舞い込んだ面倒事 2
はぁ……と吐いたため息は、誰にも聞かれず消えていく。
騎士サマ襲来の翌日、向こうも早く終わらせたいのか、早速来てくれということで店を臨時休業にして例の屋敷に行くことになった。
私としては忘れてくれて良かったんだけど、しっかり来られてしまったのでこうなっては早く終わらせるしかないなぁ、と思っている。思ってはいるけど行きたくは無いのでため息は出る。
わざわざアンシークに馬車で迎えに来られたもんだから、逃げるに逃げれなかったのだ。
そんなわけで、抵抗の暇もなく乗せられた馬車の中でダラダラと文句を言ってはため息を吐いている。
馬車を寄こした魔法部隊の人は中ではなく前に座っているので、馬車の中には私一人しか乗っていないのだ。
翌日に早速来たから、イヴィさんに文句を言いに行く暇もなかったなぁ。
せめてフィンさんと駄弁る隙間を挟んでくれたら、もうちょっと気も楽だったと思うんだけどね。まぁ言っても仕方の無いことだけども。
なんて嘆いていたら、目的地に着いたのか馬車が止まった。籠城しようかと思ったけど、扉があいたので大人しく馬車から降りる。
降りた先には、見慣れた騎士が二人立っていた。
私に気付くと気まずそうな顔をするけれど、それでもこっちに歩いてきた。
この件の関係者ではないと思ってたんだけど、もしかしてこれも管轄内なんだろうか。
「あれ、ジャックさんとグレンさんじゃないですか。なんでここに?」
「エスティアが巻き込まれたと聞いてな……」
「管轄外だから止められはしないけど、せめてついて行こうかって話になったんだ」
「そうなんですねぇ。……本当は止めてくれたら嬉しいんですけどね、私ほんとに幽霊屋敷とか駄目なんで」
それでも来てくれただけ嬉しいけどな、なんて思いながら呟けば、二人は意外そうな顔をした。
この顔は割と見覚えがある。私が幽霊苦手って言うと、こういう顔をする人は結構多いのだ。
そんなに意外かなぁ?私としてはずっと昔からこうだから、違和感も何もないんだけどな。
「はぁぁ……行きたくな~い」
「……すまない」
「ジャックさんの所為ではないですよ。あ、でもイヴィさんに会ったら文句言っといてください。私も次あったらダル絡みするって決めてるんです」
うだうだと言いながら、半ば連行されるように屋敷へと近付いていく。
……あぁ、これは本当にヤバいやつかもしれない。
近付いているだけでまだ中には入っていないのに、背中が冷たい。ちょっと足も震え始めている。
マージで行きたくないから足を止めて、前を歩く騎士団魔法部隊の人ではなく後ろに居たグレンさんとジャックさんの服を掴む。
二人は驚いた顔をしていたけど、そっちに構っている余裕はないのでごめんなさいね。
ともあれ両サイドを信頼できる人で固めてちょっとは落ち着いた。
……まぁ、もう進みたくない気持ちでいっぱいな事に変わりはないから、ここでちょっと粘ってみようかな。
昨日はお客さんが来たから了承して返したけど、ここで騒いだってアンシークに悪影響はないからね。何せ今日は臨時休業なので、私はアンシークのエプロンをつけていないのだ。
こうなっては私がアンシークの今代店主だと認識できる人は仲の良い一部の人だけになる。
その一部の人には全力で駄々捏ねてるところを見られるくらい別に構いはしないので、両手でグレンさんとジャックさんの服を掴んで体重を後ろにかける。
魔法部隊はローブだけど、騎士団は鎧だから掴む場所に困るなぁ。
身長差のおかげで良い感じに服の裾を掴めているけど、この部分だけ伸びちゃいそうだ。まぁ、私をここに連れてきたのも騎士団の人なので、必要経費と割り切って欲しい。
「エスティアちゃん?どうしたの?」
「……やっぱ行きたくないです。見てくださいこのガックガクの足」
気遣うように聞いてきたグレンさんに進行拒否の意を伝え、さっきからプルプル震えている足をこれ見よがしに見せる。
帰りたいなぁ……両サイドの二人は気の毒そうにしてくれてるし、いい感じに中止になってくれないかなぁ……
こんなに嫌がってる女を連れて行くの、本当にどうかと思うよ??
「何故ですか!了承してくださったでしょう!?」
「あのですねぇ、店に押しかけて大声で騒がれて、頷くまで帰らないんじゃお客さんに迷惑がかかる前にとりあえず了承するしかないでしょう。嫌々に決まってんでしょう。無かったことになってくれればいいなと星に願ってから寝たんですよ私は」
私の足が止まったから、前を歩いていた魔法部隊の人が駆け足で戻ってきた。
そのまま気付かず先に行ってくれてよかったのよ?なんで気付いて戻ってきちゃうのかな。
昨日後から店に来た騎士団の人はこの魔法部隊の人の援護をしていたけど、ジャックさんとグレンさんは私の味方だって信じてますからね、ね!
そんな私の必死の思いが通じたのか、ジャックさんが魔法部隊の人と私の間に入るように半歩ほど前に出た。
グレンさんは逆に私の背中側に手を回しているけれど、これは私の足があまりにもプルプルだからすっ転ばないようにだろう。
よし、このままここでごねよう。これ以上近付くと、本当に駄目そうだからね。




