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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
七章「曰く、暖簾に腕押し」
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個人的流行 2

 今日は朝から雨が降っている。

 雪じゃなくて雨が降るなんて、もう本当に春がすぐそこ!って感じだ。

 まぁ、雨って言っても雪と雨の境目みたいな、雪になりそこなった雨みたいな、そんな感じのやつなんだけどね。


 それでも大分気温が上がってきたんだなぁと言うことが目で見て分かるのは非常に良い。

 私は冬が好きだけど、それでも春が来るぞー!!ってテンションも好きなのだ。嫌いなのは夏くらい。あいつだけは許せない。

 代わりに冬の期間伸ばして夏を無に還そう。


 な~んてのんびり考えていたら、カランコロンと音を立てて扉が開いた。

 即座に顔に営業スマイルを張り付けて扉の方を向き、カウンターの上に余計なものが無いことを確かめておく。

 何も置いて無いな、よし。


「いらっしゃいませ~」

「やっほーエスティアちゃん」

「あらグレンさん。こんにちは」


 現れたのはグレンさんだった。今日は騎士団の制服ではなく私服だ。

 ってことは備品じゃなくて私物の買い物だな。

 グレンさんは普段から私物も買いに来てくれるので、欲しいものの予想も付けやすい。


「今日は何をお求めですか?」

「インクと……マグカップってあるかな?」

「ありますよー。そこに少し並んでるのと……もっとシンプルなの、幾つか出してきますね」

「うん、ありがとう」


 今店内に出てるの、かなりの雪だるま率だった気がする。

 すっごい可愛くて職人さんから大量に仕入れたんだよね。

 全部ちょっとずつ色が違うのも可愛い。たまに雪ウサギも混ざってたりしてなお可愛い。


 でも男の人が使うにはちょっと可愛すぎる感じもするので、大人しく他のものを奥に取りに行く。

 店にもシンプルなの並べてもあるけど、数が少ないからね。

 でっかいのもあるし、これも持っていこう。


「お待たせしましたー。とりあえずこんな感じです。他の色もあるので、見たかったら言ってください」

「おお、いっぱいあるね」

「あ、これだけは一点物で、他の色は無いです」

「そうなんだ……結構大きいマグカップだね」

「そうですねぇ。普段はでっかめのお皿とか作ってる職人さんなので、サイズ感ミスったらしいです。それはそれで欲しい人もいると思って仕入れました」

「……うん、確かにこれくらい大きい方がいいかもしれない。これにしようかな」

「はーい。インクはいつものでよろしいですか?」

「うん」


 選ばれたマグカップをカウンターに残して、他の物を持って奥へと向かった。

 インクは一番売れるやつなので、店に戻って棚から一つ持ってくる。

 代金の計算をして、それを伝えてからマグカップが割れないように丁寧に包んでインクと一緒に袋に入れていく。


「マグカップ割れたりしたんですか?」

「実はね。最近ちょっとコーヒーにハマってて、前より使う頻度が増えて……洗ってたらうっかり」

「あー。分かります。洗ってる時が一番割りやすいんですよねぇ」


 私も花瓶とか洗ってる時に割っちゃうことが多い。割っちゃった後は泣きながら金継ぎを依頼するために欠片の回収をして、最短でいつ持っていけるかを考えてる。

 なんなら店を半休にしてでも持っていってる。

 ちょいちょい割っては金継ぎをお願いしてるので、金継ぎの職人さんたちの間で私は「意地でも花瓶を買い替えない女」になってるらしいんだけど……まぁ仕方ないよね。


 割らないのが一番ではあるんだけど、なーんか手が滑るって言うか……兄さん曰くやたら好かれてる所為っていうか……

 私ではどうにも出来ないことっぽいので、諦めて金継ぎの職人さんにお金を払う機会を得たと思うことにしている。

 職人さんへ払うお金は躊躇うな、って先代も言ってたしね。


 そんな話をしながら袋詰めが終わった商品を渡し、代金を受け取って去っていくグレンさんを見送った。

 窓からも背中が見えなくなったので椅子に腰を下ろし、お湯を一口飲んでほぅ……と息を吐く。

 今日はこんな感じで、ちらほらとお客さんが来はするけど暇な日なんだよね。


 まぁでも、この暇な感じは嫌いじゃない。ずーっと誰も来ない訳じゃなくてちょこちょこ人は来るし、でも忙しさとは程遠い感じ。

 本でも持ってこようかなーって朝からずーっと思ってるけど持ってきてないので、多分今日は読書もしないだろうな。

 なんて考えながら欠伸を零したら、再び扉の鐘が音を立てた。


「いらっしゃいませ~」

「やっほーエスティ」

「あらスクレ君。こんにちはー」


 現れたのはパン屋のスクレ君だった。

 いつの間にか、ビヤンネトルの移動販売が来る時間になっていたらしい。

 時計を見て意識したら急にお腹も空いてきた。


「今日は何ですか?」

「今日はエビとアボカドのサンドイッチと、野菜とベーコンのサンドイッチがあります」

「あわー……どっちも美味しそう。お菓子は?」

「パウンドケーキ。チョコ味」

「やったぁ」


 サンドイッチはどっちにしようか悩みに悩んだ結果エビとアボカドを選択し、今日のお昼ご飯をゲットした。

 去っていくスクレ君を見送ってからサンドイッチの包みを開けてかぶりつき、口いっぱいに頬張る。

 うーん……幸せ。

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