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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
七章「曰く、暖簾に腕押し」
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入団試験 2

 欠伸を噛み殺して、寝癖で跳ねる髪を撫でつける。

 今日は店はお休みなので、ちょっとのんびりしてても大丈夫。

 顔を洗って着替えて朝ご飯の支度をしていたら、昨日から泊まりに来ているアムが起きて来てコーヒーを入れ始めた。


「開会式何時だっけ?」

「九時。のんびりいこ」

「おっけー。……エスティ服それでいく?オシャレとかしない?」

「しない」

「うぅん……そっかぁ……」


 なんか残念そうにしてるけど、私がそういうノリに付き合うのはお祭りくらいだって知ってるでしょうに。

 いや、まぁ今回もお祭りっちゃお祭りだけど、見に来てる人が着飾るタイプの祭りではないじゃん?

 収穫祭とかは周りも皆着飾ってて、騎士団も飾りを付けてたりするから乗っかってもいいかなぁ~って思うけど、今日は違うよね。


 今日はどこまで行っても騎士団の見習いたちが主役だ。

 ただの観客である私たちが着飾る必要は無いし、何より面倒くさいからやりたくない。

 アムが着飾る分には私も見てて楽しいし大歓迎だけどね。関係者席で良い席だから見習い騎士たちからも見えるだろうし、テンションは上がるんじゃない?


「エスティが着飾った方がテンション上がるでしょ」

「今のそれで私のテンションは下がった」

「ごめ~ん。そんなうんざりするほど言われてるんだ?」

「うん。アムに伝えたって知った時にとりあえずシュッツに八つ当たりするくらいには」

「それはいつもじゃん」

「シュッツ可哀そう」

「エスティが言うんだね?それ」


 他人事のように呟きながら朝ごはんを盛りつけてテーブルに並べる。

 アムからコーヒーを貰って椅子に座り、手を合わせて食べ始める。いつもよりは大分のんびりしているけど、まだまだ開会までは時間があるかな。

 アムは中に入る前に色々見て回りたいだろうし、ちょっと早めに行ってもいいか。


 何なら見習い試験の方は朝からやってるし、そっちを覗いてみてもいい。

 見習い期間は最低一年、最大で五年くらいで、見習い試験から動きが違う子は最短で正騎士になったりもするから見てると意外と楽しいんだよね。

 まぁ、わざわざ見に行く人は少ないけど。私は騎士団とそれなりに一緒にお仕事するから、割と気にしている方だと思う。


「騎士演舞の時には新人に贈り物とかするのに、採用試験じゃやらないんだね」

「それこそ騎士演舞でやるからね。それに、半年のうちに辞めちゃう人もいるし」

「え、正騎士なれたのに?」

「理想と現実の違いとかね、あるらしいよ。最短で正騎士になった人の方がすぐやめがちだとかなんとか。まぁ、本当かは知らないけど」


 話しながら朝ごはんを食べて、食べ終えたら食器を片付けてカバンに荷物を詰める。

 上着は……あった方がいいか。春とはいっても、まだまだ冬の気配が残っているから、あんまり薄着でウロウロしているとまた色んな人に怒られそうだし。

 毎年もういいだろって思って上着持たずに外出しては怒られてるから、今日はしっかり着ていく。


「エスティ~これ付けよ」

「髪留め?」

「そう。前髪ちょっと止めるだけならいいでしょ?」

「……いいよ」

「ヤッター!」


 差し出されたのはバレッタで、アムが付けているのと色違いらしい。

 こっちに来る前に寄った国で見つけて買ったんだそうで、このくらいなら私も付けるだろうと色違いを用意したんだとか。

 そんなに付けさせたかったの?まぁ、日頃からやたらと着飾らせようとしてくるもんね。


「どうせ近々家で見るのに……」

「あれとは違うじゃーん。黒一色だし」

「それはそう」


 前髪を留めてカバンを肩にかけ、忘れ物が無いかを確認したら一階に降りる。

 後ろからアムが付いて来ている足音が聞こえるのでそのまま店の方まで行って、扉を開けて外に出た。

 直後にアムが出てきたので鍵を閉めて、会場へと歩き出す。


「見習い試験見に行く?」

「せっかくだから行ってみよう!」

「よーっし、こっちだー」


 まだそんなに人は居ないけど、それでもいつもと比べたら通りが何だか賑やかだ。

 あと、ちっちゃい子とかが走り回ってる。普段はこの辺じゃなくて、二本くらい奥の通りとかに居ることが多いんだけどね。

 お祭りの気配につられてこっちまで来たのか、親が見に来てるからこっちにいるのか。


「あ、なんか出店もある。あれなに売ってるの?」

「あー……ブローチのレプリカじゃない?去年までのは公開されてるし」

「今年の!とかは無いんだね」

「まだ未公開だからね」


 ブローチは受け渡しの時までコッソリコソコソ運ばれて、その年のデザインは製作者と騎士団の偉い人しか知らないのだ。

 ……その限られた人の中に何故かアンシークが入っているわけだけど、これは製作依頼者ということで一応製作者の括りになっているらしい。

 なんでそんなことになっているのかは二代目に聞かないと分からない。つまり永遠の謎ってワケ。


「あ、関係者席もう入れるみたいだけど、どうする?」

「一回入ったらもう出れない?」

「んなこた無いよ。出入り自由」

「じゃあ一回入ってみて、もっかい周り見て回ろ」

「いいよ~」


 ウッキウキのアムに手を引かれて、関係者席と書かれた旗の方へ向かう。

 荷物から貰ったチケットを取り出して受付の下位騎士さんに見せると席まで案内してくれた。

 ほうほう、なるほど。今年もまたかなりいい席を用意してもらったみたいだ。

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