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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
六章「曰く、魚心あれば水心」
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兄さんと観光 3

「兄さぁん」

「エスティ~」

「はいはい。帰るわよー」

「エスティ、昨日は納得してたでしょ……」


 後ろから軽く肩を抑えてくるシュッツを圧にかけつつ兄さんに手を伸ばし、ついでに兄さんの横にいるリュシアにも手を振っておく。

 今日は兄さんがグリヴィアから去ってしまう日なのだけれど、私と兄さんが二人して駄々をこねた時にシュッツだけだと押し負けると思われたのかリュシアが迎えに来ているのだ。

 まさか来るなんて。割と距離あるはずなのに。


 まぁ私としてはリュシアにも久々に会えたから良いんだけど、それはそれとして兄さんと離れるのは寂しいからとりあえず駄々をこねているところだ。

 帰らないといけないのは納得してるけど、我慢するかは別問題だよね。

 捏ねれる駄々は捏ねれるだけ捏ねておかないと。


「あ~エスティ~」

「兄さ~ん」

「じゃあねシュッツ。ちゃんと働きなさいよ」

「はいっ」

「エスティもまたね。次はすぐに会うことになると思うけど」

「うん……じゃあねリュシア」


 兄さんの首根っこを掴んで引き摺っていくリュシアに返事をして、兄さんに大きく手を振る。

 はぁ……行っちゃったなぁ……リュシア相変わらず美人だったなぁ……流石シュッツの姉。血筋の美力が強い。

 ヒールをコツコツ鳴らしながら去って行ったリュシアを見送って、見えなくなるギリギリで兄さんがちゃんと歩き出したのもしっかり見届けた。


 今日は珍しく雪も降っていないから、出発にはちょうどいい日だ。

 心配はいらないだろうけど一応道中の安全も祈っておいて、服の上からお守りに手を当てた。

 一回限り使い切りの魔法陣だったので元々持っていた物はもう効果を無くしてしまったのだけれど、リュシアが兄さんを回収するついでに新しいものを持ってきてくれたのだ。


 使ったという前例が出来たことで私が再び危険に陥る可能性があると判断したらしい。

 狙われやすいし自分で対処できないから、毎度心配かけてごめんねって感じ。ごめんねの感情より新しいの貰えて嬉しいが勝ったからあんまり謝ってないけど、思ってはいる。

 なんて考えながらシュッツの方を振り返り、軽く腕を叩いて歩き始めた。


 今日はお見送りのためにかなり外壁に近い所まで出てきてるからね、ついでに買い物でもしてから帰ろう。

 今日で店の変則休みも終わりだから、ちょっとくらい遊んでいったって許される。

 アンシークの店主は私なので私が許すなら許されるんだ。


「シュッツー、近くのカフェ寄って行こー」

「いいよ、何が食べたい?」

「ショートケーキ」

「それならもう少し進んだところにあるお店にしようか」


 兄さんが返ってしまったのは本当に寂しいけど、明日からは普通に営業だし帰ったら色々確認作業とかしないとなぁ。

 次の仕入れ日のリストも作らないといけないし、在庫確認が最初かな。

 あと決めないといけないのは今日の夕飯だけど、それは残ってる食材で作れるだろうから適当に済ませればいいや。


 考えながら先を歩くシュッツ追いかけて通りを進み、普段はあんまり来ない場所の街並みを眺める。

 私はあんまり来ないけど、シュッツはこの辺に住んでるんだっけ。

 家の場所とかあんまりしっかり聞いたことないから、どのへんかとか知らないんだよね。


「……エスティ」

「うん?」

「またすぐに会えるよ」

「うん。……そんな寂しそう?」

「かなり」


 もしかして私、自分で思っているよりも寂しいんだろうか。

 シュッツがわざわざ言ってくるほどってことは相当だ。久々に家の中に見知った人が長く居たからかなぁ?

 まぁ、兄さんだからってのが一番だろうけど……


「あれ、エスティ。お兄さんのお見送り?」

「あ、フィンさん!今見送ってきたところです」


 そんなに寂しそうに見えるかぁ……としみじみ考えていたら、後ろから声を掛けられた。

 振り返ると移動用の円盤に乗ったフィンさんが浮いていて、見上げつつ返事をする。

 今日は休みなのかな?フィンさん休みの日でも魔法部隊の制服着てるから分かりにくいんだよなぁ。


「フィンリー暇なの?」

「今は暇だね。休憩時間」

「じゃあ一緒にカフェ行きませんか?ショートケーキ食べに行くんです」

「お、行く行く」


 ウキウキで地上に降りてきたフィンさんの手を引いて、ちょうど見えてきた目的のお店に入る。

 中は暖房が効いているから、入ってすぐにほへぇと緩い声が漏れた。あったけぇ。

 案内された席に移動してコートを脱ぎ、椅子に座ってもう一度ほへぇと声を漏らす。


「エスティはショートケーキ?」

「はい!」

「飲み物は?」

「温かい紅茶がいいです。シュッツ選んでー」

「はいはい。僕はロールケーキとコーヒーにしようかな。フィンリーは?」

「自分はー……ガトーショコラと紅茶」


 注文を済ませた後はケーキが来るまで雑談をして、ケーキが来てからはそっちに夢中になってちょっと会話が途切れた。

 フィンさんはこの後仕事に戻らないといけないらしく、面倒くさいから仕事をしていたことにする、と私をアンシークまで送ってくれた。

 私を送るのを仕事に含めていいんだろうか。

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