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攻撃力ゼロから始める剣聖譚 ~幼馴染の皇女に捨てられ魔法学園に入学したら、魔王と契約することになった~  作者: 大崎 アイル
最終章 『剣聖』編

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184話 ユージンたちは、修行する

「迷宮魔法! 矢の雨(レインオブアロー)


 迷宮主が叫ぶと空中から数百本の木の矢が現れて俺たちに降り注いだ。


(結界魔法・大盾(ラージシールド)


 俺は上に大きな魔法の盾を出現させて矢の雨を防いだ。


 カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン! 


 と盾に矢が弾かれる音が響く。


 ぱし! と一本だけ降ってきている木の矢を掴んだ。


 矢の先は丸く加工されており、当たっても痛いだけで刺さりはしないだろう。


 修行用の魔法だ。


 俺は仲間たちの様子を観察した。


「わっ! わっ! 火の嵐(ファイアストーム)!!!」


 スミレは自分を中心に火魔法を発動させて降り注ぐ木の矢を全て焼き尽くしている。

 派手な対処方法だ。


「光の剣舞!」

 サラは聖剣魔法を使って木の矢を切り落としている。


「よっ! ほっ!」

 アイリは器用に木の矢を全て避けていた。


 あいつ……準備運動(ウォーミングアップ)してるな。

 皇帝業で身体を動かしてなかったと聞いてるし、身体のキレを確認してるんだろう。


「リータちゃんは100階層に戻らなくていいのか?」

「今のところ探索者が来る様子はないっすからねー。それに久しぶりにクロードくんに会えたし……♡」


「じゃあ、修行が終わったら……な」

「うん♡」


 いち早く迷宮魔法の範囲外に退避したクロードはリータさんといちゃついている。

 ある意味一番安全な行動だ。

 ちゃっかりしてるとも言うが。


 みんな、余裕そうだ。


「ねー! ユージン! こんな感じでいいの!? もっといろんな魔法使ったほうがいい!?」

 アネモイが大声で聞いてきた。


「じゃあ、徐々に使う魔法の威力と範囲を上げてくれ」

「私は細かい調整って苦手なのよー! 知ってるでしょー!」


 迷宮主は文句を言いつつも、当たっても怪我をする程度の魔法を次々に繰り出す。


 地面に突然穴が空いたり、空から落石が降ってくる。


 鉄製の武器が飛んできたり、徐々に威力が増してきた。


 俺は結界魔法でそれらを防いだり、適当に躱しつつみんなの様子を観察した。


「ちょっ! ちょっと! やばいやばいやばい!」


 スミレが一番バタバタしているように見えるが。


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオ! 


 どんな攻撃も全て炎の神人族(イフリート)の魔法で焼き尽くしている。


 おいおい……、鉄の槍(刃なし)が溶けてないか?


 アネモイが「こいつどーなんっての?」って顔でこっちを見てくる。

 まぁ、うまいことやってくれ。


「くっ!」

「痛っ!」

 サラとアイリはちょくちょく被弾している。

 いくつか軽傷を負っていた。


「ひゅう! 危ないな!」

 クロードも魔法の範囲外に逃れるだけじゃなく、襲いかかってくる矢の雨や地面から生えてくる槍、巨大な落石(空洞あり)を器用に躱している。


 アイリやサラと違って被弾してないのは、迷宮魔法の攻撃が激しくない位置取りをとっているからだろう。


 具体的には迷宮主の死角から死角へ上手く移動を続けている。


(クロードは視野が広いな)


