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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
五章「曰く、蟻の穴から堤も崩れる」
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冬の訪れ 2

 もこもこの帽子を被って、手袋をつけて。

 コートはこの間買った新しい物を着て、その他必要そうなものをバケツに入れて外に出る。

 今日は店は休みで、外は雪が降っている。まぁ降っているって言ってもそんなにモッサモッサ降ってるわけじゃないからね、動き回るのに問題は無いだろう。


「シューッツ!」

「はいはい。ちゃんと手袋付けた?」

「つけた!さぁ作るぞー!」


 シュッツを呼びだしてすることは、店先に雪だるまを作ることだ。

 ……子供っぽいとかいうな。これはアンシークの冬の定番だから作るんだ。昔っから私がウキウキで作ってたせいで定番になったとかそういうんじゃない。ないったらない。

 それに甘えて今年もしっかりはしゃいでるなんてことも無い。


「……人参まである」

「木彫りの人参。防腐加工済み」

「わざわざ注文したの?」

「んや?貰った~」


 まずは雪を集めよう、と早速しゃがみ込んだ私と対照的に、シュッツは横に置いたバケツの中身を確認していた。

 ちなみにバケツの中身は木彫りの人参、黒くて丸い石が複数個、使い古して要らなくなったマフラー、いい感じの木の枝が二本、私が小さい頃に付けていた手袋だ。

 中身を全部出しきったらバケツを雪だるまの頭に被せる予定である。何とも無駄が無くて素晴らしいね!


「ほら、シュッツも雪集めて!綺麗な所だけ集めて!」

「エスティのその雪だるまへの情熱はどこから来るの……?」

「魔除け準備より楽しい」

「そうかもしれないけど……!ちゃんとそっちの準備もしてね……!」

「分かってる分かってる」


 やんややんや言いながらここ数日で降り積もった綺麗な雪を集めて、球を作ってどんどん大きくしていく。

 通りがかる人たちに微笑ましそうに見られたりもするけど、そんなのは気にせずせっせと雪玉を大きくして……大きくし過ぎて自分じゃ持ち上げられなくなってしまった。

 クソッ……こんなところで筋力のなさを実感するなんて……ッ!


「シュッツこれ持てる?」

「え……うーん……ちょっと難しいかな」

「チッ。ひょろいな……」

「ご、ごめんなさい」


 仕方ないので筋力増強系の魔道具でも持ってくるか、と立ち上がったところで、急に影が落ちた。

 何かと思って見上げたら、移動用の円盤に乗ったフィンさんと目が合った。いいところに!


「フィンさんフィンさん!今暇ですか!」

「うん、暇だよー。それ乗せればいいの?」

「はい!」


 地面に降りたフィンさんは乗っていた円盤を懐にしまって、魔法で雪玉を持ち上げてシュッツが作っていた土台の雪玉に乗せてくれた。

 やったー!これで二段だけど、私は二段の雪だるまで満足する女ではない。

 そんなわけでもう一個雪玉を作って上に乗せることにした。シュッツは一番下の段を補強するらしい。


「どれどれ、手伝ってあげよう」

「わーい」


 フィンさんは暇らしくて、少し離れたところから綺麗な雪を持ってきてくれたりできた雪玉を乗せてくれたりと割と最後まで手伝ってくれた。

 最終的な飾り付けに入ったところで誰かと話し始めて、円盤を取り出して片足を乗せて空に上がって行ったので手を振ってお見送りする。

 あれ多分、見回りの途中とかだったんだろうなぁ。途中なのに私の雪だるま作成を手伝ったから怒られたんだろうなぁ。


「まぁいいや」

「いいんだ?」

「うん。フィンさんなら最終的に怒られずに済んでそうだし」

「……それは、確かに」

「はい、シュッツは雪だるまの腕係ね」

「あ、はい」


 フィンさんが飛んでいったあたりを見上げて呆けていたシュッツに二本の枝を渡し、私は雪だるまの顔から作ることにした。

 木彫りの人参を鼻にして、黒い石で目と口を作っていく。片側の口角だけ上げた感じの雪だるまにしよう。無駄にニヒルな笑みにしてやる。

 なんて私がこだわっている間にシュッツは枝と手袋をつけ終わったようで、私の手元を覗き込んできた。


「どう?」

「……絶妙な笑み」

「んふふ。あ、石使い切っちゃった。ボタン取ってくるからマフラー巻いといて」

「はぁい」


 バケツの中身を確認して、もう石が無かったので一度店の中に入る。

 売り物には出来ないボタンが幾つかあったはずだから、それを装飾に使おう。

 そんなわけで良い感じのやつを三つほど見繕い、マフラーを巻かれた雪だるまに装着する。最後に空になったバケツを帽子のように被せて、今年の雪だるま一号が完成した。


「出来たー!」

「今年も大作だね。……そろそろお昼かな?」

「そうだね。スープ作ってあるから食べよ。午後からは店内の飾り付けだからね」

「うん」


 出来上がった雪だるまを眺めて満足の息を漏らし、体が冷えるだのなんだのと心配してくるシュッツの手を引っ張って店の中に入る。

 ちらついていた雪の所為で帽子が真っ白だ。店の中を濡らしたくはないから、裏で干しておこうかな。

 この時期はそれ用の場所を階段の傍に作ってあるんだよね。あんまりにも濡れたようなら温風の出る魔道具を設置して乾かせるようにもしてある。


 そんなわけで防寒具を脱いで、二階に上がってご飯を食べることにした。

 今日の午後にはニレさんがお花を届けてくれるから、それも含めて店の中を模様替えするのだ。

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