第十四話 やっぱりワタシは5
その後、ワタシと真綾は美味しそうな屋台飯を次々に食べていった。さすがに休みなく食べると二人ともお腹が苦しくなってしまって、駿河と神楽小路に苦い顔されたけど。マジックショーを見たり、ピアノ演奏を聴いたりして休憩して、元気を取り戻してからフリマコーナーを巡る。古着や読まなくなった本を売ってる人たちもいれば、手作りのアクセサリーやシール、ポストカードなどの雑貨を販売している人たちもいる。
最初は四人でまわっていたが、途中から真綾と神楽小路、ワタシと駿河の二組に分かれていた。
「これ、めちゃくちゃかわいいな」
ぱっと見平凡なフープリングだが、リングの表面に棘の細かい装飾が施されている。
「あーでも、ピアスか……」
ピアス穴は開けてないから買ったところでつけれない。最近はピアスをイヤリングに変換させる部品もあると聞いたことはあるけど……と、悩んでいると、
「このピアス、良いですね」
駿河も覗き込む。
「こちらは男女問わず使えるデザインですよ」
とお店の男性が声をかける。
「へぇ、いいですね」
駿河の目が光り、手に取り眺める。
「なんだ駿河、ピアス興味あんの」
「少し。でも、バイトのことがありますからね」
「書店は厳しそうだよな」
「ですね。髪色や爪の長さなど一応ルールは存在してますね」
「ピアスつけて仕事はダメでも、開けるくらいは良いんじゃね?」
「そうですかね」
そう言いながら駿河は耳たぶを触る。
「真面目に見えるのにピアスしてるってなんかギャップあって……」
カッコイイと思う、と言おうとして一気に顔が熱くなった。言えない。言ったらもっと何も言えなくなる。
「ギャップあってどうなんです?」
首をかしげながら、駿河は訊いてくる。からかってるわけではなく、純粋にその続きが聞きたそうだった。
「いや、なんでもない!」
ワタシは首を横に振ってから、
「す、すいません、このピアス二人分ください!」
店員さんはニッコリ笑って用意し始めてくれた。
「桂さん?」
「お互い、ピアス穴開けてつけるかわかんないけど、このピアスが買えるのは今だけだろ?」
会計を済ませ、ピアスの入った紙袋を駿河に渡す。
「これ、あげる」
「えっ? あ、ありがとうございます」
「つける、つけないは駿河に任せる。けど……もし、つけたらワタシに見せて」
駿河に背を向けて、手で仰いで火照った顔に向かって風を送る。勢いでワタシもピアス買っちゃったけど、耳に穴開けるって怖いなぁ~。やっぱりイヤリングに変換する部品買うかな……。
「おーい咲ちゃん!」
「おっ、真綾、神楽小路。良いモン見つかった?」
「わたしはお花のバレッタ。君彦くんはブックカバー。どっちも同じ布使って作られたものなんだって!」
二人は何を買ったかと聞かれる前に、
「じゃあ、次どうする?」
と建物の端によってパンフを広げ、次に行く場所を探していると、神楽小路が頭を抱える。
「大丈夫かと思ったのだが……やはり少し人の波に酔ったようだ……、すまん」
真綾は持っていたペットボトルの水を差しだす。
「どこか休憩できるところ……」
「そうだなぁ」と言いながら真綾の耳元に唇を近づける。
「そろそろ二人きりでゆっくりしたらいいんじゃね?」
「えっ」
真綾は頬を染めた。
「駿河、ワタシたちはライブ参加する前にご飯食べとこうぜ」
「あと二時間くらいありますけど……」
「二人きりにしてやるんだよ」
駿河に小声で伝えると、「あー……」と言いながら頷く。
「おい、桂、さっきから二人に何をコソコソと」
「では、今日はこの辺で解散にしましょうか、佐野さん」
「そうだね、駿河くん」
神楽小路の頭上にハテナが浮かんでいるが、
「皆さんと一緒にまわれて楽しかったですよ」
「わたしもだよ。みんなありがとうね」
「こちらこそだ。で、神楽小路はどうだったんだよ?」
「俺も真綾、そして駿河と桂、お前たちとまわれて楽しかった」
そう言うと、神楽小路は長い髪をかきあげて、照れくさそうにそっぽをむいた。一瞬、アイツの口角が少し上がっているのが見えた。




