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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
五章「曰く、蟻の穴から堤も崩れる」
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無理な理由 3

 例の屋敷に行った日から数日が経った頃、今日も今日とて欠伸を零しながら水を飲んでいた私の元に、騎士団魔法部隊の紋章が描かれた手紙が送られてきた。

 うへぇ……と緩く声を出しつつ、無視するわけにはいかないのでペーパーナイフで綺麗に封を切って中身を取り出すと、何やら正式な謝罪云々かんぬん書かれたきれーな紙が一枚出てくる。

 なんか大事になった?面倒くさいやつ?


「……あ、イヴィさんの署名ある。まぁ~、うん……イヴィさん相手なら……いいか……」


 正直に言うと、これ以上面倒くさいことに巻き込まないで欲しいなーってのが本心なのだが、魔法部隊の隊長は私の知り合いの飲んだくれお姉さんなのでね。

 普段は騎士団の部隊長としてではなく、よく行く食事処で会う常連って対応しかしないイヴィさんがわざわざこんな正式な書類を送ってきたんだから無碍には出来ないよね。

 こっちとしても長く引き摺りたい案件ではないし、さっさと済ませてしまおう。


 そんなわけでアンシークからも正式なお返事を出すことにした。

 こういう時のための、お高いレターセットとインクがあるんですよ。

 何代目かは忘れたけど、歴代店主の誰かがこういうの好きだったみたいでね、正式なのにはこれを使えばまず間違いない、ってレターセットを作っておいてくれたんだよね。


 アンシークのマークが最初から模様として入っているそれは、紙の質もいいしなんかちょっといい香りがする。

 これを作ってるのが老舗の紙屋さん?で、アンシークはそこと昔からやり取りがあって今でも同じものを作ってもらっているので、無くなったら注文すれば届けて貰えるのだ。

 歴代店主が好きに築いた人脈が物凄いのよな。ちなみにインクも同じ感じで、お高いやつが用意してある。


「えーっと、いつにしよう。次の定休日……」


 騎士団の所まで出向くことになるので、こっちの都合のいい日を指定させてもらう。

 これ、本当は向こうから来るものなんだけど、私が店に騎士団の偉い人が来て謝ってるとか嫌がるタイプなのを分かってるイヴィさんが騎士団の建物に場所を変更してくれたみたいなんだよね。

 そういう気遣いが出来るからイヴィさんは好き。普段はダル絡みの酔っ払いだけど。


 何はともあれ好きに日程を決めて、一度読み返して内容を確かめてインクを乾かす。

 乾いたらきっちり半分に折りたたんで封筒に入れ、シーリングスタンプを押す。これ、結構楽しくて好き。

 最初の頃は失敗しそうでちょっと怖かったけど、練習がてら何回か押してたら楽しくなってきたんだよね。


「さて、どうやって出すか……終わった後に行ってこようかな」


 早めに出した方がいいだろうけど、店を閉めてまで行く用事ではないから一旦後回しかな。

 今日の閉店後に行くか、明日の開店前に行くか。

 どっちでもいいけど、郵便局地味に遠いんだよなぁ……


「……ん?あ、シュッツー」


 朝だとやる気が出ないような気がするし、閉店後に行こうと決めたところで、外をシュッツが歩いているのが見えた。

 呼んだらすぐに店に来たけど、元々用事があったのかな。


「お疲れシュッツ」

「やっほーエスティ……何かあった?」

「いや、暇ならおつかい頼もうかなって。……ペナルティは終わった?」

「終わった……」

「おおぅ……お疲れ……」


 明らかに疲れているシュッツにとりあえず飴を渡す。お食べ、疲労には甘いものがいいんだよ。

 シュッツがここまで疲れているのはアムに怒られたからで、起こられた理由は完全に私の所為なのでしばらくはシュッツに優しくしようと心に決めている。

 ごめんね……今回はシュッツは全然悪くないから怒らないでって言ってはみたんだけど……怒ったアムがそんな言葉で止まるわけはないんだよね。


「それで、おつかいだっけ」

「うん。これー」

「騎士団宛……今回の件?」

「そう。正式な謝罪だってさ。イヴィさん名義で来たから、次の休みに行ってくる」


 手紙を渡して、去って行くシュッツを見送る。

 これで後は予定を忘れなければいいだけなので、カレンダーにでも書き込んでおこう。

 あとは……まぁ、忘れないだろうからとりあえずいいや。


 とりあえずのやる事が終わって、グーっと伸びをしていたら扉が開いた。

 勢いよく開けられた扉は鈴の音がとんでもなくて、思わず椅子の上で飛んでしまいながら扉を睨む。

 こんな開け方するやつ一人しかいないんだよなぁ?


「アルト!もっと静かに扉開けて!」

「おっ。思ったより元気そうだ」

「聞いてる!?返事は!?」

「はいはい」


 案の定入ってきたのはアルトで、睨んでもロクな返事は帰って来ない。

 諦めて椅子に座り直し、寄ってきたアルトを見上げた。


「んで、どうしたの?買い物?」

「まあそれもあるが……エスティの様子を見ておこうかと思って。どうせ止めても爺さんの墓参りには行くんだし、小まめに見といた方がいいだろ」

「ぐうの音も出ない。大丈夫だよ、もう何の影響も残ってない」

「そう言って無理するからなぁ~」


 アルトは私の体質の事を知っているから、どこからか話を聞いて心配してくれたみたいだ。

 本気で反省してるからここ数日はかなり大人しくしてたもん。先代のお墓参りも、もうちょっと期間開けてから行こうと思ってるし。

 なんて言い訳がましくモゴモゴと言い募り、しばらくアルトとのお喋りに興じた。

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