 普段、竜騎士として戦場の全体を見回す事が多いからだろうか。


 比べるとサラとアイリは真正面から戦おうとする傾向がある。


 君たちは国の首脳(トップ)なんだからもっと周りを見てくれ。


 一時間ほどの迷宮主の攻撃が止まって、休憩時間となった。


 迷宮主(アネモイ)が飲み物や軽食を魔法で出してくれた。


 それをつまみながら、さっきの修行を振り返る。


「アネモイ、どうだった?」

 俺が尋ねると。


「そうね……このメンバーなら200階層は突破できるじゃないかしら」

「それって……すごいのかな?」

 スミレが微妙な顔になる。


「ダメでしょ。私たちの目標は500階層なんだから」

「にしても具体的なイメージが掴めないわね」

 サラとアイリが難しい顔をしている。


「なぁ、ユージン。お前は300階層を突破したんだろ? 神の試練の難易度はどんな感じだった」

 クロードに話を振られた。

 ちょうどいい。


「それを今から見せるよ。アネモイ、相手をしてくれ」

「えぇー、もうちょっと休憩させてよ~!」

 文句を言いつつも準備をしてくれる迷宮主(ダンジョンマスター)


 君のやらかしで色々と困った状況になったのだ。

 文句は働いてからだ。


「いくぞ」

 俺は白剣を構えた。


「ユージン相手なら()()()いいわよね?」

 

 ……ズズズ、と迷宮主(アネモイ)の周囲に赤黒い不気味な魔力(マナ)が纏わりつく。


「300階層の強さの全力な?」

 念の為に確認する。

 迷宮主(こいつ)はうっかり屋だから。


「わかってるわよ。いくわよ!」

 アネモイの声と同時に、俺は横に跳んだ。 


 ジャキン! 


 とさっきまで俺が立っていた場所に、人間よりも大きな刃物が突き出している。


 殺意の塊のような迷宮魔法だ。


「ちょ、ちょっと!」

「ユウ!?」

 スミレとアイリの焦った声が聞こえるが、返事をしているヒマはない。



 ――迷宮魔法・嵐の千刃サウザンドブレイドストーム



 千を超える剣が不規則に降ってくる。


「ユージン!!」

 サラの悲鳴のような声が聞こえた。

 

 俺は降ってくる剣を躱しながら、迷宮主との距離を詰めていく。


 

 ――迷宮魔法・影の魔獣(シャドウビースト)



 真っ黒な狼のような魔獣が大量に地面から生えてきた。

 

 それが群れをなして襲ってくる。


 空からは剣が。


 地上からは魔獣が。


 さらに。


 

 ――迷宮魔法・血棘の鎖

 


 アネモイを中心に生き物のようにうねうねと、赤い棘のついた鎖が俺を捕らえようと伸びてきた。


「ユージン! 大丈夫か!」

 この声はクロードか。


 剣と黒い獣と赤い鎖に囲まれどこにも逃げ場はない――ように見える。

 


(天使魔法・時間遅延)


 

 ほんの一瞬だけ、俺の周囲の時間を遅らせる。


 そして、360度をアネモイの迷宮魔法に取り囲まれた中


(あった! ……弐天円鳴流・空歩)


 僅かな隙間を見つけ、迷宮主の眼の前まで距離を詰める。


 そして、迷宮主の首元に「ぴたっ」と白剣の刃を当てた。 


 アネモイが驚きの表情を浮かべたあと、きっと俺を睨む。


「勝負あり、だな」

「なによ! 天使魔法(それ)使うの反則でしょ!!」

 

「他にやりようがなかったんだよ」

「ズルいズルいズルい! もう一回!」


「疲れてるんだろ、またあとでな」

「勝ち逃げするなー!!」

 アネモイがキーキー! 言っているのを無視してスミレたちのところへ戻った。


 俺が戻るとみんながぽかんとしていた。


「どうしたんだ?」

「どうしたんじゃないわよ、ユウ! なにさっきの!? 空間転移(テレポート)!?」

「ユージン! いつのまにテレポート覚えたの!」

 アイリとサラには、俺が空間転移をしたように見えたらしい。


「ちがうよ、さっきのは空間転移じゃない。ユージンが魔法を避けて動くのが僅かに見えた……が、人間の速さを超えてたぞ?」

 クロードには俺の動きが見えていたらしい。


「さっきのは運命魔法と結界魔法のアレンジだよ。自分の周囲だけ時間の流れを変えてやるんだ」

「そんなことできるの!?」


「できる。あとでみんなに教えるよ」

 俺は天使魔法と呼んではいるが、別に天使族専用の魔法ではない。

 人間でも覚えられる魔法だ。


 ちなみに天使にとっては基本中の基本らしい。

 母さんは普通に時間停止魔法まで使えるらしいし。 


(というかある程度の時空間制御は300階層以上は必須っぽいんだよな……)


