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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
六章「曰く、魚心あれば水心」
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冬の日常

 朝、目が覚めて身支度を整え、朝食を取った後。

 店の開店準備を始めるわけだけれど、冬はこの開店準備に他の季節にはない作業が一つ追加される。

 それすなわち、雪かき。夜の間に入口の前に降り積もった雪を退かして、お客さんが入れるようにしないといけないのだ。


 ちなみに冬になると裏口は使えないので、自分の出入りの為でもある。

 一晩雪が降っていると前の日に作った道は完全に消えるわけだけど、もっと北の豪雪地帯を知っているからあんまり大変だとは思わないんだよね。

 あっちは二階にも冬用の入口を作ってあって、冬の間一階は埋まる事前提なくらいだし。


 と、そんなことをのんびり考えながら店の前の雪かきを終えて、スコップを片手に店の中に戻る。

 なるべく店の中に雪を落とさないように気を付けながら奥に入り、スコップを所定の位置に戻してコートを脱いだ。

 この後店の掃除と棚の確認をするんだけど、冬は外の雪かきを終えたら何かしら温かい物を飲めって言われてるんだよね。


 私は別に寒くもないし、面倒だから必要性を感じてないんだけど、シュッツにもアムにもフィンさんにも言われているから、大人しく従うことにしている。

 ちなみにお茶を淹れるのは面倒なので白湯だ。

 お湯は雪かきを始める前に沸かしてあるので、それをマグカップに注いで持ってくる。


 ちまちま飲みながら店の中を歩き回って棚の空きなどを調べて、確認を終えたらマグカップをカウンターに置いて掃除と品出しを済ませる。

 これで開店準備は完了。椅子に引っ掛けてあるカーディガンを羽織って腰を下ろして、白湯を片手に外を眺めるいつもののんびりとした時間の始まりだ。


「ふぁ……今日は忙しくなるかなぁ……」


 昨日は結構雪が降っていたからお客さんもあんまり来なくて暇だったんだけど、今日は外に出るのが億劫って程降ってはいないんだよね。

 これなら昨日よりかは忙しくなりそうな気もする。というかなって欲しい。

 あんまりにも暇だったんだよ昨日。最初の来店がお昼ご飯を売りに来てくれるスクレ君だったからね。


 おかげで否が応でも書類作業が捗ってしまったよね。

 もうすぐ年越しだから、それ関係の書類が割とあって、この時期は来客が少なくて暇でもやる事はあるのがね、いいのか悪いのか。多分良いことなんだろうけど。

 ついでに言うと、年越しの後に月宵の祭りがあるからその準備もしないといけないのだ。


「準備……店の準備は別にいいんだけどなぁ」


 自分用にやらないといけない準備が面倒で、思わずため息が零れる。

 まぁやりますけどね、ちゃんとやらないと大変なことになりかねないから、どんなに面倒でもちゃんとやりますよ。

 なんてぼんやり考えながら白湯を啜っていたら、窓の外にシュッツが現れた。


「おはよ。買い物?」

「おはようエスティ。買い物も何だけど……はいこれ、本家から届いてたよ」

「んぇ?……魔除け?また?」

「今年は色々あったから、念のために追加するって。手紙も来てたよ」

「……まぁ、しょうがないかぁ。飲まれかけたのは久しぶりだったし」


 心配をかけてしまった自覚はあるので、今回は大人しく従っておこう。

 幸い設置が面倒なタイプじゃないし、すぐにでも置きに行った方がいいかな。

 時間を置くと忘れてしまいそうだから、とシュッツを店に残して二階に上がる。


 受け取った魔除けを寝室の窓に引っ掛けて、落ちないことを確認したら軽く魔力を込めて発動している事を確かめる。

 おし、これでオッケーなので店に戻ろう。

 あれはこの冬だけ効果があるものなので、冬が終わったら外して実家に送り返さないといけない。ちょっと面倒だけど、まぁまだ先の事だし今は気にしなくていいか。


「お待たせ~。んで、買い物の方は何をお求め?メモ帳?」

「いや、ソーイングセットってあるかな?」

「あるよ。なんか破けたの?」

「帽子がちょっとほつれてて……」

「買い換えないんだ。それお気に入りだね」


 シュッツは昔から常に帽子を被っているイメージがあるけど、今被っているのはかなり長い間愛用しているんじゃないかな?

 昔はちょいちょい変えてた気がするんだけどな……よっぽどお気に入りなんだろう。

 なんて話しながら奥からソーイングセットを三種類持ってきて、どれがいいか選んでもらう。


 糸は白いのなら最初から入ってるけど、それ以外が欲しいなら別で買ってね。

 縫い方は……まぁ知ってるでしょ、どうせ一通り実家でやってる。

 知らなかったとしてもシュッツ器用だし、どうにか出来る。きっと。


「三百コルメになりまーす」

「はーい。……よし、じゃあエスティ、ちゃんと温かい恰好して、温かい物食べてね」

「はいはい。分かった分かった」


 会計を済ませて去って行くシュッツに手を振って、椅子に腰を下ろした。

 さて、それじゃあシュッツ経由で実家から届いた手紙でも読みますか。

 ……改めて考えてみると、私の実家から届く私宛の手紙がシュッツの方に行くの、意味わかんなくて面白いな。

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