表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
五章「曰く、蟻の穴から堤も崩れる」
64/124

古い屋敷 2

 いつも通りカウンターの椅子に腰かけて、水を飲みながら大通りをのんびりと眺める。

 今日もグリヴィアは平和だ。シュッツがこの間貴族街の古い屋敷について注意喚起に来ていたけれど、私は自分から貴族街に行くことなんてないのでその辺も関わる心配はないだろう。

 呪いだのなんだのと言われていたから、フィンさんたち騎士団魔法部隊がなんか忙しそうで大変そうだなぁと他人事な感想を浮かべるくらいしかすることはない。


 呪いに関しては、私は自分に向けられたものに関してはそれなりにどうにか出来るだけの知識と手段を持っているから特に問題はない。どうにも駄目なら実家に頼るしね。

 けれども悪霊だ何だに関しては、あまりにも相性が悪いのだ。

 こればっかりはどうしようもない。だって努力でどうにか出来る範疇を越えているんだから。


 馬車で酔う人がいるように、酒を飲むとほんの数口で吐く人がいるように、悪霊とかの類に私は滅法弱いのだ。

 まぁ、だからこそシュッツがわざわざ注意喚起に来ていた訳なんだけどさ。

 マジでいるかは分からんが、居るって言われてる場所には無暗に近付くものではない。


「ふぁ……関係無いなら考えても意味ないし、店内の冬支度でも考えるかぁ」


 店の中に客が居ないのをいい事に隠すことも無く欠伸をして、次の仕入れ日にやる予定の店の内装を冬っぽくする計画について考える。

 やっぱり全体的に寒色系で纏めるべきだとは思うんだけど、ただでさえ外が寒くて雪景色になるからやりすぎるのは良くないと思うんだよね。

 一部はオレンジとかで温かみを出しておくべきかなぁ。と、迷っているのが楽しいので、暇になるとこうして考えているのだ。


「とりあえずスノードームは置くじゃん?」


 誰も居ないので、独り言も言い放題だ。店内のレイアウトを声に出して脳内を整理していく。

 並べる商品は割とすぐ思いつくし仕入れの様子を見て決めればいいんだけど、やっぱり一番悩むのは店の扉の隣にある大きな窓のところだよね。

 普段から花を置いたり飾りを吊るしたりとあれこれ弄っている場所だ。収穫祭の時期は作り物の果物とかを入れた籠が置いてあった。リボンまで巻いてな、中々可愛い出来だったんだよ。


 んで、まぁ冬なので上から雪の結晶をかたどった飾りを垂らすとかでもいいんだけど……それだと何だか味気ないというか、つまらない。

 お花は店内の大体の雰囲気が決まってからニレさんにそれを伝えればいい感じに花束を作ってもらえるので、そっちはとりあえず後回しだ。

 ちなみに扉と窓の間の空間には雪だるまが置かれる予定である。多少窓に被っても構わないので、邪魔にならない位置にでけぇのを作るんだ。


「んー……むしろ赤……?リボンとか垂らす?……いや、ちょっと可愛すぎるなそれは」


 自問自答を繰り返しながら、ぼんやりと思考を回す。

 雪景色の中に明るい色の光が漏れてる感じが好きだから、店の中の明かりは暖色系にするんだよね。

 ちなみにもう既に取り替えてある。外側のカバーを変えるだけの簡単なお仕事です。これは騎士演舞が終わったあたりでシュッツにやってもらった。


「ぬいぐるみでも置こうかな……いやでも結露で濡れんの嫌だな。あとやっぱり可愛すぎる」


 アンシークは私が店主になってから女の子たちがよく来るカワイイ雑貨屋みたいになっているけれど、先代の時はもうちょっと上の年齢層が主な客層だったんだよね。

 あと、今に比べて圧倒的に男性客が多かった。

 これは完全に置いている物の差なんだけど、先代から店を継いだ時に歴代皆自分が好きなように店の中を飾り付けているし、並べるものも好みで選んでいるから好きにして良いって言われている。


 なのでまぁ、可愛かろうが気に入ればそれでいいんだけど、騎士団の人たちも来るからね。

 入りにくいレベルで可愛くしちゃうのはちょっとあれかなって私が勝手に思っているだけだ。

 これでアンシークが何代も続けてきた騎士団との繋がりが切れちゃったら、先代たちに合わせる顔が無いしねぇ。


「あー……アルトにトナカイでも作ってもらおうかなぁ」


 ちょうど今日から棚に並べているガラスの小物入れを見て、ふとそんなことを思った。

 売り物にはしないで、ちょっと大きめに透明なトナカイを作ってもらって置いたらいい感じな気がする。

 後ろにはソリを置こう。なんでかは知らないけど、兄さんが「冬と言えばトナカイとソリ。あと赤い服着た白いひげのお爺さん」って言ってたし。


 そうと決まれば早速アルトに出来るかどうかの確認を取らないといけない。

 何せあいつは、満月の日の魔法の出来が悪ければガラス細工自体には問題が無くても失敗作だとして持ってこないのだ。

 月に一回しか試せないので、こういうのは早め早めに連絡しないと冬が終わってしまう。


 次にアルトが店に来るときでは遅いので、仕入れ日に工房に顔を出すことにしよう。

 普段は向こうが持ってくるから珍しくはあるけど、用事がある時にはこっちから顔を出すこともまぁ無くはないからね。


 そんなわけで何となく決まってきた冬の内装に気分が良くなってきたので、鼻歌を歌いながら暫定の決定事項をメモしておくことにした。

 こういうの、たまに急にど忘れするからね。メモは大事だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