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187/187

187話 五年後

「こ、降参……よ」


 俺の黒刀が迷宮主(アネモイ)の喉元に突き付けられている。


「やっと……か」

 俺は剣を下ろした。

 

(……大回復(ハイヒール)


 俺は自分自身に回復魔法をかけた。

 身体がボロボロだ。


 けど、やっと500階層の難易度の疑似『神の試練』を突破できた。

 ここまで来るのに()()かかった。


 もっとも時間の流れが400分の1になっている400階層の話で、地上では数日しか経っていない。

 

「みんな大丈夫……じゃなさそうだな?」

 俺が後ろを振り返ると、スミレ、サラ、アイリ、クロードが全員倒れている。


 魔力感知で確認したところ、全員気絶しているだけだ。

 どれ、みんなにも回復魔法を……、と思っていると。


「みなさーん、癒やしの光(ヒールライト)かけますよー」

 天使(リータ)さんがすでに対応してくれていた。


 俺も回復魔法は得意だが、それは天使の血を引くからだ。


 ここは本職に任せたほうがいいだろう。

 ただ気になるのは……。


「リータさん、100階層の業務はいいのかな?」

 俺がぽつりと呟くと。


「他の探索隊はまだまだ下層の再攻略中よ。当面は神の試練を開始しないと思うわ」

 隣の迷宮主が答えた。


「そうなのか? 意外だな」

 てっきり第一騎士(クレア)さんを筆頭にバリバリ攻略をしているのだと思っていた。


「あんたたちが『復活の雫』って呼んでた魔道具の在庫がないから慎重に進めてるみたいよ」

「ああ、そうか。なら慎重に進めるしかないか」

 迷宮に入れないと『復活の雫』の素材が取れない。

 今の迷宮都市はかつてのように多くの探索者がいないと聞いているから……か。

 

 パチン、と迷宮主(アネモイ)が指を鳴らす。


 空中に映像が投影された。


 中継装置(サテライトシステム)によって下層の探索の様子が見える。


 確かにまだ50階層以下にしか他の探索者はいなさそうだ。


 高階層の貴重な魔道具や魔法武器より、下層でとれる探索に欠かせない薬草や食料になる大型の魔物を優先して狩っているようだ。


 ちなみに俺たちの様子は中継装置(サテライトシステム)で映していない。


 聖女(サラ)皇帝(アイリ)が天頂の塔にいることを知らせるわけにはいかないから、迷宮主に頼んで中継を切ってもらっている。


「これなら確かに100階層までは時間がかかりそうだな」

「そうね。だからあんたはこっちの訓練に集中しなさい。にしてもこんなにはやく私を負かすとは思わなかったわ。大したもんね」

 

 んー! と伸びをするアネモイ。


「アネモイが相手をしてくれるおかげだよ。5年でここまでこれるとは正直思わなかった」

「……感謝しなさいよ。迷宮主が直々に鍛えて上げてるんだから」


 ぷいっと顔を背けられた。


 照れているのかもしれない。


「実際、迷宮主(おまえ)を相手に修行をしてからの成長速度がみんな恐ろしく早い。そっちの方向で天頂の塔を運用すれば、もっと攻略が進んだんじゃないか?」


「探索者を迷宮主(わたし)が鍛えるってこと? 全員の面倒なんて見きれないわよ」


「100階層を突破した探索者に限定するとか色々あるだろ。少なくとも0階層に神獣を召喚するより、効果ありそうだけどな」

  

「……考えておくわ」


 そっぽを向いたままで表情はわからない。

 が、ちゃんと意見としては受け取ってくれたようだ。


(アネモイは……変わったな)


 最初に会った時は、俺を含む探索者たちを小さな虫程度にしか思ってなかった様子だった。

 今の迷宮主(アネモイ)は、きちんと会話をしてくれる。


「ねぇ! ところでユージン」

 

 俺が物思いもふけっていると、アネモイがぱっと振り向いた。


「なんだ?」


「500階層の神の試練は私が修行相手をしてあげるからいいとして、『赤い竜』はどうするの? いっておくけど、あの神獣は私より()()()()()から私に勝ったからって相手にはならないわよ」


「それだよな……迷宮主の強さは500階層の神の試練と同等……。これ以上の修行は望めない……か」

 アネモイから教わったことだ。


 現在、俺の相手をしてもらっている迷宮主は()()()戦っている。

 

 600階層より上の神獣たちは、迷宮主よりも強い。


 そして、赤い竜の担当する神の試練は9()0()0()()()


 今のままで過去に戻っても、とても敵わない。


「ねぇ、やっぱり『赤い竜』との再戦はやめておいたほうがいいんじゃないかしら? 貴方たちの目的は南の大陸でおきた『皇帝の暗殺』と『戦争』を止めることでしょ? それなら……」


