表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

176/187

176話 ユージンは、再会する

「久しぶりだな、サラ」

「………………ええ、そうね。ユージン」

 サラの表情は複雑だった。

 

 悲しみと怒りと、何かの感情を押し殺しているような。


 以前のような学生服ではなく、他の神聖騎士団と同じ白い軽鎧(ライトプレート)


 ただ、複雑な防御用の魔法術式が軽鎧に書き込まれており、サラの聖国での地位の高さがわかる。


(剣の聖女……か) 


 それが今のサラの肩書らしい。


「ユージン、構えて」

 周囲の神聖騎士たちが止めるのを振り払い、サラが聖剣を鞘から抜いた。


「サラ……俺は……」

 戦いにきたわけじゃない。

 とはいえ、ついさっき神聖騎士団のロベール団長の腕を負傷させたのは俺だ。


 俺は戦わない意思を見せるため、白剣を鞘に戻した。

 それを見たサラが眉を寄せる。


「私の相手は……素手で十分ということ?」

「いや、そうじゃなくて。俺はサラとは戦いたくない」

「なら、これを防いでみなさい」



 ――聖剣秘技・七曜刃(セブンスターセイバー)



 サラが聖剣を掲げると、刀身が光を放ち7つの光の剣が現れる。

 

(本気か?)

 サラが全力の時に使っていた聖剣技。

 かつて天頂の塔で単騎で竜すら撃破していたサラの必殺技。


「いけ!!」

 サラの掛け声とともに七本の光の剣が複雑な軌道を描きながら、高速で俺へと迫り……


「くっ…………ん?」

 逃げるしかないかと結界魔法をいつでも発動できるよう構えていると。


 フォン……


 というやや気の抜けた音で、光の剣が俺へと迫る。


 7つの光の剣による全方位(オールレンジ)攻撃は、本来ならかなりの脅威なのだが。


(遅い……)

 俺の知っているサラの魔法剣の半分くらいのスピードだ。


 俺は苦も無くそれを避け続ける。


「くそっ! あれを避けるだと!!」

「なんてやつだ!」

「剣の聖女様の全方位(オールレンジ)攻撃を喰らわないなんて!」

「これが魔王を倒した剣士の実力か!!」

 若い神聖騎士たちの悔しげな声が耳に届いた。


(いや、こんなもん天頂の塔の100階層以上を突破したA級探索者なら誰でも避けれるが……)


 多分、クロードやロベール部長なら苦も無くさばけるはずだ。

 俺はちらっとサラとロベール部長の表情を見ると。


「くっ! 腕を上げたわね、ユージン!」 

 サラが棒読みっぽいセリフを吐き。


「団長! 回復魔法、完了しました!」

「ああ、すまないね。もう大丈夫だよ」

 ロベール部長は僧侶らしき人から回復魔法をかけてもらっている。

 腕の怪我は治ったようだ。


 ロベール部長が参戦してきたらまずいな、と思ったが特にこちらへくる気配はない。

 

「君たち、危ないから下がっていなさい。サラ殿の光の剣の間合いに入らないように」

 など部下たちに指示をしている。 


「……」

 ちらっとロベール部長がこっち見て、目があった。 


 なにか言いたげな……。

 とりあえずさきほどの再戦はなさそうだ。

 

 その後も、サラの扱うゆるい魔法攻撃をしばらく避け続けていると。


「ゆーくん!!」

「ユージン様!!」

 聞き慣れた声が聞こえた。

  

 声の主を探すまでもなく、スミレとミゲルだ。

 一緒にクロードもいる。


 騒ぎを見てやってきたらしい。

 やはり聖都にいたようだ。


「やめてよ! サラちゃん!! 二人が戦うなんて!!」

「聖女様! 貴女はユージン様の恋人だったはず!」

 スミレとミゲルの焦る声が聞こえる。


「…………?」

 ただ、クロードだけは光の剣を避ける俺を不思議そうに見つめている。


 ――なに遊んでるんだ? こいつら


 と言いたげなように。


 これで仲間と合流できた。


 ただ、相変わらず神聖騎士たちからは敵意の視線を送られている。


 サラが俺に攻撃(?)をしているので、手は出してこないが。


(そうか……それが狙いか)


