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152話 200階層 神の試練

「一度皆を下がらせませんか? 同じ攻撃を続けても神獣には届きません」

 俺はロベール部長に提案した。


「確かに今のままでは効果が薄い。それで、その後はどうする?」

「その質問に答える前に、確認しておきたいことがあります」


 こうして会話している間も、剣術部員たちの攻撃は続いている。


「何かな?」

「ロベール部長は『単独(ソロ)』で、神獣麒麟と戦うことはできますか? 部隊戦をやめて単独で戦ってみませんか?」


「…………なに?」

 俺の言葉にロベール部長は、怪訝そうな表情になった。


「ユージンくん。『神の試練(デウスディシプリン)』に対しては部隊で挑むのが、リュケイオン魔法学園の探索指導の基本だ。それに母国聖国(カルディア)においても、単独の勇者でなく皆で力を合わせることを尊ぶ。女神教会における運命の女神様の教えも同じ。知っているだろう?」


「もちろん知っています。それは帝国でも同様です。けど、ここ最近『天頂の塔』の迷宮主と話すようになって気になっている点があります」

「続けたまえ」

 興味をもってくれたようだ。


「この最終迷宮の神の試練は『個人』の力を試す迷宮なのではないかと推察してます」

「迷宮主がそう言っていたのか?」


「断言はしてません。迷宮主は攻略のヒントになるようなことは言いませんから。けど、俺に対して期待していると告げた迷宮主は部隊ではなく個人に対して告げました。そして俺が単独(ソロ)で冥府の番犬と戦ったことを評価しているようでした」


「それだけでは根拠に乏しいな」

 ロベール部長の口調は疑わしげだ。

 俺は言葉を続ける。


「階層記録第一位の探索者クリストはソロ探索者です」

「それは周知の事実だが……、彼は特別だろう」


「階層記録十位の生物部(うち)のメディア部長もソロですよ」

「あの人は学園史上初の竜使い(ドラゴンテイマー)だ。ただの単独探索者とは違う」


 ドン! という落雷の音と悲鳴が響いた。


 剣術部員の誰かが倒れているのを、エイダ部長が回収している。


 麒麟の注意を、レベッカ先輩とサラの魔法が逸らしている。


 剣術部の人数が減っている。


 代わりに後方にいた幼馴染(アイリ)もフォローに入ったようだ。

 

 スミレは遠方から、空中にいる麒麟に向かて火魔法を放っているがこっちは素早く動く神獣をまったく捉えられていない。


 ロベール部長はその様子を難しい顔をして見ている。


「ロベール部長は、普段の天頂の塔攻略では()()()()()ますよね?」

 今回の挑戦の前に、俺は剣術部の探索の様子を中継装置(サテライトシステム)を使って見直した時に気づいたことだ。


 学園祭武術大会の時と違い、明らかにロベール部長の剣技は冴えていなかった。


「そうだな。私は部隊の指揮官だ。単騎で突っ込むわけにはいかない、全力を出して倒れるわけにはいかない」


「通常の階層攻略ならそれが正しいと思います。学園の探索指導は間違っていない。けど、『神の試練』はそもそも挑戦者の数が少ない。しかも試練の相手は無作為(ランダム)で、対策も立てられない。知識累積(ノウハウ)がないんです。別のやりかたも試すべきです」

 俺は根気強く訴えた。


 ロベール部長は今回の神の試練の撤退を考えているようだが、最大戦力が動かないまま判断するのは早い。


 それにたとえロベール部長が戦うにしても、他の剣術部員に混じって戦うのは意味はない。


 近くで見ていてはっきりわかったが、剣術部においてロベール部長の剣技は頭5つくらい抜けている。


  

 おそらく――誰と一緒に戦っても味方が()()()()()()()()


 そこまでは口にしない。

  

 けど伝わったはずだ。


 悩んでいる様子が見えた。


 悩む時間は長くなかった。


「全員、神獣から離れろ!! 私が前に出る」

 ロベール部長が大声で宣言する。


 部員たちは一瞬戸惑ったようだが、行動には淀みがない。


 すぐに神獣たちから離れるよう動いた。


 一方、レベッカ先輩やサラ、アイリはどう動くか迷っているようだ。


 最終的に、ロベール部長の言葉には従うようで神獣と距離を取った。


 これで学園最強の剣士の本気が見れる。


 俺も邪魔をしないように下がろう、と思ったのだが。


「ユージンくんは私に続きたまえ」

「え?」

 そう言われたときには、すでにロベール部長は駆け出していた。


 俺は慌ててあとに続く。


 単独で戦うんじゃないのか?


「ユージンくん、悪いがもう一度だけ囮を頼む。()()()()()()

 

 はっきりと断言するロベール部長の声には、緊張も気負いもなかった。


 さっきまでの悩める指揮官ではなく、覚悟を決めた剣士の声だった。


「わかりました」

 俺は囮役を快く引き受ける。


 学園最強の剣技をこれ以上ない特等席で見ることができる。


 ロベール部長が、ゆっくりと抜刀の構えを取った。


 麒麟がこちらを見下ろしている。

 

 これまでのワンパターンな攻撃をやめ、明らかにロベール部長を意識している。


(これ、俺が囮できるんだろうか?)

 ちょっと不安になった。


「北神一刀流ロベール・クラウン、参る」

   

 名乗りのあげかたが親父と同じ――東の大陸の剣士のものだ。


 俺と同じ東の大陸出身者なのだろうか。

 あとで聞いてみよう。

 

「弐天円鳴流ユージン・サンタフィールド、参る」

 

 言うと同時に、俺は神獣麒麟のほうへ斬りかかった。


■大切なお願い

『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。

 ページ下の「ポイントを入れて作者を応援~」から、評価『★★★★★』をお願いします!



次回の更新は、来年の2月2日(日)です。



■感想返し:


>5巻発売決定おめでとうございます!リリーちゃんのキャラデザが見たいです!


→ありがとうございます。

 作者もはやくみたいです。



>麒麟、本来ならあらゆる生き物を傷つけない慈愛溢れる存在なんですけどね


 →そう……なんですよね。

  麒麟さんの攻撃方法が伝承にないので困りました。



■作者コメント

 コミックガルドでゼロ剣の漫画版が久しぶりに更新されてます。

 https://comic-gardo.com/episode/2550689798883300272

 サラの登場回です。


■その他

 感想は全て読んでおりますが、返信する時間が無く申し訳ありません


 更新状況やら、たまにネタバレをTwitterでつぶやいてます。

 ご興味があれば、フォローしてくださいませ。


 大崎のアカウント: https://twitter.com/Isle_Osaki

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― 新着の感想 ―
>>次回の更新は、来年の2月2日(日)です。 え?来月じゃなく来年?誤字ですよね?
塔の存在意義が英雄の育成なら、みんなで手を繋いで~には限界があるのも確か この先どんな攻略スタイルになるのか楽しみです 東大陸の話はあまり出て来ないけれども職文化と食文化が気になるところ スミレは…
ロバートが南大陸の最高の剣術スタイルを代表し(将来の聖騎士団長として)、ユージンが東大陸の剣術を代表するのは良いことだと思いました。 そのようにバランスが取れていると思いました。 でも今、南大陸の…
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