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183話 ユージンは、計画を語る


 ――過去に渡って歴史を書き換える


 そう告げた時、その場にいる全員が絶句した。


「ま、待って! ユージン。そんなこと本気でできると……」

「ゆーくん、この話を計画した人って誰なの!? そこの迷宮主さんともう一人いるんだよね!」

「ユウ! 色々話がぶっ飛びすぎててまだついていけてないんだけど……」


 サラとスミレとアイリが口々に質問してくる。


 クロードは腕組みをして難しい顔をしている。


 リータさんは「やべーこと聞いちゃった」みたいな顔で頭を抱えている。


 ……リータさんは居ない場で話したほうがよかったか?


 でもほとんど面識のない300階層の天使さんよりは、リータさんのほうがいい気がする。


 迷宮主(アネモイ)は「このあとどーすんの?」という顔でこっちを見てくる。


(わかってるよ、アネモイ)


 ここでウダウダ時間を使っても仕方ない。


「みんな、まずはこのあとの具体的な計画を……」

 といいかけた時。




 ――まずいよ、ユージンちゃん




 ぽん! と空中に淡い人影が現れた。


 長い黒髪。


 褐色の肌。


 見るものを不安にさせる七色に輝く瞳。


 その容姿は人間ではありえないほど整っている。


 ただ、その姿は目を凝らさないと見えないほど薄い。


 まるで幽霊のように見える彼女は……


()()()、どうされたんですか?」


 俺が尋ねると。


「「「「!?」」」」

 その場にいる全員が驚きの表情を浮かべて、魔神様と距離をとった。


「さっきの君たちの話が神々に()()()()。いや正確には一柱だけなんだけど」


「そ、そんなはずありません、ロキ様! 私の結界は確かに天界や魔界から聞かれないように十分な強度を……」

 アネモイが慌てたように叫ぶ。


「アネモイ……おまえ」

 この計画は外にバレたら『おしまい』だ。


 だから計画を共有する天頂塔内の結界には、細心の注意を払う必要があった。


「ち、ちがうわ、ユージン! 間違いなく天界や魔界にはここの話は聞かれていない。ロキ様、何かの間違いじゃ……」

 なおも騒ぐ迷宮主に対して。




 ――ストップだ、アネモイちゃん。僕の名前は呼ばないように。君たちも頼むよ




 と魔神様が言うと俺とアネモイは頷いた。

 スミレやサラたちは、恐ろしいものを見るように魔神様を凝視している。




 ――そっちの子たちにはきちんと自己紹介をしたほうがいいかな? と言っても、一度会ってる子たちだね。ボクは『ランプの魔神』として封印されていた名前を忘れられた古い神だ。君たちの学園長の『全て』を対価に三年前に少しだけ力が戻ったけど、まだこんな幽霊みたいな姿だから、怖がらずに『魔神ちゃん』とでも呼んでくれると嬉しいね☆




「「「「……」」」」

 自己紹介をしてなお、スミレやサラたちの表情が和らぐことはなかった。

 ただ、今はもっと気になることがある。


「魔神様、話を聞いていた神様というのは……」



 ――最近封印が解かれたボクの身内だね…………おや、話しかけてきた。……んー、やぁ……アくん。久しぶりだね……。ああ、ボクのことは放っておいていいよ。好きにやってるから。



「「!?」」 

 俺とアネモイが顔を見合わせる。

 どうやら誰かと会話しているらしいが、俺たちには声が聞こえない。


「アネモイ、魔神様は誰と話してるんだと思う?」

「そういえば海底神殿に封印されている邪神が、最近復活したって噂があったかしら」


「おまえ……!」

 それは大事な情報だろ!

 

「で、でもあくまで噂だし……! 大体封印が解けてすぐなら大した力ないかなって……」

 オロオロとする迷宮主と『誰か』と話をしている魔神様を見比べる。




 ――うん……わかった……アくん。そりゃ助かるよ。じゃあねー☆ 




 話が終わったらしい。


「魔神様……?」




 ――朗報だよ、ユージンちゃん。復活したボクの親戚の女神は、この件を『見逃す』ってさ。




「「!?」」

 俺と迷宮主は顔を見合わせ安堵の表情を浮かべた。

 

 助かった……。

 いきなり計画がご破産になるかと。


「あの……ゆーくん」

 スミレがおずおずと話しかけてくる。


「ああ、スミレ。よかったよ。魔神様が話をつけてくれたらしい」

「そんな普通に話されても! もっと詳しく教えてよ! この魔神……って学園長を食べちゃった怖い人じゃないの!!」


「スミレ、それは……」

 違うと、俺が説明しようとした時。




 ――それは一面的な見方だね。あの時の『取引』は正当なものだった。地上に顕現した『赤い竜』ちゃんをなんとかするには、あれ以外の方法はなかった。君たちの命を守るために、対価を差し出したんだよ。君はその行為を否定するのかな?




「……ごめんなさい。間違ってました」

 スミレが素直に謝った。



 ――ふふふ、わかってくれて嬉しいよ。



 魔神様は楽しそうだ。

 ……なんか、そもそも魔神っぽさが全然ないんだよな。



「ねぇ、ユージン。私たちはこれからどうすればいいの?」

 サラに聞かれ俺は皆を見回した。


「この300階層で400階層と500階層の『神の試練(デウスディシプリン)』を突破できるように修行する。さっきいった通り300階層なら時間の進み方は地上の1/300だ」 

 

「でもさ、ユージン。いくら時間が確保できても500階層の試練を突破できるかどうかの保証はないだろ? 500年で1人しか達成できてない記録だぞ? 闇雲に修行したって難しんじゃないか?」

 クロードの指摘に俺は頷く。


「ああ、その通りだ。だから具体的な目標が必要だ」

「そんな方法があるの? ユウ」

 幼馴染が疑わしげにいう。


「ある。リュケイオン魔法学園の探索の歴史の授業で習った通り、500年前に探索者クリストが天頂の塔の500階層の神の試練を戦った相手は前任の『迷宮主』だ。で、今俺たちと一緒にいるのは『アネモイ(こいつ)』だ」


「え……?」

「まさか……」

 スミレとサラが目を丸くした。


「そうだ。アネモイが仮想500階層の神の試練の相手として修行相手になる。これ以上の適任はいないだろ」


「よ、よろしく……おねがいします」

 アネモイが気まずそうに挨拶をした。

■大切なお願い

『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。

 ページ下の「ポイントを入れて作者を応援~」から、評価『★★★★★』をお願いします!


次回の更新は、9月7日(日)です。


■感想返し:

結構、荒れてたので感想返しは控えます。


■作者コメント

 今年も残すところ4ヶ月。

 年内に完結できるだろうか……。


■その他

 感想は全て読んでおりますが、返信する時が無く申し訳ありません


 更新状況やら、たまにネタバレをエックスでつぶやいてます。

 ご興味があれば、フォローしてくださいませ。


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― 新着の感想 ―
絶対にその親戚の女神って海底神殿から解放されたノア様でしょw あれ?この件と思われる話が信者ゼロの方で出てきたような気が……?
世界観共有の前作から過去改変ありましたし 本作内でも運命魔法もありましたし ノア様さすがですわ、超テキトーそう
*まさか最終ダンジョンが、特定の探索者グループに特別扱いをするなんて…それは本当に許されることなのでしょうか?頑張っている他の探索者たちにとって、それは少し不公平な気がします。500階層のボスとトレー…
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