 今更ながら気づく。


 さっきのまま神聖騎士たちの相手をしていたら、おそらく俺は逃亡する以外なかった。


 が、聖女であるサラの相手をすることで他の神聖騎士は手が出せず俺はこの場にとどまることができる。


 つまりは時間稼ぎだ。


 そして、おそらく……




「皆さん、剣を収めなさい。聖女サラ、貴女もです」




 凛とした声が響いた。


 光輝く金髪(ブロンドヘア)に白い司祭服。


 手に持つ大きな杖が神聖な光を放っている。


「オリアンヌ様、わかりました」

 サラが言うと魔法で創られた七本の『光の剣』は、砂のように崩れ消えた。


 そして、聖剣を鞘に収める。

 周囲の神聖騎士たちもしぶしぶそれに従っている。


 それに満足したように運命の巫女様は微笑んだ。


 そして以前会ったときと変わらぬ笑み――ただ、少し寂しげにこちらに笑みを向けた。


「お元気そうですね、ユージン・サンタフィールドさん」


「ご無沙汰しております、運命の巫女様。突然の来訪、申し訳ございません」


 とまずは聖都に不法侵入した非礼を詫びた。


「そうですね、もう少し穏便な方法で来ていただきたかったですね。貴方が来ることは座天使ライラ様より聞いておりますから門番に伝えていただければ私の耳に届くようになっておりました」


「……そうでしたか」

 母さんはそこまで手配してくれていたとは。


「とはいえ、通常の手続きであれば10日以上待つことになっていたでしょう。特に前皇帝の『帝の剣』の子息である貴方ならどのみち騒ぎになっていたでしょうし、この方法が一番早かったようですね……」


 ほぃ、と小さくため息を吐く運命の女神様の目が僅かに黄金に輝く。

 運命魔法で何かが視えたのだろうか。


 その時。


「運命の巫女様!! 恐れながら申し上げます! こちらにいる蒼海連邦の竜騎士と召喚士は、帝国の剣士の不法侵入を手助けしたように思われます! これは明確な同盟違反ではないですか!」


 若い神聖騎士の一人が大きな声で叫んだ。


「クロード殿! ミゲル殿! 申し開きはありますか!」

「それは……」

 強い口調でクロードとミゲルが詰め寄られている。


 俺はそれに反論するために声をあげた。


「待ってくれ。俺は三日月湖まではクロードたちと一緒に来たが、そこからは単独行動だ。クロードは俺の聖都の侵入を知らなかった。俺が勝手にやったことだ」


「はっ! そのような虚言を用いても無駄だ! 我々神聖騎士は『嘘看破』の魔法が使える。三日月湖から単独でやってきただと! ならば聖母峰を地上からやってきたとでもいう気か。そのような真似ができるわけが……………………本当だと!?」


 俺の言葉を『嘘看破』で確認したのだろう。


 口を挟んだ神聖騎士が明らかにうろたえている。


「ユージン、あなた何をやってるの……」

 サラが呆れたような表情で言う。


「仕方ないだろ。急いでサラに会いに来たから」

「馬鹿ね」

 俺が言うと、サラは呆れたような表情になった。

 昔と同じような。


 ただ、周囲の神聖騎士たちは明かに引いている。


 それをみてオリアンヌ様が大きな声で告げた。


「ユージンくんのことは座天使ライラ様の言葉から聖国に仇をなすものではないと私は信じています。では、そこまでしてやってきた理由を伺いましょうか」

 

 笑顔で告げる運命の巫女様の言葉に、今度こそ反論する者はいなかった。

 

■大切なお願い

『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。

 ページ下の「ポイントを入れて作者を応援~」から、評価『★★★★★』をお願いします!



次回の更新は、7月20日(日)です。


■感想返し:

>よっしゃーサラを攫おう


→きっとユージンがサラってくれます。


>戦争のそもそもの発端が聖国側だってことは

>聖女連中は知ってそうなものですが、


→上層部は知ってますね。

 いま、ユージンを取り囲んでいる神聖騎士たちは知らないと思います。


■作者コメント

 寝過ごしました。

 



■その他

 感想は全て読んでおりますが、返信する時が無く申し訳ありません


 更新状況やら、たまにネタバレをエックスでつぶやいてます。

 ご興味があれば、フォローしてくださいませ。


 大崎のアカウント: https://x.com/Isle_Osaki

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
■ゼロ剣5
ゼロ剣5
■ゼロ剣マンガ2
ゼロ剣マンガ2
■ゼロ剣 4巻
ゼロ剣4
■ゼロ剣 コミック1
ゼロ剣マンガ
■ゼロ剣 3巻
ゼロ剣3
■ゼロ剣 コミカライズ
ゼロ剣漫画
■ゼロ剣 2巻
ゼロ剣2
■ゼロ剣 1巻
ゼロ剣1
― 新着の感想 ―
>そのような真似ができるわけが……………………本当だと!? 何故かこのリアクションがツボに嵌りました。嘘看破便利、とても便利。
もしかして、上層部(少なくともオリアンヌさん)はユージンの天使化について知っていたりするのかな? あと、ユージンは最終的には寿命よりも先に天使になるのかな?
聖国に仇をなしたのは死んだ聖女なんだよなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