葉に俺たちは頷く。


 全員で夕食を食べ、俺たちは生徒会室に迷宮探索用の魔法の寝袋を敷いて寝た。


 迷宮探索をしている学園生徒なら、魔法の寝袋は常備している。


 魔法の明かりを消して、俺たちは寝袋に入った。


 室内を静寂が支配する。


(なぁ、ユージン)

(なんだ、クロード)


 隣で寝ているクロードが話しかけてきた。


(明日……赤い竜を本当にどうにかできると思うか?)

(やるしかないだろ。できることは全てやった)


(まぁ、そうだな)

 

 クロードは覚悟を決めたように、小さく息を吐いた。


 気持ちが高ぶって眠れないようだ。


 それは俺も同じだった。


 明日で全てが決まる。


 最悪の未来を回避できるかどうか。


運命の女神(イリア)様……どうか) 


 眠れない間、俺は女神様に願い続け……やがて意識が微睡みへと落ちた。

■大切なお願い

『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。

 ページ下の「ポイントを入れて作者を応援~」から、評価『★★★★★』をお願いします!


次回の更新は、12月14日(日)です。


■感想返し:

>こいつらうまぴょいしたんだ!

>さすがエリー、何も言わなくても事態を把握するとはね

>なんだかんだ頼りになるわ


うまぴょい!!

私にはその意味はわかりませんが、きっとそうだと思います。


■作者コメント

 年内の完結はあきらめました。

 のんびりいきます。

 次回からVS『赤い竜』戦です。


 余談。リリーは可愛い。

 これが最終章じゃなければメインヒロインにしてた。

挿絵(By みてみん)

 


■その他

 感想は全て読んでおりますが、返信する時が無く申し訳ありません


 更新状況やら、たまにネタバレをエックスでつぶやいてます。

 ご興味があれば、フォローしてくださいませ。


 大崎のアカウント: https://x.com/Isle_Osaki

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― 新着の感想 ―
ん~~うまぴょいうまぴょい(笑)
リリーがメインヒロインじゃない? またまたご冗談を リリーに会うために時間遡行したと言っても過言ではないのに
>余談。リリーは可愛い。 >これが最終章じゃなければメインヒロインにしてた はは、何を言ってるいるんだい?そこに後日談があるじゃろ?
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