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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
七章「曰く、暖簾に腕押し」
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冬の終わり

 徐々に雪の嵩が減って、春の訪れを感じ始めた今日この頃。

 もう紫の月に入るし、大陸中で花が咲くと一気に春に転じるから冬ももう終わりだ。

 この「冬が終わるなぁ~。春が来るなぁ~」という時期になると、グリヴィアは少し賑やかになってくる。


 いやまぁ、今までも普通にお祭りしてたし賑やかではあったんだけどさ。

 まぁとにかく、賑やかになるのだ。秋の祭りに騎士演舞があるけど、春にも騎士団関係のお祭りがあるからそれに向けてみんな楽しそうに支度を始めている。

 そのお祭りは、見習い騎士たちが正騎士になれるかどうかの試験。


 一般客も見に行けるし、屋台も出るしで普通にお祭りになっている。

 これで合格すると晴れて正騎士で、まずは下位騎士として上を目指していくって感じだ。

 ちなみに見習い騎士の入団試験も同時開催されている。こっちを見に行く人は騎士を目指している少年少女が基本な感じ。


 実はアンシーク、この採用試験でちょっとだけやることがあったりする。

 二代目が始めた取引が今まで続いていて、毎年恒例になってるんだよね。

 なので私も準備を始めているし、騎士団の方に顔を出さないといけなかったりもする。


 まぁ、上位騎士にも中位騎士にも魔法部隊にも知り合い居るし、あんまり緊張とかはしないかな。

 基本的に誰かが取り次いでくれるし、知り合いの上位騎士が必要なことはやってくれるし。

 行くのは見習い騎士の建物のほうだから、正騎士たちに取り囲まれることもないしね。なんかその辺は四代目が色々調整をしたらしい。先代が言ってた。


「そういえばアムは来るのかな」


 そろそろ遊びに行くよー!って手紙は来てたし、採用試験に合わせて来そうな気もする。

 いつ来たって大丈夫だし、早いなら早いで嬉しいからなんだっていいか。

 一応日持ちするお菓子とかはもう買ってあるしね。あれ美味しいからつい食べ過ぎてなくなりそうになるけど。


「さーてと、んじゃ、行きますかぁ」


 なんてあれこれ考えながら閉店作業を終えて、今日は早めに店仕舞いだ。

 夕方までの時短営業ですよーとは前日からお知らせしてあるので、看板をクローズにしたらこれでオッケー。カーテン閉めて、明かり消して、荷物を持っていざ出発。

 鍵を閉めて向かう先は職人街。騎士団の採用試験でアンシークが受け持っている物を作ってもらうのに、職人さんと打ち合わせをしないといけないからね。


 テクテク歩いて通りを進み、真冬の間は雪で塞がっている道が開通しているのを見つけて春を感じたりもした。

 道中でラング爺さんに会って今日の夕食を一緒に食べる約束もしたので、あんまり遅くならないようにしないと。

 まぁ、テンション上がってきたらその辺を考えてる余裕なんて無くなるんだけどね。


「こんばんはー」

「……あぁ、アンシークさん、こんばんは。どうぞ」


 工房の扉をノックして、案内してくれる人について行く。

 通された部屋で大人しく座っていたら、お茶と一緒に職人さんが入ってきた。

 立ち上がって今年もお願いしますねぇとご挨拶をしつつ、一緒に入ってきた人に目を向ける。


「今年から、同席させてくれ。うちの弟子だ」

「勿論!ついに後継者決まったんですか?」

「ま、期待も込めてだな」


 職人さんの隣に腰かけたお弟子さんがビクッと肩を揺らしているけど、特に触れずに持ってきた荷物から紙束を引っ張り出す。

 机の上にそれを乗せると、お弟子さんが分かりやすく目を輝かせた。

 うんうん、気になるよねぇ。でもお話し合いで使うから待ってねぇ。


「今年はどんな感じか、方向性とか決まりましたか?」

「ここ数年動物が多かったろう、今年はまた、武器かなんかに戻してみてもいいんじゃねぇかとは思っとるな」

「あぁ、いいですねぇ。騎士といえば剣みたいなところありますし」

「ただ、そうなると華やかさが無いだのなんだの、女将がうるさくてな」

「剣……剣……確かに何だかんだ花とかも彫り込まれてる感じですね」


 このお話し合いは、正騎士になった元見習いに贈呈されるブローチのデザイン決め会議だ。

 ブローチは結構大きさがあって、中央に無色透明な魔石が埋め込まれている。

 材料はミプラティグという金属で、透き通るような銀色の凄く美しくて魔法耐性もあって錆びにくいんだけど加工がものすんごく難しいっていう、おぉん……って感じのものだ。


 この工房は数少ないミプラティグ加工の出来る工房で、毎年お世話になっている。

 最終決定も加工もこの工房がやる事なので、騎士団に紹介しましょうかとも言ったんだけど、騎士団と直接やり取りをするのは面倒だから、と今でもアンシークが間を取り次ぐ感じになっている。

 ちなみに正騎士のブローチは毎年デザインが違くて、同じデザインを持ってる人は同期ってことになる。


 そして中央の無色の魔石は、最初に触れた魔力の色に変化するので、正騎士は受け取ったらその場で魔力を込めて自分の色で石を染めるのだ。

 その光景がね、かなり綺麗でね、だから最後の式典は結構多くの人が見に来るおっきいイベントになっている。

 ブローチのデザインも毎年かなり注目されるから、この話し合いは結構重要なお仕事なのだ。


 それにしても、剣か。いいよね、騎士っぽくて。

 騎士団の紋章とは被らない感じの方がいいかなぁ……

 最終決定まではまだまだ時間があるから、ちょっとずつ決めていくのがまた楽しいんだよね。

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