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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
七章「曰く、暖簾に腕押し」
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冬の終わり 4

 今日も今日とて騎士団入団試験用のブローチ作りのためのお話し合いに出向き、早速出来上がった試作第一号組を手に取って眺めさせてもらう。

 まだざっくりした形を決めているところだから、細かく切り出されたりはしてないんだけどそれでもシルエットが分かるのはいいよね。

 この時点で何となく、こっちの方がカッコイイとか、これは没とか、そういうのが決まり始める。


「んー……こっちのがカッコイイですね」

「まぁ、そうさな。ならこれとこれ、ついでにこれもか。この辺は次までに詰めとく」

「はぁーい。あとは……やっぱり装飾の内容、剣だけってのは無かったですね。背景になんか入れないとかもです」

「それなんだがな、おい」

「は、はい!」


 やいのやいの言い合いながら話を詰めていたら、職人さんがお弟子さんの方を向いた。

 お弟子さんは緊張しているのかカチコチに固まりながら、横に置いてあった紙を机の上に乗せた。

 中央に置かれたそれを覗き込む。


「あら、綺麗」

「花だ何だじゃなくても、いいんじゃねぇかと思ってな」

「いいですねぇこれ!背景にびっしり彫り込んだり出来ます?」

「やってみる。まぁ、出来なかねぇよ」


 紙に書かれていたのは、幾何学模様のような綺麗な模様。

 初めて見る模様だけど、一定の模様が続いていくのは凄く綺麗だ。

 これが背景いっぱいに広がっていたら綺麗だろうなぁ。なんて思いながら紙を眺めて、ついでにちょっと紙を捲ってみたりする。


 もしかしたら裏とかになんか書いてあるかもしれないからね!

 今回は書いてなかったけど、職人さんはすぐそういうことするんだから。

 とりあえず紙を置いて、この辺は次回出来上がってから詳しい話になるかな?


「今回はこんなもんか?」

「そうですね。時間もそろそろ遅いですし」


 話を切り上げて荷物を回収し、建物を出て暗くなった空を見上げる。

 お、星出てる。これは明日冷え込むぞ~地面の凍結に注意しないと。

 なんて考えながら見送りに出てきてくれた職人さんとお弟子さんにお辞儀をして、帰り道を歩き始める。


 夕食何か買って行こうかな、それとも食べて行こうかな。

 最近行ってなかったし、久々にリリさんの所に行ってもいいなぁ。

 と、ご機嫌に夕食の事を考えていたのも束の間。何か近付いてくる気配を感じて、鞄の紐をきゅっと握った。


「エースティ」

「あ、なんだぁ。フィンさんかぁ」


 面倒事はごめんだ、と身を固くしたところで聞きなれた声がかけられて、頬を緩めながら声の舌方向を見上げる。

 移動用の円盤に乗ったフィンさんはいつも通り騎士団魔法部隊の制服を着て、長い髪を一本の三つ編みにして身体の前に垂らしていた。

 うん、気配も姿も、しっかりフィンさん。面倒事は無かったみたいで一安心。


「こんな時間に何してるの?」

「仕事帰りです。フィンさんはまだお仕事ですか?」

「いや、自分も仕事帰り。送ってくよ」

「じゃあ一緒にご飯食べに行きましょ」

「いいよ~」


 円盤から降りて地面に立ったフィンさんと並んで歩き出し、夕食の店について話し合う。

 リリさんの所に行こうかと思ってたけど、フィンさんが一緒なら別の店の方がいいよね。

 なにせあの店ではフィンさんの上司が酔っ払って転がされてるので。


 どこにしようかと話し合いながら歩いて、結局何度かは行ったことのある店に吸い込まれるように入って腰を落ち着けた。

 料理を頼んで来るのを待っている間に出されたお茶を飲んでいたら、フィンさんが何やら真剣な顔で重要な話を切り出しそうな声を出す。

 ……これは別に重要じゃないやつだ。面白がってる時にそれよくやりますよねフィンさん。


「エスティ、見習い騎士に告白されたんだって?」

「なんでしっかり出回ってんですかそんな話が」

「爆速で回ってたよ」

「やだぁ……」


 思わず机に崩れ落ちてしまった。

 なんでみんなしてそんな話題をぐるぐるぐるぐる……


「相変わらずモテるねぇエスティ」

「代わって下さい」

「やーだ」


 語尾にハートついてそうな言い方をされた。

 面倒くさいよぉ……やだよぉ……助けてよフィンさぁん……


「よしよし。何かあったら駆け込んでおいでね」

「次外で会った時には抱き着きにいきますね」

「全力で巻き込むじゃん……そのまま抱えて歩いてあげようか?」

「くっそ目立つじゃないですか」


 必要以上に目線を集める予感しかしない。

 自分から言い始めたことだけど、ちょっとご遠慮願いたいかな。

 なんて話している間に料理が届いて、話題は食事の方へ流れていった。


 ついでに今年のブローチの事も聞かれたけど、まだ決まってないですよーとだけ言っておく。

 フィンさんも本気で聞きたいわけではないので、それだけでこの話題はおしまいだ。

 当日まで見せられないのは知ってるからね。この時期には毎年一回だけやるお決まりの流れなのだ。


 そんなわけで談笑しつつご飯を食べて、帰りはアンシークまで送ってもらった。

 移動用の円盤に乗って空を飛んでいくフィンさんを見送って家の中に入り、荷物の片付けは後回しにしてシャワーを浴びてベッドに入る。

 明日は普通に営業日だから、さっさと寝て身体を休めないとね。

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