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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
七章「曰く、暖簾に腕押し」
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入団試験

 色々と準備を進めてきた騎士団の入団試験はいよいよ週末になっており、ついでに大陸中で紫色の花が一斉に咲き乱れたことで国内は一気に春だぁ~!という晴れ晴れとした空気になっている。

 まだ雪は残っているけど、もう降る事は無いだろうから後は融けるのを待つだけだね。

 晴れていて暇な日は雪の山を崩して道路に広げたりもして、せっせと雪融けを促している。


 割とギリギリまで続いていたブローチの作成も、全ての確認が終了したと騎士団から手紙が来ていたから心配事はもうあんまりない。

 他の書類もしっかり書いてあるからね。

 あとはもう当日を待つだけだ。


「おやエスティ。精が出るねぇ」

「こんにちはぁ。裏口を発掘したいんです~」


 せっせと雪を退けていたら、通りすがりのお婆ちゃんから声を掛けられた。

 そのままちょっと話しながら雪を道路に投げて、それが融けていく様子を眺める。

 立ち話で満足したらしく去って行ったお婆ちゃんを見送って作業を再開した。


 裏口まではまだまだ距離がありそうだけど、出来るだけ早めに裏から出入りできるようにしたいんだよねぇ。

 屋根があるから他の所よりは積もってないし、いける気がしている。

 このまま天気が良ければ週末までにいけるんじゃないかなぁ。雨でもいい。雨でも融けるから。


「エスティア」

「はぁい。あ、ジャックさん。こんにちは~」


 声を掛けられて振り返ったら、騎士団の鎧を着ているジャックさんが居た。

 この前来た時は私服だったけど、今日は仕事みたいだ。

 買い物かと思ったけど……この感じは入団試験絡みの何かかな?


「入団試験の、関係者用テントへの立ち入り許可証と、それから関係者席のチケットだ」

「あぁ、ありがとうございます」

「今年は見に来るのか?」

「行きますよー。あ、でもアム来るなら関係者席にはいかないかもです」

「一人くらいなら同伴者として中に入れるはずだ。エスティアも先代と関係者席に来ていただろう」

「……確かに!」


 そういえば先代が現役の時は、連れて行ってもらった記憶がある。

 なるほど、今まで確認してなかったけど、同伴者オッケーなんだね。

 なんか、保護者だからとかそんな感じだと思ってた。子供を一人にするわけにはいかないから一緒に来て良いよ、みたいな。


 言われてみれば関係者席って二人ずつ座ってる事多いな。あれって同伴者オッケーだからなのか。

 つまり関係者席のチケットは一枚で二人分の席の扱いなんだね。

 今まで気付かなかった私も凄いけど、誰も説明してないってのも凄いね。


 アンシークは引き継ぎがしっかりしてるから伝わってると思ってたんだろうなぁ。

 残念ながら、店のアレコレ以外は結構雑なのだ。

 これは営業とは直接関係ないから、特に何も聞いてなかった。


 入団試験関係で引き継いだのはブローチの作成をしている工房との関係値と、見習いさんたちの所に見学に行くときのあれこれと、必要書類の管理と書き方で全部だ。

 見に行くかどうかは好きにしなさいスタイルだった。チケット貰えるとかも聞いてなかったからね、私。

 六代目になって最初の年に受け取って、毎年渡してますよって言われてはぇ~そうなの~ってなったもん。


「ジャックさんは入団試験の会場に居るんですか?」

「あぁ。会場の警備で居る。フィンリーもいるはずだ」

「そうなんですね。……今年の見習い入団って誰が試験官なんですか?」

「今年は……デイヴィス上位騎士だな」

「あー。デイヴィスさんか……挨拶しにいこうかな……」

「知り合いなのか?」

「店の常連さんでしたね。上位騎士になってからは忙しくって補佐騎士の子が来るようになりましたけど」

「なるほど……アンシークは本当に騎士団と縁が深いな」

「有難い限りですよ」


 実は上位騎士勢は結構元常連とか、今も常連で来てくれてる人とか多いんだよね。

 下位騎士とか中位騎士とかの時によく来てたとか、それこそ仕事の買い物でお使いに出されてくるとか多いからね。

 そのまま個人的な買い物もしに来るようになってくれて……みたいな流れが結構ある。


 ジャックさんとグレンさんが上位騎士に昇格したら、二人もその括りに入るわけだから、またアンシークが意味の分からない立ち位置に行くなぁとかふとした時に思う。

 個人業の雑貨屋のはずなのに、なーんでこんなに騎士団と縁が深いのやら。

 その答えは「二代目が頑張ったから」だ。


「……エスティア」

「はぁい?」

「入団試験で告白されるというのは本当か……?」

「なぁーんでみんな知ってんだ本当に!」


 思わず大きな声が出てしまった。

 ジャックさんがびっくりしてる。ごめんなさいね、でもその話題もう聞き飽きたんですわ。

 持ってたスコップと手紙を地面に叩きつけなかっただけ褒めてほしい。


「断ってんですよこっちはもう!告白されたとしても断って終わりなんだからそんな盛り上がる事はなんも無いんですよ!!」

「そ、そうか」


 カッ!!と叫んだら、ジャックさんが気圧されながら頷いた。

 とりあえずなんもないってことは理解してもらえたかな?駄目かな?

 駄目ならせめて、私の中では終わった話なのにまだ周りが勝手に盛り上がってるんだっていうそれだけでも分かって欲しいな。

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