 昔、魔王(エリー)にも言われた気がする。


 天頂の塔の上層の難易度、絶対に人間に突破させる気ないだろ。

 

「ねー! ユージン! もう一回勝負しなさいよ!」

 アネモイが俺の首に足を絡ませ、無理やり肩車するようにしがみついてきた。

 ええい、しつこいな!


「俺は用事があるから、またあとだ! またみんなの修行の相手をするように!」

「……わかったわよ。じゃあ、あとでね」

 唇を尖らせてアネモイが俺から離れた。


 わがままな迷宮主だ。

 知ってたが。


「「「…………」」」

 

 視線を感じた。


 スミレとサラとアイリがこっちを見ている。


「どうかした?」

「ゆーくんって……迷宮主さんと随分仲良くない?」

 スミレがおかしなことを言ってきた。


「ま、まあ、三年も一緒にいれば……」

「別に仲良くないぞ」

「え?」

 俺は迷宮主が怒る前に答えた。


 なんせアネモイにはこの三年間「人間のくせに馴れ馴れしくしないで! 勘違いするんじゃないわよ!」と散々言われてきたからな。


 プライドの高さは天頂の塔といい勝負な面倒くさい迷宮主だ。


「なぁ、アネモイ」

「あ…………うん…………そうね」

「?」

 心なし、迷宮主の元気がないように見えた。


 やっぱり修行の相手を連続でさせすぎて疲れたのだろうか。


「じゃあ、俺は少し出かける所があるから」

 そう言って立ち上がった。


「どこに行くの? ユウ」

 当然アイリに聞かれる。


 俺がなんと答えるか迷っていると。


「女のところよ」

「そうだね、エッチなお姉さんのところだね」

 サラとスミレに先に言われた。


 言い方に悪意があるような。


「なっ! だめよ!」

 案の定アイリが止めてくる。

 変な言い方をするから。


魔王(エリー)に天頂の塔の攻略方法について相談してくるんだよ」 


 あとは天使魔法についても。


 母さんに聞いてもいいが「戦闘ならエリーに聞きなさい。私は戦闘が専門じゃないから」とのことだった。


 母さんはかなりの高位天使のはずだが……エリーの戦闘能力はその上をいくらしい。


 500階層を突破するにはエリーの助力は欠かせない。


「じゃあ、行ってくる」

 なおもアイリに止められたが、なんとか説得して俺は迷宮(ダンジョン)昇降機(エレベーター)に向かった。


 会いに行くのが遅くなったことを責められそうだな……と予想した。 


■大切なお願い

『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。

 ページ下の「ポイントを入れて作者を応援~」から、評価『★★★★★』をお願いします!


次回の更新は、9月14日(日)です。


■感想返し:

>アネモイちゃん、ドジっ子属性が強化されてないかい?


→もともとドジっ子なのです。


■作者コメント

 エリーがすごく久しぶりの登場!!


 あと何度も書きますが、前作『信者ゼロ』のメインキャラは、ゼロ剣の本編には登場しません。

 ※あふたーすとーりーは別。

 例の復活した邪神様も登場するのは名前くらいです。


■その他

 感想は全て読んでおりますが、返信する時が無く申し訳ありません


 更新状況やら、たまにネタバレをエックスでつぶやいてます。

 ご興味があれば、フォローしてくださいませ。


 大崎のアカウント: https://x.com/Isle_Osaki

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― 新着の感想 ―
ライラママは学科系の先生でエリーは実技系の先生なのか…
アネモイ可哀想w
アネモイとイチャイチャいいぞー。いいぞー
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