191話 ユージンは、約束を果たす
――500階層『神の試練』挑戦者の勝利です!
天頂の塔に天使の声が響いた。
「……やられたわね。おめでとう、ユージン」
エリーが苦笑している。
俺の構えた黒剣の刃がエリーの首元の間際で止まっていた。
(勝った……のか)
500階層の神の試練がはじまってから100日以上経過していた。
挑戦した回数は千をゆうに超える。
「大変だったよー!! エリーさん強すぎ!!」
「……なんとか、なるものね」
少し離れた場所でスミレがサラに肩を貸している。
「これで……突破なのね」
「みたい……だな」
アイリとクロードは、剣と槍を杖のようにしてなんとか立っている。
「…………」
俺の足元では迷宮主が魔力酔いで倒れている。
俺は無言で回復魔法をかけておいた。
アネモイの協力なしでは、とても勝てなかった。
というか協力があっても勝てなくて、ありとあらゆる手を使い尽くしての辛勝だった。
パチパチパチパチ……
という拍手が聞こえる。
「みなさん、厳しい試練でしたがよくぞ突破しました。女神様もお喜びでしょう」
現れたのは小柄な天使――座天使さんだった。
だいぶ前に天界へ帰ったはずだが、どうやら天界から様子は見られていたらしい。
「はぁ……」
そろそろ立っているのが限界だった俺は、地面に座り込んだ。
ザアアアア……
温かい風が吹いた。
周囲を取り囲んでいた黒い森が黄金色に変わっていく。
パチン、とエリーが指を鳴らした。
ぽわん、と温かな光に包まれた。
「エリーが回復してくれたのか」
「試練は終わったからね」
一瞬で身体の傷が消えた。
流石は本場の天使の回復魔法だ。
「ありがとう」
お礼を言って立ち上がった。
大きく伸びをする。
やっと試練を突破した実感が湧いてきた。
「ゆーくん!!」
「ユージン!」
エリーが回復してくれたであろうスミレとサラがこちらに駆け寄ってくる。
そして……
ズズズズ……ズズズズ……
と巨大な門が地面からせり上がってきた。
黄金の門には、淡い七色の光に包まれていた。
「これは……」
「異界門。500階層の神の恩典よ」
どんな場所へも連れて行ってくれるという神器。
500年前に使われたっきりの伝説のギフト。
「これで戦争が始まる前に戻れるわね!」
アイリの声が明るい。
「よかった……ここまで来られて」
サラが涙ぐんでいる。
「まさか、この目で見られるとはな」
クロードも感無量という表情だ。
そして……
「スミレ」
俺は相棒の名前を呼んだ。
「ゆーくん……」
スミレがなんとも言えない表情でこちらを見つめる。
俺はスミレに言った。
「スミレ……これでもとの世界に戻れるな」
「…………」
俺の言葉にスミレは何も答えなかった。
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■感想返し:
>ユージン、アネモイ、魔神様のトリオは仲がいいな、とてもいいぞ……
>そういや時間的には、スミレとサラよりこのトリオの方が組んで長いんだったか
→もうちょっとこのトリオの話も書きたかった。
■作者コメント
攻撃力ゼロのコミック3巻が発売しました。
今回も短くてすいません……。
■その他
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