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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
六章「曰く、魚心あれば水心」
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新年のあれこれ

 夜空に花火が上がり、わっと歓声が上がった。

 騎士団魔法部隊の人たちが空で何かしているのを眺めながら大盛り上がりな会場から少し距離を取り、いつの間にか横に来ていたシュッツに目を向ける。

 ……なんか浮かれた格好してんね。それ誰に付けられたの?


「あけましておめでとうございます、エス様」

「あけましておめでとうシュッツ。お年玉いる?」

「いや、流石に受け取れない……」

「なーんだ。せっかく用意したのに」


 年が明けて最初の挨拶くらいは、シュッツの意思を酌んで呼び名も口調も突っ込まないでおく。

 周りもお祝いムードで賑やかだし、誰も聞いちゃいないだろうからね。

 ちなみにお年玉は現金だと受け取らないだろうと思ったから、あえてのブローチにしておいた。断られたけど持って帰る気も無いので勝手にポッケに突っ込んでおく。持っていけオラァ。


「お、居た居た。エスティー」

「アルト。あけましておめでとう」

「おめでとーぅ。シュッツもあけおめー」

「あけましておめでとう。……なにそれ」

「酒。なんか無料で配ってた」


 液体の入ったカップ片手にアルトが現れて、緩く新年の挨拶をされた。

 何かと思ったら酒かい。確かに年越し会場では配ってたりするけど、結構人居なかった?わざわざ並んでもらってきたの?

 私は飲まないけど、アルトは結構お酒好きだよねぇ。


「さて、と。そろそろ私は帰ろうかな」

「お。もう帰んの?……あぁ、昼から挨拶周りか」

「うん。アルトは職人会の新年会行くの?」

「行くー。飯と酒を頂きに」

「じゃあまた昼に会うかな。お酒、ほどほどにしなよー」

「おーう」


 まだまだ終わらない年越し祭りから抜け出して、私はさっさと帰路につく。

 アンシークも流石に新年はお休みで、毎年一月、白の月の最初の三日ほどは店を閉めている。

 とはいえゆっくり休めるかと言われるとそういうわけでもなく、あちこちで開催されている新年会に顔を出して回るのだ。


 まぁ、楽しいから好きでやってるし、半分趣味みたいなものだから休み扱いでいいんだけどね。

 ラング爺さんやアルトが居る職人会にも顔を出すし、リュバチートはお店で新年会してるからそっちにも顔を出す。

 明日も顔を出す場所があるから、新年って意外と忙しいよね。


「んーじゃね。おやすみシュッツ」

「おやすみなさい」


 行く場所をリストにして考えながら歩いていたら、あっと言う間にアンシークに着いたので送ってくれたシュッツに手を振って店の中に入った。

 着込んでいた上着を脱いで、二階に荷物を置きに行ってそのまま寝間着を取ってくる。

 一階に戻ってきてシャワーを浴びたら、湯冷めしないうちに髪を乾かしてさっさと寝てしまうことにした。


 なにせ明日……いや、今日の昼からは新年会をハシゴして回らないといけないからね。

 さっさと寝て体力を回復しないといけない。楽しいけど、疲れるんだよね。あれは体力が無いと無理よ。

 昔は先代について回ってただけだったけど、普通に疲れて最終的にはアンシークで留守番してたくらいだ。


「ふぁ……」


 ベッドに入って灯りを落とせば、一気に眠気に襲われる。

 普段日付変わるまで起きてることってあんまり無いからね~。しょうがないね~。

 そんなことを考えつつ目を閉じて、眠気に抗うことなく夢の中に落ちて行った。





 出かける支度を整えて、最後に一応鏡の前に立つ。

 うーん、いつも通り。よし!

 あんまり意味のない確認も終わったところでカバンを持ってアンシークを出て、すっかり日の昇った街の中を歩く。


 知り合いとすれ違った時に新年の挨拶をしたりしながら向かった先は、大通りに面した宴会会場だ。

 職人会は毎年この店で新年会をしており、私も毎年顔を出しているから最早店の人とも顔馴染みである。普通にアンシークに買い物に来てくれたりもするしね。

 そんなわけで店に入った瞬間に職人会の取っている部屋の場所を教えて貰えた。楽でいいね、本当。


「あけましておめでとうございまーす」

「おぉ、エスティ」

「よく来たよく来た。ささ、座れ座れ」

「失礼しまーす。ラング爺さん、今年もよろしくお願いしますね」


 扉を開けつつ声をかけると、知り合いたちから一斉に新年の挨拶が返ってくる。

 皆もう出来上がってんなぁとか思いつつ進められるままにラング爺さんの横に腰を下ろし、渡されたジュースに口を付けた。

 ここでお酒渡してこないあたり、ラング爺さんの横は安心出来るよね。


「エスティ、ほれ、お年玉」

「わぁい、ありがとうございますカイルさん」

「俺からも。ほれ」

「やったー。あ、エリスさんあけましておめでとうございます」


 次々に渡されるお年玉を遠慮なく受け取って、一人一人に挨拶をする。

 皆私の事孫かなんかだと思ってる節があるよね。なんでか貰った方が喜ばれるから、毎年渡されるままに受け取ってるけどもさ。

 そのまましばらくかけられる声に返事をしたりしながら、いつの間にか目の前の皿に盛られていたご飯を食べる。


 大体全員に挨拶できたかな、と思ったところで席を立ち、絡んでくるアルトを振り切って会場を後にした。

 次に向かうのも大通りの宴会会場。その後にリュバチートかな。

 腹ごなしがてらちょっと遠回りして歩きつつ、賑やかな大通りに思わず頬が緩んだ。

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