表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
七章「曰く、暖簾に腕押し」
93/124

個人的流行 3

 道の端に残る雪で服が濡れないように気を付けながら、細い路地を通り抜ける。

 今日は比較的温かいから、雪も解けて来てて地面とかも結構濡れてるんだよね。

 まぁ裾をビッチャビチャにするようなことはしないし、そんなに心配するほど迫立った雪壁でもないから念のため気を付けておこ~くらいのテンションだ。


「こ~んに~ちはぁ~」

「おぉ、エスティ。よく来たなぁ」

「お邪魔しますね、ラング爺さん。今回は何個くらい出来ました?」

「今回は、四つかのぉ。アルノート、お前さんの分も持ってこい」

「はい」

「アルノートさんの方はいくつです?」

「俺のは二つかな。すぐ持ってくるね」


 今日は仕入れ日なので、いつも通り取引のあるお店や職人さんの所を巡っている。

 ラング爺さんの工房に来たのは新年最初の仕入れ以来かな?

 冬場はあんまり動き回れないから顔を出せなくて、毎年のことながら会うたびに久しぶりだなぁという気持ちになる。


「……お、今回はお花が多めですね」

「ほっほっほ。ま、春に向けてな」

「なるほどー。アルノートさんもですか?」

「俺はまだそこまで細かい花は作れないから……これです」

「なるほど色味からですね。これも可愛い~」


 今回のラング爺さんのランプは、小さな花を沢山集めた花束みたいなランプだった。

 すっごい可愛い。あわーい色も付いてて、本当に春の花束って感じだ。

 形と色は違うけど、四つとも雰囲気は同じ感じ。こーれはまたすぐに売り切れて「あれってもう無くなっちゃいましたか……?」って聞かれる奴だな。


「さーて、お値段のお話をしましょうか。材料一覧あります?」

「これです。……さて」

「はい、まずはアルノートさんが思うお値段を聞きましょうか」


 去年からやっている、アルノートさんの値段設定練習は今年もしっかり続いていて、段々修正を入れることも減ってきている。

 とはいえまだまだ材料の値段が曖昧だったりするから、手放しで判断を任せることは出来ないけどね。

 それでも誤差が減ってきたのは良いことだ。ラング爺さんは材料を出し惜しみしないから、材料費だけでもすごい値段になるってちゃんと理解してくれたみたいだし。


「えー……これが、二千五百コルメ」

「アルノートさん……」

「はい」

「アルノートさん……!」

「え、どっち!?これどっち!?」

「四千コルメ以上は取って下さい」

「あぁ!大外しパターンだ!」


 残念、今回の一発目は大外しです。

 頭を抱えて後ろに倒れたアルノートさんの膝をポンッと叩く。

 あ、ラング爺さんがお茶淹れてくれた。やったー、ありがとうございます。


「何がそんなに高いの……?前のとそんなに材料変わってないと思うんだけど……」

「これです、この着色の為の鉱石。これが最近高騰してるんですよ」

「へぇ……そうなんだ……」

「あとは技術料を安く見積もりすぎです。こんだけ出来る職人さんは早々居ないんですから、もっとちゃんとお金取って下さい」

「はい……」


 お爺ちゃんもですよ!笑ってないでちゃんと聞いてください!

 もう……高級ランプ作ってる職人だって自覚あるのかな。無いんだろうな。

 ラング爺さんからしたらずーっと趣味も込で作ってるランプがなんかすっごい高値で売れるし、たまにヤベェファンが現れる。くらいのテンションなんだろう。


 ……いや、その感覚でいる方が希少というか、若干ズレてるというか……

 そんなんだから過去に誘拐された経験とかあるんですよラング爺さん。

 先代がやたら心配してたのは、ラング爺さんがたまーにすごい抜けてるところがあるからなんだろうなぁってここ数年で強く思うようになった。


 凄い職人で頑固おやじっぽいのに孫(孫ではない)を溺愛し、ついでにちょっと抜けてるところがあるお爺ちゃんって。どんだけ属性を盛れば満足なんだって。

 なんて言いつつ残りのランプの値段もアルノートさんの予想を聞きつつ設定して、全て仕入れて工房を後にした。

 さて、次はどーこだ。雪で道が塞がってたりもするから、冬の仕入れは他の季節と順番が違うんだよね。


「んー……あ。そうだ一軒新しく行きたい工房があるんですよ」

「お。そうなのかい。どこだ?」

「えーっと、この先の通りを左です」


 この辺には個人でやってる職人の工房が結構あって、でも皆看板とかあんまり出さないし目立たないから新しく見つけるのは結構難しいんだよね。

 私は職人会の人たちとも交流があるから、新しく出来た工房とかの情報はかなり入ってきやすい。

 今から行く工房も、とある職人さんから紹介してもらった。


 まだ若い職人で、別の国で修業をしていたけど最近グリヴィアに戻って来たらしい。

 職人会にも顔を出したし、その職人さんと同じ系統の物作りだから気にかけているみたいだった。

 私がそのうち行くだろうとも言ってくれてあるらしいから、遠慮せず覗きに行こう。


 いなかったらまた日を改めればいいしね。

 職人さんの新規開拓はあんまりできないから、機会があったら全力で覗きに行かないといけない。

 先代も新しい職人さんの所には他の予定をずらしてでも行ってたしね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