 アネモイがそんな提案をしてきた。

 何度も話し合った話題だ。


「赤い竜を止めないとリュケイオン魔法学園の崩壊とユーサー学園長の犠牲が止められない。迷宮都市の衰退も……。そのためにも『赤い竜』の暴走を止める」


「気持ちはわかるけど……正直、ロ……魔神様の御力なしで『赤い竜(あれ)』を止められるとは思えないんだけど……」



 ――まぁ、確かにねぇー。天頂の塔の封印処理がされてない赤い竜ちゃんを地上の民が止めるのは難しいだろうね



 俺とアネモイの会話に、魔神様が割り込んできた。

 話を聞いていたらしい。


「やはり難しいですか? 魔神様」



 ――神界戦争で聖神族(オリュンポス)たちと渡り合ってた邪神竜の一体だからね。古い神族(ボク)とは特に敵対してなかったけど、戦ってる女神たちは苦労してたね



「神界戦争では、誰があの化け物を倒したんですか?」



 ――確か木の女神(フレイア)とその部下たちだったような。



「女神様ですら……苦労するのですか」

 やっぱりまともに相手にできる存在じゃないか。



 ――まぁ、苦労してたのはボクが木の女神(フレイア)にちょっかいかけてたからなんだけどね。



「え?」

 


 ――木の女神(フレイア)とボクは反りが合わなくてね。神界戦争中はずっと殺し合いをしてたんだよ。いいところまで追い詰めたんだけど、太陽の女神(アルテナ)の邪魔が入ってね。結局、封印されちゃったってわけさ。


「す、すごい話ですね……」

 神話でしか知れない話を、本人の口から聞けるとは。


 そして、木の女神(フレイア)様は魔王(エリー)の元上司だ。


 エリーは神界戦争に参加してなかったというから、直接赤い竜とは戦ってないはずだがエリーの先輩あたる人ならその当事者かもしれない。


 ただ、エリーにはすでに話を聞いている。


 赤い竜の弱点とかあれば聞きたかったが、特に無いらしい。



 ――まぁ、がんばりたまへよ。無謀な挑戦はキライじゃないよ



「無謀……でしょうか?」

 はっきり言われると、このまま計画を進めていいのか躊躇ってしまう。



 ――おっと不安にさせて悪かったね。なぁに、やってみなければわからないさ。



 そう言って魔神様はどこかに消えてしまった。


 気まぐれな御方だ。


「ゆーくん!」

 リータさんに回復されて復活したのか、スミレたちがやってきた。


「スミレ、もう少し休んでても……」

 さっきまで気を失っていたのに。


「そしたらゆーくんだけ休まずに修行するじゃん! 元気になったから大丈夫だよ!」

「そうよ、ただでさえユウが一番強いんだからこれ以上は差を広げられないようにしないと」

 幼馴染もやってきた。


 サラとクロードも同意見のようだ。

 

 俺は隣にいる迷宮主に視線を向ける。


「アネモイ、頼むぞ」

「加減はしないわよ」


 そう言うや、理不尽なほどの迷宮魔法が襲いかかってくる。

 

 今回は全員そろって叩きのめされた。


 しかし、以前よりも確実に全員が戦いについていける時間が長くなった。


(まずは強くなって500階層を突破しよう)


 ごちゃごちゃ悩むのはそのあとだ。


 俺立ち上がり、迷宮主に向かって剣を構えた。




 ◇さらにX年後◇



「じゃあ、500階層へ向かうか」

 

 俺の言葉に全員が頷く。


 全員が単独で、迷宮主に一度は勝てるくらいまで強くなった。


 おそらく500階層は突破できるはずだ。


 歴史上、そこに到達したのはまだ一人だけ。


 それを今日、大幅に更新する。


 俺たちは500階層へ向かう迷宮昇降機へ乗り込んだ。

■大切なお願い

『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。

 ページ下の「ポイントを入れて作者を応援~」から、評価『★★★★★』をお願いします!


次回の更新は、10月5日(日)です。


■感想返し:

>何度でも書き込むぞ。アネモイとのイチャイチャは、いいぞ!


→そう言っていただけるとうれしいです。


■作者コメント

 サイレントヒルf やってみたいけど、一人ではホラーゲームできない。


■その他

 感想は全て読んでおりますが、返信する時が無く申し訳ありません


 更新状況やら、たまにネタバレをエックスでつぶやいてます。

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― 新着の感想 ―
怒涛のスピードで話が進みますね。もっと、ゆ〜っくりしてもらって良いんですよ(笑)。
アネモイのヘイトが管理できていると思えた点が良かったです。 それにより、アイリやカミッラやサラ会長といった、ヘイトを溜めがちなキャラに対しても、今後を期待できると思えた点も良かったです。 >> 聖女…
あれ?500階層を突破して過去に戻ったら、500階層突破の記録も無くなるのかな? なんかパラドックスが発生しそう
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